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  • 奨学金の返還が難しくなったときの公的な選択肢|日本学生支援機構の減額返還・返還期限猶予・返還免除を公式情報だけで確かめる

    奨学金の返還が難しくなったときの公的な選択肢|日本学生支援機構の減額返還・返還期限猶予・返還免除を公式情報だけで確かめる

    PR:本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。掲載内容は公表されている一次情報をもとに当サイトが確認したものです。

    奨学金の返還が続けられなくなったとき、日本学生支援機構(JASSO)は「返還が難しくなった場合」というページに3つの制度を並べて掲げています。減額返還制度、返還期限猶予、そして死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除の3つです。この記事は、その3つの内容と上限、根拠となる条文を、JASSOの公式サイトとe-Gov法令検索だけで確認した記録です(いずれも2026年9月29日確認)。奨学金を債務整理の対象にできるかどうか、どの制度を選ぶべきかという判断は、個別の事情を見て行うものです。当サイトはそれを扱いません。手続そのものの種類は債務整理の4つの方法、公的な相談先は借金の公的な相談窓口一覧にまとめています。

    1. JASSOが並べている3つの制度

    「返還が難しくなった場合」のページは、冒頭に「奨学生ご本人に、返還が難しいご事情が発生した場合、以下の制度を願い出ていただくことができます。」と書き、そのあとに3つのリンクを置いています(2026年9月29日確認)。

    • 月々の返還額を少なくする(減額返還制度)
    • 返還を待ってもらう(返還期限猶予)
    • 死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除

    いずれも「願い出る」制度として書かれています。JASSOが自動で適用するという書き方はどのページにもありません。

    日本学生支援機構「返還が難しくなった場合」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/index.html(2026年9月29日確認)

    2. 根拠の条文|機構法15条と施行令5条から7条

    この3つには、法律と政令に対応する条文があります。独立行政法人日本学生支援機構法(平成十五年法律第九十四号)の15条は「学資貸与金の返還の条件等」という見出しで、本則から抽出すると次のとおりです(2026年9月29日確認)。

    学資貸与金の返還の期限及び返還の方法は、政令で定める。
    2 機構は、学資貸与金の貸与を受けた者が災害又は傷病により学資貸与金を返還することが困難となったとき、その他政令で定める事由があるときは、その返還の期限を猶予することができる。
    3 機構は、学資貸与金の貸与を受けた者が死亡又は精神若しくは身体の障害により学資貸与金を返還することができなくなったときは、政令で定めるところにより、その学資貸与金の全部又は一部の返還を免除することができる。

    受け皿になる政令が独立行政法人日本学生支援機構法施行令(平成十六年政令第二号)です。6条は15条2項の「政令で定める事由」を「大学、大学院、高等専門学校又は貸与対象専修学校に在学することその他文部科学大臣の認めるやむを得ない事由があること」と定めています。7条は返還免除の条文で、1項が「死亡した者又は精神若しくは身体の障害により労働能力を喪失した者」について「返還未済額の全部又は一部を免除することができる」、2項が「精神又は身体の障害により労働能力に高度の制限を有する者」について「返還未済額の一部の返還を免除することができる」と書き分けています。減額返還に対応するのは5条4項で、「災害、傷病その他文部科学大臣の認めるやむを得ない事由により学資貸与金を返還することが困難となった者について、文部科学大臣の認可を受けて定める基準に従って、割賦金の減額及び支払回数の変更その他の学資貸与金の返還の期限及び返還の方法の変更を行う場合」と定めています。いずれの条文も「できる」という書き方で、要件に当たれば当然に適用されるという書き方ではありません。

    独立行政法人日本学生支援機構法(平成十五年法律第九十四号) https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000094/独立行政法人日本学生支援機構法施行令(平成十六年政令第二号) https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000002(いずれも2026年9月29日確認・本則から抽出。附則・改正規定は使用していません)

    3. 減額返還|割合は4段階、通算15年が限度

    「減額返還制度の概要」のページは、制度を次のように定義しています(原文)。

    減額返還制度とは、経済困難等の事情により当初の約束通りの返還月額での返還は難しいが、返還月額を減額すれば返還できる場合、適用期間に応じて返還期間を延長し、当初の返還月額を2分の1、3分の1、4分の1、3分の2に減額して返還することができる制度です。

    適用期間については、「1回の願出につき12か月まで」の適用で、適用期間終了前に改めて願い出ることによる延長が可能、「通算適用期間は15年(180か月)が限度です。」と書かれています。

    留意点として同ページが挙げているのは、「減額返還は、毎月返還する割賦金を減額して、返還期間を延長するものです。返還予定総額が減額されるわけではありません。」、「返還期間が延長されますが、第二種奨学金の利子の総支払額は変更ありません。」、機関保証制度では保証期間は延長されるが保証料の追加徴収はないこと、そして「平成29年度以降採用の第一種奨学生で、所得連動返還方式を選択している場合は、減額返還の申請はできません。」です。減るのは月々の額であって、総額ではないとJASSO自身が明記しています。

    日本学生支援機構「減額返還制度の概要」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/gengaku/seido.html(2026年9月29日確認)

    4. 減額返還の適用条件は4つ

    同じページは適用条件を(1)から(4)まで4つ挙げています(機械で数えた値)。

    1. 「災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難であること」。収入・所得の目安は原文で、給与所得者は年間収入金額400万円以下(扶養している子供が2人なら500万円以下、3人以上なら600万円以下)、給与所得以外の所得を含む場合は年間所得金額300万円以下(同2人なら400万円以下、3人以上なら500万円以下)。被扶養者1人につき38万円を控除できるという注記もあります。
    2. 「願出及び審査の時点で延滞していないこと」。あわせて「延滞を解消することにより願出が可能となります。」と書かれています。
    3. 「口座振替(リレー口座)加入者であること」。
    4. 「月賦返還であること」。

    また、適用中の振替不能についての注意もあります。原文は「減額返還適用中に2回続けて振替不能となった場合は、延滞発生時に遡って減額返還の適用取消となり、減額返還適用前の当初返還月額を延滞額として算出した延滞金を加えた額を返還いただくことになります。」です。2番目の条件があるため、すでに延滞している状態からこの制度に入る形にはなっていません。延滞している場合の入口は次の返還期限猶予の側に用意されています。

    日本学生支援機構「減額返還制度の概要」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/gengaku/seido.html(2026年9月29日確認)

    5. 返還期限猶予|通算10年が限度、ただし年数制限のない事由がある

    「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」のページは、制度の性格を先に断っています(原文)。

    返還期限の猶予は、一定期間返還期限を先送りする制度であり、返還すべき元金や利子が免除されるものではありません。

    猶予の種類は2つで、【1】一般猶予(「現在返還が困難であるため、一定期間返還を待ってほしい場合に願い出る制度」)と、【2】猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予です。後者は対象が限られる代わりに「適用期間に制限はありません。」とされています。

    一般猶予の上限は「通算10年(120か月)が限度」です。ただし年数の制限がかからない事由が列挙されています。「一般猶予の申請事由と必要な証明書」のページは事由を3つのまとまりに分け、猶予取得年数に制限がないもの=傷病・災害・生活保護受給中・産前休業産後休業および育児休業・大学校在学・海外派遣の6つ、通算10年までのもの=経済困難・失業中・新卒等・特別研究員・外国で研究中・海外居住・今年海外から帰国の7つ、そして外国の学校へ留学を別枠として挙げています(機械で数えた値)。災害については「災害原因が同一の場合は、災害発生から原則5年が限度になります。」、給付奨学金の返還については「10年の上限はありません。」という注記があります。申請は1年ごとの願い出で、「返還期限猶予は、1年ごとに願い出が必要です。」と書かれています。

    日本学生支援機構「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/index.html/同「返還期限猶予制度の申請手続き」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/about.html/同「一般猶予の申請事由と必要な証明書」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/ippan/teishutusyo/index.html(いずれも2026年9月29日確認)

    6. 「経済困難」で願い出るときの収入・所得の基準

    一般猶予の事由のうち「経済困難」のページには、基準の表が置かれています。原文で給与所得者は「年間収入金額(税込)300万円以下」、給与所得以外の所得を含む場合は「年間所得金額(必要経費等控除後)200万円以下」です(2026年9月29日確認)。対象は「無職・未就職・低収入により返還困難な方。」とされ、注記で「令和7年(2025年)11月以前に卒業または退学等された方が対象です。」、それ以降の卒業・退学等の場合は「新卒等」で申請するよう案内されています。

    ここで注意したいのが、減額返還の目安(給与所得者で年間収入400万円以下)と、返還期限猶予の経済困難の基準(同300万円以下)が別の数字だという点です。JASSOがそれぞれのページで別の数字を示しているため、当サイトもそろえずにそのまま記載します。証明書は所得証明書・市県民税(所得・課税)証明書・住民税非課税証明書のいずれかの原本で、マイナンバーの提出により省略できる場合があるとされています。

    日本学生支援機構「経済困難(一般猶予の申請事由)」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/ippan/teishutusyo/keikon/index.html(2026年9月29日確認)

    7. 返還免除|死亡と、精神又は身体の障害

    「死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除」のページは、次の場合に「願出により返還未済額の全部又は一部の返還を免除することができる制度があります。」として2つを挙げています(原文)。

    本人が死亡し返還ができなくなったとき。
    精神又は身体の障害により労働能力を喪失、若しくは労働能力に高度の制限を有し、返還ができなくなったとき。

    この2つは、さきほどの施行令7条1項・2項の書き分け(労働能力の喪失=全部又は一部/高度の制限=一部)と対応しています。障害による免除については、ページに「貸与中及び在学中の場合は願い出はできません。」という記載があります。必要書類は保証の種類(人的保証・機関保証)と奨学金の種類(貸与・給付)で様式が分かれ、所定の診断書の様式も公開されています。なお、これとは別に機構法16条が「大学院において第一種学資貸与金の貸与を受けた学生のうち、在学中に特に優れた業績を挙げたと認められる者」についての返還免除を定めていますが、これは返還困難を理由とする制度ではありません。

    日本学生支援機構「死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/ippan_menjyo.html/独立行政法人日本学生支援機構法16条・同施行令7条 https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000094(いずれも2026年9月29日確認)

    8. 延滞と信用情報|「延滞3か月以上」で登録の対象になります

    JASSOは「個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録」というページを公表しています。原文で「多重債務防止の観点から、奨学金の返還を延滞した場合、延滞情報を個人信用情報機関に登録しています。」とし、条件を次のように書いています。

    奨学金の返還が延滞3か月以上になった場合、個人信用情報機関への登録対象になります。
    新たに返還を開始する方は、返還開始から6か月経過した時点で延滞3か月以上の場合に、個人信用情報機関への登録対象となります。登録の判定は、返還開始から6か月経過してからは、毎月行われます。

    登録される内容は原文で「氏名・生年月日・住所・電話番号・勤務先等の本人情報、貸与金額・最終返済日等の契約の内容及びその返済状況(延滞・代位弁済・強制回収手続・完了等)」、期間は「登録された情報は返還完了から5年後に削除されます。」とされています。前提として「個人信用情報の取扱いに関する同意書」の提出があり、「平成21年4月以降奨学金の貸与を受ける方から『同意書』の提出が必要になりました。」と書かれています。信用情報機関の側の登録期間の考え方は信用情報はいつまで登録されるのか、開示の手続は信用情報の開示方法にまとめています。

    日本学生支援機構「個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/entai/kojinjoho/index.html(2026年9月29日確認)

    9. 延滞金|奨学金の種類と採用時期で率が違います

    「延滞金」のページは冒頭で「約束の返還期日までに返還されないと、延滞金が課されます。」と書き、率を第一種奨学金(無利子)と第二種奨学金(利子付き)で別の表に分け、さらに採用時期・貸与終了時期・返還方法で行を分けています。直近の区分だけを挙げると、平成17年4月以降採用の第一種奨学金は「令和2年3月28日以降は年(365日当たり)3%」、第二種奨学金は「令和2年3月28日以降」または「令和2年4月1日以降」が「年(365日当たり)3%」、平成17年3月以前採用の第一種奨学金の一部は「令和2年4月1日以降に該当するときは1.5%」「令和2年3月28日以降に該当するときは1.5%」という6か月ごとの計算方法です。自分がどの行に当たるかは、奨学金の種類・採用年度・貸与終了時期・返還方法で決まります。当サイトはそのあてはめを行いません。ページの表をそのままご確認ください。

    日本学生支援機構「延滞金」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/entai/entaikin.html(2026年9月29日確認)

    10. この記事で扱わないこと

    奨学金を債務整理の対象にできるかどうか、機関保証の代位弁済を受けたあとに何が起きるか、自分がどの制度に当たるか、いつ願い出るべきか。これらはいずれも本記事の範囲外です。前二者はJASSOの公表ページに当サイトが確認できる範囲の記載がなく、後二者は個別の資料と事情を見て行う判断だからです。制度の位置づけは債務整理の4つの方法、公的な窓口は借金の公的な相談窓口一覧、費用の公的制度は法テラスの費用立替制度、相談先の実在確認は日弁連・日司連の公式検索で実在を確認する手順をご覧ください。まずはJASSOの奨学金相談センターに直接確認することもできます。

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    よくある質問

    減額返還と返還期限猶予は何が違うのですか?

    JASSOの説明では、減額返還は「返還月額を減額すれば返還できる場合」に月々の額を2分の1・3分の1・4分の1・3分の2に減額して返還期間を延長する制度、返還期限猶予は「一定期間返還期限を先送りする制度」です。猶予のページには「返還すべき元金や利子が免除されるものではありません。」、減額返還のページには「返還予定総額が減額されるわけではありません。」と、それぞれ明記されています(2026年9月29日確認)。どちらを願い出るかという判断は当サイトでは行いません。

    すでに延滞していても願い出はできますか?

    減額返還の適用条件には「願出及び審査の時点で延滞していないこと」があり、「延滞を解消することにより願出が可能となります。」と書かれています。返還期限猶予の側には「延滞している場合の返還期限猶予の申請手続き」というページが別に用意されており、証明書をいつから提出できるかに応じて「一般猶予で申請」「入金後に一般猶予で申請」「延滞据置猶予で申請」の3つの入口が示されています(2026年9月29日確認)。どれに当たるかはJASSOの案内でご確認ください。

    猶予には上限がありますか?

    一般猶予は「通算10年(120か月)が限度」とされています。ただし傷病・災害・生活保護受給中・産前産後休業および育児休業・大学校在学・海外派遣については年数の制限がないと書かれており、災害は「災害原因が同一の場合は、災害発生から原則5年が限度」、給付奨学金の返還は「10年の上限はありません。」とされています。猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予は「適用期間に制限はありません。」です(2026年9月29日確認)。

    延滞すると信用情報にはいつ登録されるのですか?

    JASSOは「奨学金の返還が延滞3か月以上になった場合、個人信用情報機関への登録対象になります。」と公表しています。返還を新たに開始した方については「返還開始から6か月経過した時点で延滞3か月以上の場合」とされ、判定は毎月行われると書かれています。登録された情報は「返還完了から5年後に削除されます。」とされています(2026年9月29日確認)。登録される具体的な時点や、登録後の個別の取扱いは当サイトでは判断しません。


    日本学生支援機構「返還が難しくなった場合」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/index.html/同「減額返還制度の概要」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/gengaku/seido.html/同「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/index.html/同「返還期限猶予制度の申請手続き」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/about.html/同「一般猶予の申請事由と必要な証明書」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/ippan/teishutusyo/index.html/同「経済困難(一般猶予の申請事由)」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/ippan/teishutusyo/keikon/index.html/同「死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/ippan_menjyo.html/同「個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/entai/kojinjoho/index.html/同「延滞金」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/entai/entaikin.html/独立行政法人日本学生支援機構法(平成十五年法律第九十四号) https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000094/独立行政法人日本学生支援機構法施行令(平成十六年政令第二号) https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000002(いずれも2026年9月29日確認)

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    最終更新:2026年9月29日/このページは公表されている一次情報(日本学生支援機構の公式サイトの各ページ、およびe-Gov法令検索の独立行政法人日本学生支援機構法・同施行令)のみを根拠に作成しています。条文はいずれも本則から抽出しており、附則・改正規定は使用していません。制度の数・事由の数は原文を読み出して数えた値です。願い出の可否の判断、審査の結果、奨学金と債務整理の関係、機関保証の代位弁済後の取扱い、個別の延滞金の計算は、本記事では扱っていません。制度の内容は改定されることがあります。願い出の前に日本学生支援機構の公式サイトで最新の記載をご確認ください。

    本記事は法律相談ではありません。個別の状況は弁護士・司法書士にご相談ください。

  • 税金を滞納して払えないときの公的な猶予制度|換価の猶予・納税の猶予の要件を国税庁の公表情報と条文で確かめる

    税金を滞納して払えないときの公的な猶予制度|換価の猶予・納税の猶予の要件を国税庁の公表情報と条文で確かめる

    PR:本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。掲載内容は公表されている一次情報をもとに当サイトが確認したものです。

    自己破産で免責の許可が確定しても、免責不許可事由と裁量免責で確認したとおり、破産法253条1項ただし書が挙げる「租税等の請求権」は責任を免れる対象から外れています。では、税金そのものを一時に納められないときはどうするのか。国税には申請に基づく猶予の制度があり、根拠条文と要件が公表されています。この記事は、その中身をe-Gov法令検索の条文と国税庁の公表資料だけで確認した記録です(いずれも2026年9月29日確認)。申請すれば猶予されると決まっているわけではありません。どの条文に当たるか、許可されるかどうかは税務署・自治体の判断です。当サイトはその判断を行いません。

    1. 国税の猶予は2種類|換価の猶予と納税の猶予

    国税庁は「猶予の申請の手引」(令和8年4月)を公表しており、冒頭で制度の位置づけを次のように書いています(原文)。

    国税をその納期限までに納付していない場合には、納付するまでの日数に応じて延滞税がかかるほか、督促状の送付を受けてもなお納付されない場合には、財産の差押えなどの滞納処分を受けることがあります。
    ただし、国税を一時に納付することが困難な理由がある場合には、税務署に申請することにより、財産の換価(売却)や差押えなどの猶予が認められる場合があります。

    手引はこれを「1 換価の猶予」と「2 納税の猶予」の2つに分けています。換価の猶予は「国税を一時に納付することにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合に、申請に基づいて差押財産の換価(売却)が猶予される制度」、納税の猶予は「災害、病気、事業の休廃業などによって国税を一時に納付することができないと認められる場合や、本来の期限から1年以上経って納付すべき税額が確定した国税を一時に納付することができない理由があると認められる場合に、申請に基づいて納税が猶予される制度」と説明されています。差押えそのものの範囲は給料の差押えはいくらまでかで条文を引いています。

    国税庁「猶予の申請の手引」(令和8年4月・令和8年4月1日現在の法令等に基づく) https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/yuyo-tebiki/index.htm(2026年9月29日確認・1ページ)

    2. 猶予が認められたときの効果

    手引は効果も2つに分けて列挙しています。換価の猶予が認められると、①既に差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予される、②差押えにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産については差押えが猶予(又は解除)される場合がある、③「換価の猶予が認められた期間中の延滞税が軽減されます。」の3点。納税の猶予が認められると、①新たな差押えや換価(売却)などの滞納処分の執行を受けない、②既に差押えを受けている財産がある場合には申請により差押えが解除される場合がある、③「納税の猶予が認められた期間中の延滞税が軽減又は免除されます。」の3点です(2026年9月29日確認)。

    延滞税の側の条文も確認できます。国税通則法63条1項は、災害等による納税の猶予や滞納処分の執行の停止をした場合はその期間に対応する部分の金額に相当する金額を、事業の廃止等による納税の猶予や換価の猶予をした場合はその期間(納期限の翌日から二月を経過する日後の期間に限る)に対応する部分の金額の二分の一に相当する金額を免除する、と定めています(本則から抽出)。猶予は「税金が消える」制度ではありません。手引も効果として挙げているのは、換価・差押えの猶予と延滞税の軽減であって、本税の免除ではありません。

    国税庁「猶予の申請の手引」1ページ https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/yuyo-tebiki/index.htm/国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)63条 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066(いずれも2026年9月29日確認・本則から抽出)

    3. 換価の猶予の条文|国税徴収法151条と151条の2

    換価の猶予には条文が2つあります。151条(換価の猶予の要件等)は税務署長の職権による猶予で、滞納者が次のいずれかに該当し、かつ「納税について誠実な意思を有すると認められるとき」に換価を猶予できる、という組み立てです(原文)。

    一 その財産の換価を直ちにすることによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあるとき。
    二 その財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る国税及び最近において納付すべきこととなる国税の徴収上有利であるとき。

    同項ただし書は「その猶予の期間は、一年を超えることができない。」と定めています。

    これに対し151条の2は申請による換価の猶予です。条文は、滞納者が「その国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合」に、納税について誠実な意思を有すると認められるときは、「その国税の納期限(延納又は物納の許可の取消しがあつた場合には、その取消しに係る書面が発せられた日)から六月以内にされたその者の申請に基づき、一年以内の期間を限り」換価を猶予できる、と定めています。2項は、申請に係る国税以外の国税の滞納がある場合には適用しない(一定の例外を除く)としています。分割納付については152条1項が、猶予に係る金額を「その猶予をする期間内の各月…に分割して納付させるものとする」と定め、2項が「差押えにより滞納者の事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産の差押えを猶予し、又は解除することができる」としています。「6か月以内の申請」という期限は、151条の2にだけある要件です。

    国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)151条・151条の2・152条 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147(2026年9月29日確認・本則から抽出。附則・改正規定は使用していません)

    4. 換価の猶予の要件は5つ|国税庁の手引が挙げる形

    国税庁の手引は、申請による換価の猶予について「次の①から⑤までに掲げる要件の全てに該当する場合は、換価の猶予を受けることができます。」として5つを挙げています(原文)。

    1. 国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
    2. 納税について誠実な意思を有すると認められること
    3. 換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
    4. 納付すべき国税の納期限から6か月以内に「換価の猶予申請書」が所轄の税務署に提出されていること
    5. 原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること

    手引は①の意味も注記しています。「事業の継続を困難にするおそれがある」とは、事業に不要不急の資産を処分するなど、事業経営の合理化を行った後においても、なお国税を一時に納付することにより、事業を休止又は廃止させるおそれがある場合をいいます。/「生活の維持を困難にするおそれがある」とは、国税を一時に納付することにより、必要最低限の生活費程度の収入が確保できなくなる場合をいいます。/「納税について誠実な意思を有すると認められる」とは、納税者がその国税を優先的に納付する意思を有していると税務署長が認めることができることをいいます。

    担保については、①猶予を受ける金額(未確定の延滞税を含む)が100万円以下である場合、②猶予を受ける期間が3か月以内である場合、③担保を提供することができない特別の事情がある場合には提供する必要がない、とされています。これは国税通則法46条5項ただし書の書き方(猶予に係る税額が百万円以下、猶予の期間が三月以内、担保を徴することができない特別の事情)と対応しています。

    国税庁「猶予の申請の手引」3ページ https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/yuyo-tebiki/index.htm/国税通則法46条5項 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066(いずれも2026年9月29日確認)

    5. 納税の猶予の条文|国税通則法46条の1項・2項・3項

    納税の猶予は国税通則法46条(納税の猶予の要件等)で、1項・2項・3項がそれぞれ別の場面を定めています。

    1項は、震災・風水害・落雷・火災その他これらに類する災害により納税者がその財産につき相当な損失を受けた場合の猶予で、「その災害のやんだ日から二月以内にされたその者の申請に基づき」、納期限から一年以内の期間を限って猶予できるとしています。2項は「次の各号のいずれかに該当する事実がある場合」に、その事実に基づき一時に納付できないと認められるときの猶予で、各号は一 災害・盗難、二 納税者又は生計を一にする親族の病気・負傷、三 事業の廃止・休止、四 事業につき著しい損失、五 これらに類する事実の5つです(機械で数えた値)。3項は、申告納税方式・賦課課税方式・源泉徴収等による国税について、法定申告期限等から一年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した場合の猶予です。いずれも「一年以内の期間を限り」とされ、7項が延長について「既にその者につきこれらの規定により納税の猶予をした期間とあわせて二年を超えることができない」と定めています。

    国税庁の手引も同じ構造で、2項に対応する要件を4つ(①猶予該当事実があること②その事実に基づき一時に納付できないと認められること③「納税の猶予申請書」が所轄の税務署に提出されていること④原則として担保の提供があること)、3項に対応する要件を4つ挙げています。手引は「事業につき著しい損失を受けた」の意味も注記しており、調査期間(猶予を受けようとする期間の始期の前日以前の1年間)の損益計算において、基準期間(その直前1年間)の利益の額の2分の1を超えて損失が生じていること(基準期間において損失が生じている場合には、調査期間の損失の金額が基準期間の損失の金額を超えていること)と説明しています。

    国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)46条 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066/国税庁「猶予の申請の手引」27ページから28ページ https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/yuyo-tebiki/index.htm(いずれも2026年9月29日確認・本則から抽出)

    6. 猶予期間と、許可されない場合

    手引は猶予期間について、換価の猶予も納税の猶予も同じ書き方をしています。「1年の範囲内で、申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く国税を完納することができると認められる期間に限られます。」。延長は「当初の猶予期間が終了する前に所轄の税務署に申請することにより、当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがあります。」とされています。

    許可されない場合も明記されています。手引は「次のいずれかに該当するときは、換価の猶予を許可することができません。」として、①要件に該当しないとき、②強制換価手続が開始されたとき・法人である申請者が解散したとき等で猶予期間内に完納できないと認められるとき、③税務署の職員の質問に回答せず帳簿書類等の検査を拒むなどしたとき、④不当な目的で猶予の申請がされたとき等、の4つを挙げています。申請書等の記載に不備がある場合の補正にも期限があり、「補正通知書の送付を受けた日の翌日から起算して20日以内に補正されないときは、猶予の申請を取り下げたものとみなされます」とされています。また「換価の猶予の申請があった場合、又は換価の猶予が許可された場合であっても、督促状が申請者に送付されますのでご了承ください。」という注記もあります。申請と、許可と、督促状の送付は別の話だと国税庁自身が書いています。

    国税庁「猶予の申請の手引」3ページから6ページ・28ページ https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/yuyo-tebiki/index.htm(2026年9月29日確認)

    7. 申請の窓口と添付書類

    国税庁の手続案内ページ「G-9 換価の猶予の申請手続」は、提出時期を「納付すべき国税の納期限から6か月以内」、提出先を「申請者の納付すべき国税の徴収を担当する国税局又は税務署」、手続根拠を「国税徴収法第151条の2」と明記しています。添付書類は「財産収支状況書」1部、猶予を受けようとする金額が100万円を超える場合は「財産目録」及び「収支の明細書」各1部、および担保提供書1部です。e-Taxによる申請のほか、書面で作成して持参・送付することもできると書かれています。不服申立てについては「不許可処分に対しては、国税通則法第75条に基づき、不服申立てをすることができます。」とあります(2026年9月29日確認)。

    国税庁「G-9 換価の猶予の申請手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/24200039.htm(2026年9月29日確認)

    8. 地方税は別の条文|地方税法15条・15条の5・15条の6

    住民税・固定資産税などの地方税は、国税とは別の法律に同じ形の制度が置かれています。地方税法15条(徴収猶予の要件等)1項は、災害・盗難、病気・負傷、事業の廃止・休止、事業につき著しい損失、これらに類する事実の5つを挙げ、一時に納付し、又は納入することができないと認められるときは、「その者の申請に基づき、一年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができる」と定めています。2項は法定納期限から一年を経過した日以後に納付すべき額が確定した場合、4項は延長について「既にその者につき徴収の猶予をした期間と合わせて二年を超えることができない。」と定めています。

    換価の猶予も2本立てです。15条の5(職権による換価の猶予の要件等)と15条の6(申請による換価の猶予の要件等)で、国税徴収法151条・151条の2と同じ構造です。ただし15条の6の申請期限は「当該地方団体の徴収金の納期限から当該地方団体の条例で定める期間内」と書かれており、国税のように条文で「6月以内」と決まっていません。期間や運用が条例に委ねられている部分があるため、地方税については各自治体の公表情報を確認する必要があります。当サイトは特定の自治体の運用を扱いません。

    地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)15条・15条の5・15条の6 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226(2026年9月29日確認・本則から抽出)

    9. 社会保険料にも同じ名前の制度があります

    厚生年金保険料等についても、日本年金機構が同じ名前の制度を公表しています。ページは「厚生年金保険料等の納付が困難であるとき、事業主の方が申請を行い、一定の要件を満たしている場合は、保険料等について、『換価の猶予』や『納付の猶予』を受けることができます。」と書いています(更新日:2025年9月11日・2026年9月29日確認)。

    換価の猶予は「保険料等を一時に納付することにより事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあり、かつ、保険料等の納付に対する誠実な意思を有すると認められる場合は、猶予を受けようとする保険料等の納期限から6カ月以内に申請することで」受けることができ、認められた場合は分割納付ができ「猶予期間における延滞金の一部が免除されます。」。納付の猶予は「災害等によって事業所の財産に相当な損害を受け、厚生年金保険料等の納付が困難となった場合など」で、認められた場合は一定の期間納付が猶予され「猶予期間における延滞金の全部または一部が免除されます。」とされています。国税の換価の猶予と、要件の書き方も6か月という期限もそろっています。

    日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)」(更新日:2025年9月11日) https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/kankayuyo.html(2026年9月29日確認)

    10. この記事で扱わないこと

    自分の滞納がどの条文に当たるか、申請すれば許可されるか、いくらまで分割できるか、延滞税がいくら減るか。これらはいずれも本記事の範囲外です。猶予の許可・不許可、猶予する金額と期間は税務署(地方税は地方団体の長)の審査によるものであり、国税庁の手引も「税務署では、提出された申請書及び添付書類の内容を確認して、猶予の許可・不許可や、猶予を許可する金額・期間などの審査を行います。」と書いているためです。また、破産手続と租税等の請求権の関係は免責不許可事由と裁量免責、差押えの範囲は給料の差押えはいくらまでかと預金の差押えで扱っています。手続全体の位置づけは債務整理の4つの方法、公的な相談先は借金の公的な相談窓口一覧をご覧ください。税金の猶予の相談先は、税務署または自治体の窓口です。

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    よくある質問

    換価の猶予と納税の猶予はどちらを使うのですか?

    国税庁の手引は2つを別の制度として並べており、要件も条文も別です。換価の猶予は国税徴収法151条(職権)・151条の2(申請)、納税の猶予は国税通則法46条です。151条の2は「納期限から六月以内にされたその者の申請に基づき」という期限つきで、46条1項は「その災害のやんだ日から二月以内にされたその者の申請に基づき」と定められています。どちらに当たるかは当サイトでは判断しません。税務署にご確認ください(2026年9月29日確認)。

    猶予されると税金は減るのですか?

    国税庁の手引が効果として挙げているのは、換価(売却)や差押えの猶予と、延滞税の軽減・免除です。本税が減るという記載は当サイトが確認した一次情報の範囲では見当たりません。国税通則法63条1項は、換価の猶予等をした期間に対応する部分の延滞税について「二分の一に相当する金額は、免除する」と定めています(2026年9月29日確認)。

    猶予の期間はどのくらいですか?

    国税徴収法151条1項ただし書は「その猶予の期間は、一年を超えることができない」、151条の2第1項は「一年以内の期間を限り」、国税通則法46条2項・3項も「一年以内の期間を限り」と定めています。延長については同法46条7項が「既にその者につきこれらの規定により納税の猶予をした期間とあわせて二年を超えることができない」としています。国税庁の手引も「当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲で」と書いています(2026年9月29日確認)。

    申請すれば督促は止まりますか?

    国税庁の手引には「換価の猶予の申請があった場合、又は換価の猶予が許可された場合であっても、督促状が申請者に送付されますのでご了承ください。」という注記があります。これ以上の記載は当サイトが確認した範囲では見当たりません(2026年9月29日確認)。個別の取扱いは所轄の税務署にご確認ください。


    国税庁「猶予の申請の手引」(令和8年4月) https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/yuyo-tebiki/index.htm/国税庁「G-9 換価の猶予の申請手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/24200039.htm/国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号) https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066/国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号) https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147/地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226/日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/kankayuyo.html(いずれも2026年9月29日確認)

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    最終更新:2026年9月29日/このページは公表されている一次情報(国税庁の猶予の申請の手引および手続案内ページ、e-Gov法令検索の国税通則法・国税徴収法・地方税法、日本年金機構の公表ページ)のみを根拠に作成しています。条文はいずれも本則から抽出しており、附則・改正規定は使用していません。要件の数・号数は原文を機械で読み出して数えた値です。猶予の許可・不許可の見通し、猶予される金額や期間、延滞税の具体的な計算、各自治体の条例で定める期間や運用、個別の申請書の書き方は、本記事では扱っていません。申請の可否と手続は所轄の税務署または自治体の窓口にご確認ください。

    本記事は法律相談ではありません。個別の状況は弁護士・司法書士・税理士にご相談ください。

  • 再生計画どおりに払えなくなったら|民事再生法234条の計画変更・235条のハードシップ免責・236条の取消しを条文で確かめる

    再生計画どおりに払えなくなったら|民事再生法234条の計画変更・235条のハードシップ免責・236条の取消しを条文で確かめる

    PR:本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。掲載内容は公表されている一次情報をもとに当サイトが確認したものです。

    個人再生は、再生計画が認可され、その計画のとおりに返済すると残りの債務の免除を受けられる裁判所の手続です。では、認可された後に計画どおりの返済が続けられなくなった場合、法律はどんな手続を用意しているのか。民事再生法は、小規模個人再生の特則の中に234条(再生計画の変更)・235条(計画遂行が極めて困難となった場合の免責)・236条(再生計画の取消し)という3つの条文を置いています。この記事は、その3条の原文と、これらが準用・参照している条文(175条・176条・189条・244条・229条3項・232条)をe-Gov法令検索の法令全文で確認した記録です。先に、条文にはっきり書かれている3点を挙げます。①234条1項は「再生計画で定められた債務の期限を延長することができる」と定め、変更後の債務の最終の期限は「再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲」で定めなければならないとしていること、②235条1項は4つの号の「いずれにも該当する場合」に裁判所が「免責の決定をすることができる」という書き方をしていること、③236条は小規模個人再生についての取消しの規定で、189条2項を準用していること。個別の事情がこれらの条文に当てはまるかどうか、申立てをすればどうなるかという見通しは、当サイトでは述べません。

    1. 条文の場所|第十三章第一節「小規模個人再生」の中にあります

    民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)の法令全文をe-Gov法令APIで取得し(2026年9月13日)、章と節の構成を機械で走査しました。第十三章の章題は原文で「第十三章 小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」で、次の2節に分かれています。

    節節題(原文)含まれる条
    第一節小規模個人再生221条〜238条(この中に234条・235条・236条があります)
    第二節給与所得者等再生239条〜245条
    民事再生法 第十三章の節構成。取得した法令XMLの Chapter/Section 要素を走査して確認したもの(2026年9月13日)。

    つまり234条・235条・236条は、条文の位置としては小規模個人再生についての規定です。給与所得者等再生にどう及ぶかは244条の準用の問題になるので、第5節で別に確認します。なお裁判所は、個人再生手続の特徴として「通常再生手続を簡素化した手続である点に特徴があり、個人再生手続では、過半数の債権額を有する債権者が反対しないという消極的同意で足ります。」と説明しています(2026年9月13日確認)。

    民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号) https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225/裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」個人再生手続 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html#qa_minzi_39(いずれも2026年9月13日確認)

    2. 234条=再生計画の変更|条文が定めているのは「債務の期限の延長」です

    234条の見出しは「(再生計画の変更)」で、3項からなります。原文は次のとおりです。

    第二百三十四条 小規模個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができる。この場合においては、変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲で定めなければならない。

    2 前項の規定により再生計画の変更の申立てがあった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用する。

    3 第百七十五条(第二項を除く。)及び第百七十六条の規定は、再生計画の変更の決定があった場合について準用する。

    1項は2つの文からできています。前半が「延長することができる」という定め、後半(「この場合においては…」)が、変更後の最終期限の上限についての「定めなければならない」という定めです。以下は条文の文言を項目に分けたものであり、当サイトによる解釈や見通しではありません。

    条文の部分書かれていること(234条1項)
    対象となる手続小規模個人再生(条文の主語が「小規模個人再生においては」)
    いつの話か再生計画認可の決定があった後
    事由やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったとき(何が「やむを得ない事由」かは条文に定義がありません)
    誰の申立てか再生債務者の申立て
    変更できる内容再生計画で定められた債務の期限を延長すること(条文が挙げているのは期限の延長です)
    上限変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲で定めなければならない
    民事再生法234条1項の文言を項目に分けたもの。表現はいずれも条文の語です。

    条文は「延長することができる」という書き方で、申立てがあれば延長されるとは書かれていません。当サイトは、どんな事情が「やむを得ない事由」に当たるか、申立てが認められるかについては述べません。返済期間そのもの(229条2項の「三月に一回以上」「三年後」「五年を超えない範囲内で」)は個人再生の最低弁済額の記事で扱っています。

    234条3項が準用している175条・176条の中身

    234条3項は「第百七十五条(第二項を除く。)及び第百七十六条の規定は、再生計画の変更の決定があった場合について準用する」と書いています。準用先を読まずに書かないため、175条・176条の原文も取得しました(2026年9月13日確認)。

    • 175条1項=「再生計画の認可又は不認可の決定に対しては、即時抗告をすることができる。」
    • 175条2項=約定劣後再生債権を有する者の即時抗告を制限する規定。234条3項の括弧書きにより、この2項は準用の対象から除かれています。
    • 175条3項=「議決権を有しなかった再生債権者が第一項の即時抗告をするには、再生債権者であることを疎明しなければならない。」
    • 175条4項=3項の規定を、第18条において準用する民事訴訟法336条の規定による抗告および同法337条の規定による抗告の許可の申立てについて準用する旨の定め。
    • 176条=「再生計画は、認可の決定の確定により、効力を生ずる。」

    民事再生法234条・175条・176条・229条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225(2026年9月13日確認・本則から抽出)

    3. 235条=計画遂行が極めて困難となった場合の免責

    235条の見出しは、原文で「(計画遂行が極めて困難となった場合の免責)」です。取得した民事再生法の法令全文XML(附則を含む)を機械で検索したところ、「ハードシップ」という語の出現は0件でした。「ハードシップ免責」は検索で使われる呼び方であって、条文の言葉ではありません。また、見出し(ArticleCaption)に「免責」を含む条を全条にわたって走査すると、178条(再生債権の免責)と235条の2条だけです。

    235条1項の原文は次のとおりです(柱書と4つの号)。

    第二百三十五条 再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができる。

    一 第二百三十二条第二項の規定により変更された後の各基準債権及び同条第三項ただし書に規定する各再生債権に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。

    二 第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権(第二百三十二条第四項(同条第五項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第百五十六条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。

    三 免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと。

    四 前条の規定による再生計画の変更をすることが極めて困難であること。

    柱書の書き方を落とさずに読むと、条文は「その責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり」という事由と、「次の各号のいずれにも該当する」ことの両方を置いた上で、裁判所が「免責の決定をすることができる」としています。号は4つで、「いずれにも該当する場合」と書かれています(いずれかではありません)。4号は「前条の規定による再生計画の変更をすることが極めて困難であること」=前節の234条の変更に触れる号です。当サイトは、どんな事情が各号に当たるかというあてはめは行いません。

    1号・2号に出てくる言葉は、条文自身が定義しています

    1号・2号は他の条文の言葉を使っています。参照先の原文も取得して確認しました(いずれも2026年9月13日確認・要旨)。

    1号・2号の語その語が置かれている条文
    基準債権231条2項3号が、無異議債権および評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権および84条2項各号に掲げる請求権を除く)を「以下『基準債権』という。」と定義しています
    232条2項の規定により変更された後の232条2項=小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定したときに、すべての再生債権者の権利が「第百五十六条の一般的基準に従い、変更される」という規定(229条3項各号に掲げる請求権および再生手続開始前の罰金等は除かれています)
    同条第三項ただし書に規定する各再生債権232条3項のただし書=債権者がその責めに帰することができない事由により債権届出期間内に届出をすることができず、その事由が230条3項の決定前に消滅しなかったもの、または再生債権の評価の対象となったもの
    229条3項各号に掲げる請求権悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、故意または重大な過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、夫婦間の協力扶助・婚姻費用の分担・子の監護・扶養の各義務に係る請求権など(詳細は最低弁済額の記事で扱っています)
    156条の一般的基準156条=「再生債権者の権利を変更する条項においては、債務の減免、期限の猶予その他の権利の変更の一般的基準(…)を定めなければならない。」
    235条1項1号・2号が参照している条文。いずれも民事再生法の本則から抽出(2026年9月13日確認)。

    235条は全部で9項あります。2項以降に書かれていることは次のとおりです(条文の語による要旨)。

    項条文に書かれていること
    2項1項の申立てがあったときは、裁判所は届出再生債権者の意見を聴かなければならない
    3項免責の決定があったときは、再生債務者および届出再生債権者に対して、その主文および理由の要旨を記載した書面を送達しなければならない
    4項1項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる
    5項免責の決定は、確定しなければその効力を生じない
    6項免責の決定が確定した場合には、再生債務者は、履行した部分を除き、再生債権者に対する債務(229条3項各号に掲げる請求権および再生手続開始前の罰金等を除く)の全部についてその責任を免れる
    7項免責の決定の確定は、別除権者が有する53条1項に規定する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利、および再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない
    8項再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合の、2項・3項の読み替え(「届出再生債権者」に「住宅資金特別条項によって権利の変更を受けた者」を加える読み替え)
    9項6項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権についての免責の効力は、租税条約等実施特例法11条1項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる
    民事再生法235条2項〜9項の要旨。括弧書き・ただし書を落とさずに原文から整理したもの(2026年9月13日確認)。

    民事再生法235条・232条・231条・229条・156条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225(2026年9月13日確認・本則から抽出)

    4. 236条=再生計画の取消し|189条とセットで読む条文です

    236条の見出しも「(再生計画の取消し)」で、1項だけの条文です。原文は次のとおりです。

    第二百三十六条 小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定した場合には、計画弁済総額が、再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における基準債権に対する配当の総額を下回ることが明らかになったときも、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。この場合においては、第百八十九条第二項の規定を準用する。

    注目すべきは「明らかになったときも」という助詞と、「第百八十九条第二項の規定を準用する」という2文目です。189条は通常の再生手続の「(再生計画の取消し)」の条文で、その1項は次の3つの事由を挙げています(原文)。

    第百八十九条 再生計画認可の決定が確定した場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。

    一 再生計画が不正の方法により成立したこと。

    二 再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと。

    三 再生債務者が第四十一条第一項若しくは第四十二条第一項の規定に違反し、又は第五十四条第二項に規定する監督委員の同意を得ないで同項の行為をしたこと。

    小規模個人再生について通常の再生手続の規定のうち適用されないものを並べているのは238条です。その原文を機械で走査すると、「百八十九」という文字が現れるのは1箇所だけで、それは「第百八十五条(第百八十九条第八項、第百九十条第二項及び第百九十五条第七項において準用する場合を含む。)」という括弧の中です。189条そのものは、238条が並べる適用除外の列挙には挙げられていません。これは条文の文字を数えた結果の指摘であり、個別の事案でどう扱われるかについて当サイトは述べません。

    236条が準用する189条2項、および取消しの決定が確定した場合について定める189条7項は次のとおりです(原文)。

    2 前項第一号に掲げる事由を理由とする同項の申立ては、再生債権者が再生計画認可の決定に対する即時抗告により同号の事由を主張したとき、若しくはこれを知りながら主張しなかったとき、再生債権者が同号に該当する事由があることを知った時から一月を経過したとき、又は再生計画認可の決定が確定した時から二年を経過したときは、することができない。

    7 第四項の決定が確定した場合には、再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する。ただし、再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない。

    6項・7項・8項が「第四項の決定」と書いているのは原文どおりの表記です(4項は、裁判所が再生計画取消しの決定をしたときの裁判書の送達と公告について定める項です)。7項のただし書(「ただし、再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない。」)も条文の一部です。

    民事再生法236条・189条・238条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225(2026年9月13日確認・本則から抽出)

    5. 給与所得者等再生ではどうなるか|244条の準用の列挙を1字ずつ確認する

    個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2類型があります。第二節(給与所得者等再生)の244条は、第一節の規定のうちどれを準用するかを列挙しています(原文)。

    第二百四十四条 第二百二十一条第三項から第五項まで、第二百二十二条から第二百二十九条まで、第二百三十二条から第二百三十五条まで及び第二百三十七条第二項の規定は、給与所得者等再生について準用する。

    列挙を機械で照合すると、次のことが読み取れます。いずれも条文の文字についての事実です。

    条244条の列挙に含まれるか
    234条(再生計画の変更)含まれる(「第二百三十二条から第二百三十五条まで」の範囲内)
    235条(計画遂行が極めて困難となった場合の免責)含まれる(同上・範囲の末尾)
    236条(再生計画の取消し)列挙に含まれていません(範囲は235条までで、237条は2項だけが挙げられています)
    民事再生法244条の準用の列挙と、234条・235条・236条の対応(2026年9月13日確認)。

    給与所得者等再生の再生計画の取消しについては、第二節の中に242条が置かれています(原文)。

    第二百四十二条 給与所得者等再生において再生計画認可の決定が確定した場合には、計画弁済総額が再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における基準債権に対する配当の総額を下回り、又は再生計画が前条第二項第七号に該当することが明らかになったときも、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。この場合においては、第百八十九条第二項の規定を準用する。

    236条と読み比べると、242条には「又は再生計画が前条第二項第七号に該当することが明らかになったとき」という部分が加わっています。「前条第二項第七号」=241条2項7号は、計画弁済総額が、条文の定める区分に応じた収入の合計額から所得税等に相当する額と「再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額」を控除した額に二を乗じた額以上の額であると認めることができないときを、給与所得者等再生の再生計画不認可事由として挙げる号です(同条3項は、この一年分の費用の額を政令で定めるとしています)。裁判所も給与所得者等再生について「債務者の年収額から生活に必要な費用を差し引いた額(可処分所得額)の2年分以上の額を返済することも必要になります。」と説明しています(2026年9月13日確認)。この下限そのものは最低弁済額の記事で扱っています。

    民事再生法244条・242条・241条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225/裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」個人再生手続 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html#qa_minzi_39(いずれも2026年9月13日確認)

    6. 235条の免責の決定が確定した後の「七年」という起算点

    235条1項の免責の決定は、別の手続の条文の中でも起算点として使われています。民事再生法239条5項2号は、給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述について、次のイからハまでに定める日から七年以内に申述がされたことを、小規模個人再生により行う旨の決定をする事由の1つとして挙げています(原文・イからハまでの右側が「それぞれイからハまでに定める日」)。

    号の枝事由(原文)起算日(原文)
    イ給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと当該再生計画認可の決定の確定の日
    ロ第二百三十五条第一項(第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
    ハ破産法第二百五十二条第一項に規定する免責許可の決定が確定したこと当該決定の確定の日
    民事再生法239条5項2号イ〜ハ(2026年9月13日確認・本則から抽出)。同法241条2項6号は「第二百三十九条第五項第二号に規定する事由があるとき」を給与所得者等再生の再生計画不認可事由として挙げています。

    破産法(平成十六年法律第七十五号)の側にも、対になる規定があります。252条1項10号は、次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったことを免責不許可事由の1つとして挙げ、そのハを次のように定めています(原文)。

    ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと/当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日

    ※原文は左欄に事由、右欄に「定める日」を置く2欄構成です。上の引用では2欄を「/」で区切って示しています(語句の省略はしていません)。

    破産法252条1項の11の号と、同条2項(いわゆる裁量免責の規定)は免責不許可事由の記事で扱っています。当サイトは、実際にどの手続が選べるか、七年の起算がどうなるかという個別の判断は行いません。

    民事再生法239条・241条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225/破産法(平成十六年法律第七十五号)252条 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075(いずれも2026年9月13日確認・本則から抽出)

    7. 裁判所が公表している手続の案内(申立先・費用)

    ここまでの3条は条文で確認したものです。手続の入口についての裁判所の案内は次のとおりです(2026年9月13日確認・原文)。

    • 申立先=「原則として、債務者の住所地を管轄する地方裁判所です。」
    • 申立てに必要な費用=「収入印紙1万円分」/「連絡用の郵便料、予納金」
    • 同ページの注記=「※連絡用の郵便料等については、裁判所ごとに異なりますので、申立先の裁判所へ確認してください。」
    • 申立てに必要な書類=「裁判所ごとに異なりますので、申立先の裁判所へ確認してください。」

    再生計画の内容については、同ページに「原則として3年間で債務の一定割合を分割して返済するもので、その返済総額が、債務者が自分の財産を処分して返済に当てる場合の額(清算価値)を上回らなければなりません」と記載されています。本記事の軸である234条・235条・236条の要件は、この案内ページではなく条文(前節までのとおり)を根拠としています。

    裁判所「個人再生」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_18/index.html(2026年9月13日確認)

    8. この記事で扱わないこと

    「やむを得ない事由」「その責めに帰することができない事由」「極めて困難」といった要件に個別の事情が当たるかどうか、4分の3という割合を具体的にどう計算するか、申立てをした場合の見通し、申立ての書式や個人再生委員の関与といった運用は、いずれも本記事では扱いません(民事再生規則・最高裁判所規則の様式は今回実査していません)。手続の全体像は債務整理の4つの方法と個人再生とは・自己破産とはで、返済額の下限は最低弁済額で確認できます。毎月の返済額の整理には当サイトの返済計算ツールが使えます。相談先を探す段階では、弁護士・司法書士が実在するかを公式検索で確認する手順と実在確認ナビ、費用については法テラスの立替制度、公的な窓口は借金の相談窓口をご覧ください。

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    よくある質問

    「ハードシップ免責」は法律用語ですか?

    235条の見出しは原文で「(計画遂行が極めて困難となった場合の免責)」です。e-Gov法令APIで取得した民事再生法の法令全文XML(附則を含む)を機械検索したところ、「ハードシップ」という語の出現は0件でした(2026年9月13日)。検索で使われる呼び方であって、条文の言葉ではありません。

    再生計画の期限はどこまで延ばせると条文に書かれていますか?

    234条1項の後半が「変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲で定めなければならない。」と定めています。前半は「延長することができる」という書き方で、申立てが認められるかどうかについては条文に書かれていません。個別の判断は弁護士・司法書士にご相談ください。

    給与所得者等再生でも234条・235条は使われるのですか?

    244条は「第二百三十二条から第二百三十五条まで」の規定を給与所得者等再生について準用すると列挙しており、234条・235条はこの範囲に含まれます。一方、236条は列挙に含まれておらず、給与所得者等再生の再生計画の取消しについては242条が別に置かれています(2026年9月13日確認)。

    再生計画が取り消されると、債権はどうなると条文に書かれていますか?

    189条7項は「第四項の決定が確定した場合には、再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する。ただし、再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない。」と定めています(「第四項の決定」は原文どおりの表記で、4項は取消しの決定をしたときの送達・公告についての項です)。236条は、この189条のうち2項を準用する旨を定めています。


    出典(再掲):民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号) https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225/破産法(平成十六年法律第七十五号) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075/裁判所「個人再生」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_18/index.html/裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html#qa_minzi_39(いずれも2026年9月13日確認)

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    最終更新:2026年9月13日/このページは公表されている一次情報(e-Gov法令検索・裁判所)のみを根拠に作成しています。条文は民事再生法および破産法の本則から抽出し、括弧書き・ただし書・柱書は省略せずに引用しています(省略する場合はその旨を明示しています)。要件のあてはめ、申立ての見通し、民事再生規則・様式、個人再生委員の関与といった運用は本記事では扱っていません。

    本記事は法律相談ではありません。個別の状況は弁護士・司法書士にご相談ください。

  • 小規模個人再生と給与所得者等再生の違い|民事再生法230条の書面等投票と241条の不認可事由を条文で確かめる

    小規模個人再生と給与所得者等再生の違い|民事再生法230条の書面等投票と241条の不認可事由を条文で確かめる

    PR:本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。掲載内容は公表されている一次情報をもとに当サイトが確認したものです。

    個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2つの類型があります。この記事は、その2つが条文のうえでどこがどう違うのかを、e-Gov法令検索の民事再生法(平成11年法律第225号)の本則と、裁判所・日本弁護士連合会・法テラスの公表情報だけで確認した記録です。先に結論として、条文にはっきり書かれている違いは次の3点です。①小規模個人再生には再生計画案の「決議」があり(230条)、給与所得者等再生にはその代わりに届出再生債権者からの「意見聴取」がある(240条)。②不認可事由を定める条文が別で、小規模個人再生は231条2項の5号、給与所得者等再生は241条2項の7号。③給与所得者等再生を準用の形で組み立てている244条は、230条と231条を準用の列挙に挙げていない。どちらの類型に当たるか、どちらを選ぶかという判断は、資料を見て行う個別の判断です。当サイトはそれを扱いません。

    1. 条文の置き場所|221条から238条まで/239条から245条まで

    民事再生法の本則で、この2類型は第十三章「小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」に置かれています。本則を機械で読み出して数えたところ、小規模個人再生の条文は221条から238条までの18か条、給与所得者等再生の条文は239条から245条までの7か条でした(2026年9月13日確認)。

    入口の条文の書き方も対応しています。221条1項は小規模個人再生を求めることができる者を定め、239条1項はそのうちの一部という書き方をしています(原文)。

    第二百二十一条第一項に規定する債務者のうち、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「給与所得者等再生」という。)を行うことを求めることができる。

    裁判所の説明も同じ構造です。「個人再生」のページは、①を小規模個人再生、②を「①の中でも、給与所得者など将来の収入を確実で簡単に把握することが可能な人が申立てることができる給与所得者等再生」と書いています(2026年9月13日確認)。法テラスの公式FAQも、給与所得者等再生について「(1)の条件に加えて次の条件が必要となります。・収入が給料などで、その金額が安定していること」と説明しています。つまり条文上も公的な説明上も、2つは並列ではなく、後者が前者の内側にある形です。221条1項の「五千万円を超えないもの」という要件については個人再生の最低弁済額とはで条文を引いています。

    民事再生法(平成11年法律第225号)221条・239条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225(2026年9月13日確認・本則から抽出)/裁判所「個人再生」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_18/index.html/法テラス「個人再生にはどのような種類のものがありますか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-sonota-002.html(いずれも2026年9月13日確認)

    2. 決め方が違う|230条の決議と、240条の意見聴取

    最大の違いは、再生計画案を債権者にどう諮るかです。

    小規模個人再生=230条の決議(書面等投票)

    230条3項は、裁判所が再生計画案を決議に付する決定をする際の議決権行使の方法を、169条2項2号に掲げる方法に限定しています(原文)。

    再生計画案の提出があったときは、裁判所は、前二項の場合を除き、議決権行使の方法としての第百六十九条第二項第二号に掲げる方法及び第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により議決権の不統一行使をする場合における裁判所に対する通知の期限を定めて、再生計画案を決議に付する旨の決定をする。

    その169条2項2号は「書面等投票(書面その他の最高裁判所規則で定める方法のうち裁判所の定めるものによる投票をいう。)により裁判所の定める期間内に議決権を行使する方法」です。同項1号の「債権者集会の期日において議決権を行使する方法」と3号の選択方式は、230条3項では引かれていません。

    そして230条4項は、議決権者に通知すべき事項として、「再生計画案に同意しない者は裁判所の定める期間内に同項の規定により定められた方法によりその旨を回答すべき旨」を挙げています。回答するのは「同意しない者」の側です。

    給与所得者等再生=240条の意見聴取

    これに対し240条1項は、給与所得者等再生では再生計画案の提出があったとき、裁判所は一定の場合を除き「再生計画案を認可すべきかどうかについての届出再生債権者の意見を聴く旨の決定」をしなければならないと定めています。その除外事由は同項1号から4号までの4つで、1号は「再生計画案について次条第二項各号のいずれかに該当する事由があると認めるとき。」です。

    意見の中身も条文が限定しています。240条2項は、届出再生債権者に対して次の旨を通知しなければならないと定めています(原文)。

    前項の決定をした場合には、その旨を公告し、かつ、届出再生債権者に対して、再生計画案の内容又はその要旨を通知するとともに、再生計画案について次条第二項各号のいずれかに該当する事由がある旨の意見がある者は裁判所の定める期間内にその旨及び当該事由を具体的に記載した書面を提出すべき旨を通知しなければならない。

    条文の文言をそのまま読めば、小規模個人再生で回答するのは「同意しない」という意思であり、給与所得者等再生で提出するのは「241条2項各号のいずれかに該当する事由がある」という意見とその具体的な記載です。どちらが有利かという評価は当サイトでは行いません。

    244条は230条・231条を準用していません

    給与所得者等再生の条文が7か条で足りているのは、多くを小規模個人再生から準用しているからです。244条の全文は次のとおりです(原文)。

    第二百二十一条第三項から第五項まで、第二百二十二条から第二百二十九条まで、第二百三十二条から第二百三十五条まで及び第二百三十七条第二項の規定は、給与所得者等再生について準用する。

    この列挙には、230条(再生計画案の決議)・231条(再生計画の認可又は不認可の決定)・236条(再生計画の取消し)が入っていません。代わりに置かれているのが240条・241条・242条です。

    民事再生法169条・230条・240条・244条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225(2026年9月13日確認・本則から抽出)

    3. 「同意しない」をどう数えるか|230条6項・7項

    小規模個人再生で可決とみなされる要件は、230条6項が定めています(原文)。

    第四項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないときは、再生計画案の可決があったものとみなす。

    条文が置いている条件は①頭数(議決権者総数の半数)②議決権の額(議決権の総額の二分の一)の2つで、「かつ」で結ばれています。裁判所の「裁判手続 民事事件Q&A」も、個人再生手続について次のように説明しています(原文)。

    通常再生手続を簡素化した手続である点に特徴があり、個人再生手続では、過半数の債権額を有する債権者が反対しないという消極的同意で足ります。

    議決権の額の基準は230条8項にあり、無異議債権については届出があった再生債権の額または担保不足見込額に応じて、評価済債権についてはその額に応じて議決権を行使できると定めています(同項が「無異議債権」「評価済債権」の定義を置いている条文です)。

    また230条7項は、議決権の一部のみを行使した議決権者がいる場合の数え方について、「当該議決権者一人につき、議決権者総数に一を、再生計画案に同意しない旨を第四項の方法により回答した議決権者の数に二分の一を、それぞれ加算するものとする。」と定めています。個別の事案で誰が議決権者になり、どの額で数えられるかは、届出と異議・評価の結果によって決まる事項です。当サイトはその見通しを述べません。

    民事再生法230条6項・7項・8項 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225/裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(いずれも2026年9月13日確認)

    4. 不認可事由の条文が別|231条2項(5号)と241条2項(7号)

    本則を機械で読み出して数えたところ、231条2項の号は5号(一号から五号)、241条2項の号は7号(一号から七号)でした。231条2項各号の中身(五千万円・十分の一・五分の一・百万円・三百万円といった条文上の下限)は個人再生の最低弁済額とはで原文を引いていますので、ここでは2つの条文の対応関係だけを並べます。

    241条2項の号条文が定める不認可事由(要旨)小規模個人再生の対応
    1号174条2項1号または2号に規定する事由(住宅資金特別条項を定めた再生計画の場合は同項1号または202条2項2号)があるとき231条1項が174条2項を引用(3号・4号を含む)
    2号「再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき。」174条2項4号は「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。」
    3号住宅資金特別条項を定めたものである場合に202条2項3号の事由があるとき231条1項が202条2項を引用
    4号再生債務者が、給与若しくはこれに類する定期的な収入を得ている者に該当しないか、またはその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないとき対応する号なし(231条2項1号は「継続的に又は反復して収入を得る見込みがないとき」)
    5号231条2項2号から5号までに規定する事由のいずれかがあるとき231条2項2号〜5号そのもの
    6号239条5項2号に規定する事由があるとき(=7年以内)対応する号なし
    7号計画弁済総額が、イ〜ハの区分に応じた額から「最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額」を控除した額に二を乗じた額以上であると認めることができないとき対応する号なし
    民事再生法241条2項各号と、小規模個人再生側の条文の対応。要旨は条文の文言に基づく整理で、条文にこの形の表があるわけではありません。

    細かい点ですが、174条2項4号は「再生計画の決議が」、241条2項2号は「再生計画が」再生債権者の一般の利益に反するとき、と書かれています。給与所得者等再生には決議がないため、条文の主語も揃えられている形です。また241条2項1号が174条2項のうち1号と2号だけを引いているのは、同項3号が「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。」という決議を前提とした事由だからと読める書き方になっています(この読み方は条文の文言に基づく整理です)。

    民事再生法174条2項・231条・241条2項 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225(2026年9月13日確認・本則から抽出)

    5. 給与所得者等再生にしかない号|4号・6号・7号

    上の表で「対応する号なし」となった3つが、給与所得者等再生に固有の条文です。

    241条2項4号|「得る見込みがある者」と「得ている者」

    入口の239条1項は「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者」と書いていますが、不認可事由の241条2項4号は「給与若しくはこれに類する定期的な収入を得ている者に該当しないか、又はその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないとき。」と書かれています。条文の文言が異なるという事実だけを記録します。個別の収入がどちらに当たるかの判断は当サイトでは行いません。

    241条2項6号→239条5項2号|3つの起算日から7年以内

    239条5項2号は、次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合に、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に給与所得者等再生を求める申述がされたことを事由として挙げています(原文の各号)。

    号事由起算日
    イ給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと当該再生計画認可の決定の確定の日
    ロ235条1項(244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
    ハ破産法252条1項に規定する免責許可の決定が確定したこと当該決定の確定の日
    民事再生法239条5項2号イ〜ハ(2026年9月13日確認・本則から抽出)。同号は241条2項6号が引用しています。

    239条5項の柱書は、この事由が明らかであると認めるときは、裁判所は再生手続開始の決定前に限り「再生事件を小規模個人再生により行う旨の決定をする」と定めています。ただし同項ただし書は、再生債務者が3項本文により小規模個人再生による手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、裁判所は申立てを棄却しなければならないとしています。この「7年」は、破産の側から見ると破産法252条1項10号の免責不許可事由と鏡合わせの関係にあります(同号の条文は免責不許可事由とはで引いています)。

    241条2項7号|可処分所得の2年分

    7号の計算式(イ〜ハの区分に応じた額から一年分の費用の額を控除し、二を乗じる)は個人再生の最低弁済額とはで扱っています。イ・ロ・ハの区分がいずれも「再生計画案の提出前二年間」を基準にしていること、イが「再就職その他の年収について五分の一以上の変動を生ずべき事由が生じた場合」を切り出していることが、条文の書き方です。裁判所も、小規模個人再生の返済の要件として①3年間(最長5年間)の分割、②無担保債務の総額に応じた下限、③清算価値以上の3つを挙げたうえで「給与所得者等再生では、その3つに加えて、債務者の年収額から生活に必要な費用を差し引いた額(可処分所得額)の2年分以上の額を返済することも必要になります。」と説明しています(2026年9月13日確認)。

    民事再生法239条5項・241条2項 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225/裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(いずれも2026年9月13日確認)

    6. 「一年分の費用の額」を定める政令は実在します|平成13年政令第50号

    241条3項は、7号の「一年分の費用の額」について「再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域、当該扶養を受けるべき者の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定める。」と規定しています。その政令は「民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令」(平成十三年政令第五十号)としてe-Gov法令検索に収録されています(2026年9月13日確認)。同令1条は次のとおりです(原文)。

    民事再生法(以下「法」という。)第二百四十一条第三項の一年分の費用の額は、次に掲げる額の合計額とする。
    一 個人別生活費の額
    二 世帯別生活費の額
    三 冬季特別生活費の額
    四 住居費の額
    五 勤労必要経費の額

    本則を機械で読み出して数えたところ、この政令は1条から7条までの7か条と、枝番を含めて23の別表で構成されていました。別表第一「居住地域の区分の表」は第一区から第六区までの6区分で、第六区は「第一区から第五区まで以外の市町村」です。個人別生活費・世帯別生活費・冬季特別生活費は、この6区分それぞれに別表が用意されています。

    金額の決まり方について、条文に書かれている事実を2つだけ挙げます。①2条2項は、個人別生活費の表で使う年齢を「再生債務者が再生計画案を提出した日以後の最初の四月一日における年齢」としています。②6条1項は勤労必要経費を「再生債務者の収入が勤労に基づいて得たものである場合には」と条件付きで定め、同条3項は「第一項に規定する場合以外の場合においては、勤労必要経費の額は、ないものとする。」としています。別表の具体的な金額と、それを当てはめた計算結果は、資料を見て行う個別の作業です。当サイトでは扱いません。

    民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令(平成十三年政令第五十号) https://laws.e-gov.go.jp/law/413CO0000000050(2026年9月13日確認・本則および別表から抽出)

    7. 計画の取消しの条文も別|236条と242条

    認可の決定が確定した後の取消しについても、条文は2本に分かれています。小規模個人再生の236条は、計画弁済総額が、認可の決定があった時点で破産手続が行われた場合における基準債権に対する配当の総額を下回ることが明らかになったときを、再生債権者の申立てによる取消しの事由として定めています。給与所得者等再生の242条は次のとおりです(原文)。

    給与所得者等再生において再生計画認可の決定が確定した場合には、計画弁済総額が再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における基準債権に対する配当の総額を下回り、又は再生計画が前条第二項第七号に該当することが明らかになったときも、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。この場合においては、第百八十九条第二項の規定を準用する。

    「又は再生計画が前条第二項第七号に該当することが明らかになったとき」の部分が、236条にはない事由です。241条2項7号=可処分所得の2年分の下限が、認可後の取消事由としても働く書き方になっています。

    一方、244条が準用している222条から229条までと232条から235条までは、2類型に共通します。住宅資金特別条項の適用場面を除き、個人再生委員(223条)、債権者一覧表に基づくみなし届出(225条)、届出再生債権に対する異議(226条)、再生債権の評価(227条)、再生計画による権利の変更の内容と弁済期の定め(229条)、再生計画の効力(232条)、計画遂行が極めて困難となった場合の免責(235条)は、条文上どちらの類型でも同じ規定が働きます。

    民事再生法236条・242条・244条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225(2026年9月13日確認・本則から抽出)

    8. 書式の側から見える違い

    日本弁護士連合会は「個人再生手続参考書式」として、東京地方裁判所で利用されている東京地裁モデルの書式一覧を公開しています。その一覧には書式1「再生手続開始申立書(小規模個人再生)」と書式2「再生手続開始申立書(給与所得者等再生)」が別の書式として並んでおり、書式8として「可処分所得額算出シート」が置かれています(2026年9月13日確認)。同ページは書式8に※の注記を付け、エクセルの計算式の関係で⑮の値が1少なく表示される場合がある旨をあらかじめ留意するよう書いています。またページ冒頭には、掲載の書式が東京地裁モデルであること、地域によってはその地域の書式のみを専用的に利用している所があること、利用前に申立てを予定している地方裁判所に利用書式を問い合わせるよう求める注記があります。書式そのものの中身は転載しません。リンク先でご確認ください。

    裁判所側の「個人再生手続で使う書式」ページに掲載されているダウンロードファイルは、機械で数えたところ3点(再生債権の名義変更届出書、再生債権の(一部・全部)取下書、再生計画認可決定確定証明申請書)でした(2026年9月13日確認)。申立てに必要な書類について、裁判所の「個人再生」ページは「裁判所ごとに異なりますので、申立先の裁判所へ確認してください。」と記載しています。申立てに必要な費用として同ページが挙げているのは「収入印紙1万円分」と「連絡用の郵便料、予納金」で、連絡用の郵便料等は裁判所ごとに異なるため申立先の裁判所へ確認するよう※で注記されています。相談前にそろえる資料の考え方は債務整理の相談に持っていく資料にまとめています。

    日本弁護士連合会「個人再生手続参考書式」 https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/oyakudachi/kojinsaisei.html/裁判所「個人再生手続で使う書式」 https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_hasan/kojinsaisei/index.html/裁判所「個人再生」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_18/index.html(いずれも2026年9月13日確認)

    9. この記事で扱わないこと

    自分がどちらの類型に当たるか、どちらを選ぶことになるか、可処分所得や清算価値がいくらになるか、債権者が同意しない旨を回答するかどうか。これらはいずれも資料と個別の事情を見て行う判断であり、当サイトは扱いません。手続そのものの位置づけは個人再生とはと債務整理の4つの方法、条文上の弁済額の下限は個人再生の最低弁済額とは、住宅ローンがある場合の特則は住宅資金特別条項、破産との違いは自己破産とはで扱っています。相談先を選ぶ前には日弁連・日司連の公式検索で実在を確認する手順と実在確認ナビをご覧ください。費用の公的制度は法テラスの費用立替制度と立替基準額、今の返済の整理には返済の計算ツールが使えます。

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    よくある質問

    2つの類型のいちばん大きな違いは何ですか?

    条文の違いとしては、再生計画案を債権者に諮る仕組みが別であることです。小規模個人再生には230条の決議があり、同条3項は議決権行使の方法を169条2項2号の「書面等投票」に限定しています。給与所得者等再生にはその代わりに240条の意見聴取が置かれ、244条の準用の列挙に230条と231条は入っていません(2026年9月13日確認・本則から抽出)。どちらが向いているかという判断は当サイトでは行いません。

    債権者が反対すると小規模個人再生はどうなるのですか?

    230条6項は、同意しない旨を回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつその議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないときは可決があったものとみなす、と定めています。裁判所も「過半数の債権額を有する債権者が反対しないという消極的同意で足ります」と説明しています(2026年9月13日確認)。個別の事案で誰が議決権者になり、どう数えられるかは当サイトでは判断しません。

    給与所得者等再生には「7年」の制限があると聞きました。

    241条2項6号が239条5項2号を引用しています。同号は、イ=給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと(起算日は当該再生計画認可の決定の確定の日)、ロ=235条1項に規定する免責の決定が確定したこと(起算日は当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日)、ハ=破産法252条1項に規定する免責許可の決定が確定したこと(起算日は当該決定の確定の日)の3つを挙げ、それぞれの日から7年以内に申述がされたことを事由としています。小規模個人再生の231条2項には対応する号がありません(2026年9月13日確認・本則から抽出)。

    可処分所得を計算する政令は公開されているのですか?

    「民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令」(平成十三年政令第五十号)がe-Gov法令検索に収録されています。同令1条は一年分の費用の額を個人別生活費・世帯別生活費・冬季特別生活費・住居費・勤労必要経費の5つの合計額とし、別表第一は居住地域を第一区から第六区までの6区分に分けています(2026年9月13日確認)。別表の金額と、それを当てはめた計算は当サイトでは扱いません。弁護士・司法書士にご相談ください。


    民事再生法(平成11年法律第225号) https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225/民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令(平成十三年政令第五十号) https://laws.e-gov.go.jp/law/413CO0000000050/裁判所「個人再生」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_18/index.html/裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html/裁判所「個人再生手続で使う書式」 https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_hasan/kojinsaisei/index.html/日本弁護士連合会「個人再生手続参考書式」 https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/oyakudachi/kojinsaisei.html/法テラス「個人再生にはどのような種類のものがありますか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-sonota-002.html(いずれも2026年9月13日確認)

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    最終更新:2026年9月16日/このページは公表されている一次情報(e-Gov法令検索の民事再生法および平成十三年政令第五十号、裁判所の個人再生ページ・民事事件Q&A・個人再生手続で使う書式、日本弁護士連合会の個人再生手続参考書式、法テラスの公式FAQ)のみを根拠に作成しています。条文はいずれも本則(政令は本則および別表)から抽出しており、附則・改正規定は使用していません。条数・号数・別表の数は原文を機械で読み出して数えた値です。政令別表の具体的な金額、東京地裁モデル書式の中身、各裁判所の運用、どちらの類型に当たるかというあてはめは、本記事では扱っていません。

    本記事は法律相談ではありません。個別の状況は弁護士・司法書士にご相談ください。

  • 差押禁止動産とは|民事執行法131条の1号〜14号と施行令1条の66万円を条文と裁判所の動産執行の説明で確かめる

    差押禁止動産とは|民事執行法131条の1号〜14号と施行令1条の66万円を条文と裁判所の動産執行の説明で確かめる

    PR:本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。掲載内容は公表されている一次情報をもとに当サイトが確認したものです。

    差押えという言葉を聞いたとき、家の中の物がどこまで対象になるのかが気になることがあります。この点について、民事執行法131条は「次に掲げる動産は、差し押さえてはならない」として、1号から14号までのリストを置いています。この記事は、その条文の原文と、3号が委任している政令の金額、そして裁判所が公表している動産執行の手続案内を、e-Gov法令検索と裁判所の公表情報だけで確認した記録です。先に、一次情報にはっきり書かれている3点を挙げます。①民事執行法131条は差し押さえてはならない動産を1号から14号まで列挙していること、②3号の「政令で定める額の金銭」は民事執行法施行令1条により66万円とされていること、③131条の各号に掲げる動産であっても、執行裁判所が申立てにより差押えを許すことができる旨が132条1項に書かれていること。個別の家財が条文のどの号に当たるか、当たらないかは、当サイトでは判断しません。

    1. 条文の位置|動産の差押えは「執行官の差押え」で始まります

    まず前提として、動産の差押えがどの手続かを条文で確認します。e-Gov法令検索で民事執行法(昭和54年法律第4号・lawId=354AC0000000004)の本則を確認しました(2026年9月12日)。122条の見出しは「動産執行の開始等」で、1項の原文は次のとおりです。

    動産(登記することができない土地の定着物、土地から分離する前の天然果実で一月以内に収穫することが確実であるもの及び裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券を含む。以下この節、次章及び第四章において同じ。)に対する強制執行(以下「動産執行」という。)は、執行官の目的物に対する差押えにより開始する。

    123条1項は「債務者の占有する動産の差押えは、執行官がその動産を占有して行う。」と定め、同条2項は執行官が差押えに際して「債務者の住居その他債務者の占有する場所に立ち入り」、目的物を「捜索することができる」と書いています。この動産執行について、差し押さえてはならない物を列挙しているのが131条です。条文の見出しはそのまま「差押禁止動産」です。

    民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    2. 民事執行法131条の原文|1号から14号まで

    131条の柱書は次の一文です(原文)。

    次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。

    続く各号は次のとおりです。表の右列はすべて条文の文言そのものであり、当サイトによる言い換えや当てはめではありません(e-Gov法令検索の本文に付されている読み仮名のみ除いています)。

    号条文の文言(原文)
    1号債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
    2号債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
    3号標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
    4号主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
    5号主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
    6号技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
    7号実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
    8号仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
    9号債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
    10号債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
    11号債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
    12号発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
    13号債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
    14号建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
    民事執行法131条各号(1号〜14号)。条文にただし書は置かれていません。

    各号の多くは「生活に欠くことができない」「必要な」「業務に欠くことができない」といった、物の種類だけでは決まらない書き方になっています。特定の家電や家財が条文のどの号に当たるかは、条文の文言からは一義的に定まりません。当サイトは「この品目は差し押さえられない」という形の説明をせず、条文にこう書いてある、というところまでを示します。

    民事執行法131条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    3. 3号の「政令で定める額」=施行令1条の66万円

    131条3号だけは、金額の決定を政令に委ねています。その政令が民事執行法施行令(昭和55年政令第230号・lawId=355CO0000000230)です。1条の見出しは「差押えが禁止される金銭の額」で、原文は次のとおりです。

    民事執行法(以下「法」という。)第百三十一条第三号(法第百九十二条において準用する場合を含む。)の政令で定める額は、六十六万円とする。

    131条3号が指している金額は66万円です。条文の文言は「標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」であり、対象として書かれているのは金銭です。

    民事執行法施行令(昭和55年政令第230号) https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    4. 「債務者等」は本人だけを指す語ではありません

    131条の1号・2号・11号・13号には「債務者等」という語が使われています。この語を定めているのは、同じ民事執行法の97条1項です。ただし97条は「債務者等」だけを定めるために置かれた条ではありません。97条の見出しは「建物使用の許可」で、債務者の居住する建物について強制管理の開始決定がされた場合の建物の使用の許可を定めた規定であり、その1項の文中で「債務者等」の語が定められています。次はその97条1項の一部です(原文・一部。前後は省いています)。

    債務者及びその者と生計を一にする同居の親族(婚姻又は縁組の届出をしていないが債務者と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にある者を含む。以下「債務者等」という。)

    条文の定義は、債務者本人に加えて「生計を一にする同居の親族」を含み、さらに婚姻・縁組の届出をしていなくても事実上夫婦または養親子と同様の関係にある者を含む、という書き方です。一方で9号は「債務者」、10号は「債務者又はその親族」と書かれており、号ごとに主語が違います。

    民事執行法97条1項 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    5. 裁判所の説明|動産執行はどう進むか

    裁判所は、手続案内のページ「動産執行」(2026年9月12日確認・ページ名は「動産執行 | 裁判所」)で、この手続の概要を次のように説明しています。

    判決などの債務名義に基づいて債務者の占有する動産を差し押さえ、当該動産を換価(売却)して得られた現金(売得金等)により債権の満足を得る手続です。

    同じページの「手続の流れ」の「3 差押え」には、差押禁止に触れた記述があります(原文)。

    動産執行は、執行官の目的物に対する差押えにより開始します。差押えは、執行官が差し押さえるべき動産の占有を自己に移すことによって行います。動産執行の対象は法令で定められており、例えば、債務者が個人の場合には、一定額以下の金銭や生活必需品等は動産執行の対象とはなりません。
    また、差押動産の評価は、原則として、執行官が差押えの際に行います。

    裁判所の書き方は「一定額以下の金銭や生活必需品等」という例示であり、品目を列挙したものではありません。ページに書かれているその他の事項は次のとおりです。

    項目裁判所ページの記載
    申立先動産の所在地を管轄する地方裁判所に所属する執行官
    申立てに必要な費用予納金(各裁判所によって異なります。)/「収入印紙、切手は不要です」(郵送による申立ての場合は予納通知等の送付のため切手が必要)
    評価差押動産の評価は、原則として、執行官が差押えの際に行う
    換価執行官が競り売り等の方法により換価(売却)。競り売りの期日は、原則として、差押えの日から1週間以上1月以内の日
    裁判所「動産執行」ページの記載(2026年9月12日確認)。予納金の具体的な金額は、同ページに記載がありません。

    裁判所「動産執行」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_13/index.html(2026年9月12日確認)

    6. 131条のほかにも、条文上の限度が置かれています

    差押えの範囲を画す条文は131条だけではありません。同じ款に次の規定があります(いずれも原文の要旨ではなく、条文の文言です)。

    条見出し条文の文言
    128条1項超過差押えの禁止等動産の差押えは、差押債権者の債権及び執行費用の弁済に必要な限度を超えてはならない。
    129条1項剰余を生ずる見込みのない場合の差押えの禁止等差し押さえるべき動産の売得金の額が手続費用の額を超える見込みがないときは、執行官は、差押えをしてはならない。
    130条売却の見込みのない差押物の差押えの取消し差押物について相当な方法による売却の実施をしてもなお売却の見込みがないときは、執行官は、その差押物の差押えを取り消すことができる。
    民事執行法128条〜130条。131条の禁止リストとは別に置かれている規定です。

    民事執行法128条・129条・130条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    7. 131条のリストは固定ではありません|132条(範囲の変更)

    131条の次に置かれた132条の見出しは「差押禁止動産の範囲の変更」です。1項の原文は次のとおりです。

    執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押えの全部若しくは一部の取消しを命じ、又は前条各号に掲げる動産の差押えを許すことができる。

    条文は両方向に書かれています。すでにされた差押えの取消しを命じることができると同時に、「前条各号に掲げる動産」=131条のリストに載っている動産についても、差押えを許すことができると定めています。2項は事情の変更があったときの再度の変更について、3項は取消しの命令を求める申立てがあったときに執行裁判所が強制執行の停止を命じることができる旨を定めています。

    不服申立ては項によって書き方が異なり、4項は却下決定・差押えを許す決定に対する執行抗告ができる旨を、5項は「第三項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。」と定めています。申立ての手順・書式や見通しは、今回確認した一次情報に記載がないため扱いません。

    なお192条(動産執行の規定の準用)は、128条・131条・132条の規定は「一般の先取特権の実行としての動産競売」について準用すると書いています。同条は、それ以外の動産競売についての準用からは131条・132条等を除いています。

    民事執行法132条・192条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    8. 給料の差押えは、別の条文です

    131条が扱うのは動産です。給料や賃金は債権であり、差押禁止の規定は152条(差押禁止債権)に置かれています。152条1項は、そこに掲げる債権について「その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない」と定めており、その政令の額は施行令2条にあります(131条3号を受ける1条とは別の条です)。金額の内訳は給料の差押えはいくらまでかの記事で条文とともに確認できます。また、差押禁止債権の範囲の変更は153条にあり、動産の132条と並びの構造になっています。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)152条・153条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004/民事執行法施行令(昭和55年政令第230号)2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    9. 破産手続でも131条3号が参照されています

    131条は、強制執行の場面だけの条文ではありません。破産法(平成16年法律第75号・lawId=416AC0000000075)34条3項は、破産財団に属しない財産として次を掲げています(原文)。

    一 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
    二 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項(同法第百九十二条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。

    1号は「131条3号に規定する額に二分の三を乗じた額」という書き方で、施行令1条の66万円がその計算の基礎になっています。2号は「差し押さえることができない財産」を掲げつつ、132条1項により差押えが許されたものを除いています。計算後の金額は自由財産の記事で扱っています。

    破産法(平成16年法律第75号)34条3項 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    10. この記事で扱わないこと

    個別の家財・家電・現金が131条のどの号に当たるか、132条の申立てをすべきか、認められる見込みがあるかは、いずれも個別の判断であり当サイトでは扱いません。執行官の実務上の取扱いも一次情報で確認できなかったため記載していません。手続そのものの公的な定義は債務整理の4つの方法・任意整理・個人再生・自己破産で、差押えの前段にあたる書面は支払督促が届いたらで確認できます。相談先は公式検索で実在を確認する手順と実在確認ナビ、費用は法テラスの費用立替制度・費用の目安、窓口は借金の相談窓口、返済額の計算は返済計算の道具をご覧ください。

    民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

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    よくある質問

    差押禁止動産は何条に書かれていますか?

    民事執行法131条です。条文の見出しは「差押禁止動産」で、柱書は「次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。」、続けて1号から14号までが列挙されています。条文にただし書は置かれていません。

    131条3号の「政令で定める額」はいくらですか?

    民事執行法施行令1条が「六十六万円とする」と定めています(同条は、法192条において準用する場合を含む旨も書いています)。3号の対象として条文が書いているのは「金銭」です。

    条文に載っている物なら、差し押さえられることはないのですか?

    132条1項は、執行裁判所が申立てにより「前条各号に掲げる動産の差押えを許すことができる」と定めています。逆に、同項は差押えの全部または一部の取消しを命じることができるとも定めています。個別の事案でどちらの判断がされるかについて、当サイトでは述べません。

    「債務者等」には家族も含まれますか?

    民事執行法97条1項が「債務者及びその者と生計を一にする同居の親族(婚姻又は縁組の届出をしていないが債務者と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にある者を含む。以下「債務者等」という。)」という形で「債務者等」の語を定めています(97条の見出しは「建物使用の許可」で、この語は同項の文中で定められています)。ただし131条の各号は主語が書き分けられており、9号は「債務者」、10号は「債務者又はその親族」と書かれています。

    給料の差押えにも131条が使われるのですか?

    131条は動産についての規定です。給料・賃金などの債権については152条(差押禁止債権)が別に置かれており、政令の額も施行令2条という別の条にあります。詳細は給料の差押えの記事で扱っています。


    民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004/民事執行法施行令(昭和55年政令第230号) https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230/破産法(平成16年法律第75号) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075/裁判所「動産執行」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_13/index.html(いずれも2026年9月12日確認)

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    最終更新:2026年9月12日/このページは公表されている一次情報(e-Gov法令検索・裁判所)のみを根拠に作成しています。条文は民事執行法・民事執行法施行令・破産法の本則から抽出しており、附則・改正規定は使用していません。個別の動産が131条各号に当たるかどうかの当てはめ、132条の申立ての手順・書式、執行官の実務上の取扱いは一次情報で確認できなかったため記載していません。確認できなかった項目は推測で補っていません。

    本記事は法律相談ではありません。個別の状況は弁護士・司法書士にご相談ください。

  • 亡くなった家族に借金があったとき|相続放棄の申述と「3か月」の条文を裁判所の公表情報と民法で確かめる

    亡くなった家族に借金があったとき|相続放棄の申述と「3か月」の条文を裁判所の公表情報と民法で確かめる

    PR:本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。掲載内容は公表されている一次情報をもとに当サイトが確認したものです。

    家族が亡くなった後に、見覚えのない請求書や督促の連絡が届いて、はじめて借金の存在を知ることがあります。この記事は、そこで出てくる相続放棄という手続が、公的な情報にどう書かれているのかを確認した記録です。根拠は裁判所の手続案内「相続の放棄の申述」・裁判手続 家事事件Q&Aと、e-Gov法令検索の民法の条文だけです。先に、一次情報にはっきり書かれている点を挙げます。①相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すること(民法896条)、②相続の放棄をしようとする者は家庭裁判所に申述しなければならないこと(同938条)、③放棄をした者はその相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされること(同939条)、④民法915条1項が「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」という期間を定めていること。

    一方で、この記事は、ある人の「3か月」がいつから数え始めるのか、間に合うのか間に合わないのかという個別の判断はしません。民法915条1項の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」と書かれており、それが具体的にいつかは事実関係の評価です。それは弁護士・司法書士の仕事であり、当サイトは条文と裁判所の説明に書かれていること以上を述べません。

    1. 裁判所が示す三つの選択肢|単純承認・相続放棄・限定承認

    裁判所の手続案内「相続の放棄の申述」は、冒頭の「1. 概要」で、相続が開始した場合に相続人が選べるものとして次の三つを挙げています(2026年9月12日確認・箇条書き3項目の原文)。

    相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認
    相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄
    被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認

    同じ「1. 概要」は、この三つのうち後の二つについて次のように続けています(原文)。

    相続人が,2の相続放棄又は3の限定承認をするには,家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。

    条文の側では、民法896条が相続の一般的効力を定めています。同条の見出しは「(相続の一般的効力)」で、本文は次のとおりです(原文)。

    相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

    そして民法920条(見出し「(単純承認の効力)」)は「相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。」と定めています。裁判所の説明にある「借金等の義務をすべて受け継ぐ」という表現は、この条文の「一切の権利義務」「無限に」という文言に対応しています。

    裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html(2026年9月12日確認)/民法(明治29年法律第89号・lawId=129AC0000000089)896条・920条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    2. 「3か月」はどの条文に書かれているか|民法915条

    期間の定めは民法915条にあります。同条の見出しは「(相続の承認又は放棄をすべき期間)」です。1項の全文は次のとおりです(原文・ただし書を含みます)。

    相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

    2項は調査について定めています(原文)。

    相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

    裁判所の手続案内も「3. 申述期間」で同じ期間を示しています(原文)。

    申述は,民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています。

    なお、死亡から時間が経っている場合について、裁判所の家事事件Q&Aに次の記載があります(「夫は数年前に死亡しているのですが,相続放棄の申述をすることはできるのですか。」への答えの全文・原文)。

    相続放棄の申述は,相続人が相続開始の原因たる事実(被相続人が亡くなったこと)及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知ったときから3か月以内に行わなければなりません。ただし,相続財産が全くないと信じ,かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは,相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば,相続放棄の申述が受理されることもあります。

    この記載は「受理されることもあります」という書き方です。当サイトは、個別の事情がこれに当たるかどうかを判断しません。また、民法916条は相続人が承認・放棄をしないで死亡した場合、民法917条は相続人が未成年者または成年被後見人である場合について、それぞれ915条1項の期間の起算点を別に定めています。

    民法(明治29年法律第89号)915条・916条・917条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年9月12日確認・本則から抽出)/裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html(2026年9月12日確認)/裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kazi/index.html(2026年9月12日確認)

    3. 放棄の方式と効力|民法938条・939条

    相続放棄の方式は民法938条(見出し「(相続の放棄の方式)」)に一文で定められています(原文)。

    相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

    効力は民法939条(見出し「(相続の放棄の効力)」)です(原文)。

    相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

    条文が申述先として書いているのは家庭裁判所です。債権者に「相続しません」と伝えることについて、938条は何も定めていません。この二つの条文の関係を、裁判所の家事事件Q&Aは「父の死亡後,父に多額の借金があることが分かりました。債権者から請求を受けないようにするために,よい方法はないでしょうか。」という問いへの答えとして、次のように説明しています(答えの全文・原文)。

    自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内であれば,相続放棄の申述(申立て)をすることができます。相続放棄の申述が受理されると,申述人は最初から相続人ではなかったことになりますので,被相続人の債務を相続により負担することはなくなります。

    なお、届いた請求が支払督促など裁判所を通じた書面である場合や、請求元が債権回収会社(サービサー)である場合、さらに古い債権について消滅時効の援用が問題になる場合は、それぞれ別の手続・別の制度の話です。当サイトは、どの制度を使うべきかという選択については述べません。

    民法(明治29年法律第89号)938条・939条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年9月12日確認・本則から抽出)/裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kazi/index.html(2026年9月12日確認)

    4. 申述人・申述先・費用・必要書類|裁判所の手続案内

    裁判所「相続の放棄の申述」が項目ごとに示している内容を、記載のまま表にします。

    項目裁判所のページの記載
    申述人相続人(相続人が未成年者または成年被後見人である場合には,その法定代理人が代理して申述します。)
    特別代理人未成年者と法定代理人が共同相続人であって未成年者のみが申述するとき(法定代理人が先に申述している場合を除く。)又は複数の未成年者の法定代理人が一部の未成年者を代理して申述するときには,当該未成年者について特別代理人の選任が必要です
    申述期間自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内
    申述先被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
    費用収入印紙800円分(申述人1人につき)/連絡用の郵便切手(「郵便料は裁判所ごとに異なります」と書かれています)
    必要書類【共通】1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票/2. 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
    申述人が配偶者の場合3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
    申述人が子・その代襲者(第一順位相続人)の場合3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本/4. 代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合は被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本
    申述人が父母・祖父母等(第二順位相続人)/兄弟姉妹・その代襲者(第三順位相続人)の場合3. 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本 ほか(いずれも「先順位相続人等から提出済みのものは添付不要」と書かれています)
    裁判所「相続の放棄の申述」の2・3・4・5・6項の記載を項目に分けたもの(2026年9月12日確認)。書類の一覧は要約しており、全文はリンク先をご覧ください。

    ページには、申述書の書式と記載例(申述人が成人の場合・未成年の場合)が掲載されている旨の記載もあります。また、同じ被相続人について期間伸長事件または相続放棄申述受理事件が先行している場合、その事件で提出済みの書類は不要と書かれています。郵便料(連絡用の郵便切手)の金額は裁判所ごとに異なるとされており、当サイトでは具体額を記載しません。

    裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html(2026年9月12日確認)

    5. 期間内に放棄も限定承認もしなかったとき|民法921条

    民法921条の見出しは「(法定単純承認)」です。1項の全文(柱書と1号から3号)は次のとおりです(原文)。

    次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
    一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
    二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
    三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

    条文が並べているのは次の三つです。以下は条文の文言の整理であり、当サイトによる解釈ではありません。

    • 1号=相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為と、民法602条に定める期間を超えない賃貸は除かれると書かれています)。
    • 2号=915条1項の期間内に限定承認も相続放棄もしなかったとき。
    • 3号=限定承認または放棄をした後でも、相続財産を隠匿し、ひそかに消費し、または悪意で財産目録に記載しなかったとき(放棄によって相続人となった者が承認した後は除くと書かれています)。

    そして民法919条1項は「相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。」と定めています(2項以下は、総則・親族編の規定による取消しを妨げないこと、その取消権の期間、取消しの申述について定めています)。どの行為が921条1項1号の「処分」に当たるかという判断は、当サイトでは行いません。

    民法(明治29年法律第89号)919条・921条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    6. 3か月では決められないとき|期間の伸長と限定承認

    民法915条1項ただし書は、期間を家庭裁判所において伸長できると定めています。これに対応する手続として、裁判所は「相続の承認又は放棄の期間の伸長」のページを置いています(2026年9月12日確認・「1. 概要」の原文)。

    相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に,単純承認,限定承認又は相続放棄をしなければなりません。もっとも,この熟慮期間内に相続人が相続財産の状況を調査しても,なお,単純承認,限定承認又は相続放棄のいずれをするかを決定できない場合には,家庭裁判所は,申立てにより,この3か月の熟慮期間を伸長することができます。

    同ページの記載は次のとおりです。申立人は「利害関係人(相続人も含む。)」「検察官」、申立先は「被相続人の最後の住所地の家庭裁判所」、費用は「収入印紙800円分(相続人1人につき)」と「連絡用の郵便切手」。そして「6. その他」に「申立ては,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にする必要があります。」と書かれています。

    もう一つの選択肢である限定承認について、民法924条(見出し「(限定承認の方式)」)は「相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。」と定め、民法923条(見出し「(共同相続人の限定承認)」)は「相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。」と定めています。裁判所「相続の限定承認の申述」も、申述人を「相続人全員が共同して行う必要があります。」、費用を「収入印紙800円分」「連絡用の郵便切手」と記載しています。家事事件Q&Aの記載は次のとおりです(答えの全文・原文)。

    限定承認の申述は,共同相続人全員で行わなければなりませんので,一部の人だけで行うことはできません。
    なお,相続放棄をした人は,相続人ではなかったものとみなされるので,それ以外の共同相続人全員で申述することになります。

    裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html(2026年9月12日確認)/裁判所「相続の限定承認の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_14/index.html(2026年9月12日確認)/裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kazi/index.html(2026年9月12日確認)/民法(明治29年法律第89号)915条・923条・924条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    7. 申述が受理された後に書かれていること

    裁判所の家事事件Q&Aは、「相続放棄の申述が受理されたときは,どのような手続をすればよいのですか。」という問いに次のように答えています(答えの全文・原文)。

    亡くなった人の財産を管理している場合は,相続人に引き継ぐことになります。また,債権者から債務の請求をされている場合には,債権者に対して,家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されたことを連絡するのがよいかと思われます。

    受理の証明書については、同じQ&Aに次の記載があります(答えの全文・原文。ダウンロード先を案内する括弧書きのみ「(中略)」としています)。

    申請書に(中略)必要事項を記入し,150円分の収入印紙,郵送の場合には返信用の郵便切手を添えて,受理をした家庭裁判所に申請してください。直接,受理した家庭裁判所まで申請にいらっしゃるときは,印鑑及び受理通知書や運転免許証などの本人を確認することができるものを持参してください。

    条文の側には、放棄をした人の財産の取扱いについての定めがあります。民法940条1項(見出し「(相続の放棄をした者による管理)」)の全文です(原文)。

    相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

    また、939条により放棄をした人は初めから相続人とならなかったものとみなされるため、誰が相続人となるかは民法の順位の規定に戻ります。887条1項は「被相続人の子は、相続人となる。」、890条は「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。」と定めています。889条1項の全文は次のとおりです(原文)。

    次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
    一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
    二 被相続人の兄弟姉妹

    具体的な事案で誰が相続人となるかの判定は、当サイトでは行いません。条文に書かれているのは、上の順位の相続人となるべき者がない場合に次の順位の者が相続人となる、という順序です。

    裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kazi/index.html(2026年9月12日確認)/民法(明治29年法律第89号)887条・889条・890条・939条・940条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    8. この記事で扱わないこと

    期間の起算点が具体的にいつかという評価、申述が受理されるかどうかの見通し、放棄と限定承認のどちらを選ぶか、放棄をした場合に次の順位の親族にどう連絡するかは、いずれも個別の判断であり、当サイトでは扱いません。亡くなった方の借金ではなく自分自身の借金についての手続は債務整理の4つの方法で、手続ごとの公的な定義は任意整理・自己破産・個人再生・特定調停で確認できます。相談先を探す前には弁護士・司法書士が実在するかを公式検索で確認する手順と実在確認ナビ、司法書士の業務範囲(140万円)、なりすましへの注意をあわせてご覧ください。費用については法テラスの無料法律相談の条件と費用立替制度、公的な窓口は借金の相談窓口にまとめています。

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    よくある質問

    相続放棄は債権者に連絡すればよいのですか?

    民法938条は「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」と定めています。条文が申述先として書いているのは家庭裁判所です。裁判所の家事事件Q&Aは、申述が受理された後について「債権者から債務の請求をされている場合には,債権者に対して,家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されたことを連絡するのがよいかと思われます。」と記載しています(2026年9月12日確認)。

    相続放棄の申述にかかる費用はいくらですか?

    裁判所「相続の放棄の申述」は、申述に必要な費用として「収入印紙800円分(申述人1人につき)」と「連絡用の郵便切手」を挙げています。郵便料は裁判所ごとに異なると書かれているため、当サイトでは具体額を記載していません。受理の証明書の申請については、家事事件Q&Aに「150円分の収入印紙」と郵送の場合の返信用の郵便切手の記載があります(2026年9月12日確認)。

    3か月を過ぎたら申述はできないのですか?

    民法915条1項は「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」と定め、ただし書で利害関係人または検察官の請求により家庭裁判所において伸長できるとしています。また裁判所の家事事件Q&Aは、相続財産が全くないと信じ、かつそう信じたことに相当な理由があるときなどについて「相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば,相続放棄の申述が受理されることもあります。」と記載しています。個別の事案がこれに当たるかどうかの判断は当サイトでは行いません。弁護士・司法書士にご相談ください。

    相続放棄をすると、ほかの親族に影響しますか?

    民法939条は、相続の放棄をした者はその相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなすと定めています。誰が相続人となるかは民法887条・889条・890条の順位の規定によります。889条1項は、887条により相続人となるべき者がない場合に、直系尊属、次いで兄弟姉妹が順位に従って相続人となると定めています。具体的な事案で誰が相続人となるかの判定は当サイトでは行いません。


    裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html/裁判所「相続の限定承認の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_14/index.html/裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html/裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kazi/index.html/民法(明治29年法律第89号) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(いずれも2026年9月12日確認)

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    最終更新:2026年9月12日/このページは公表されている一次情報(裁判所の手続案内・裁判手続 家事事件Q&A、e-Gov法令検索の民法)のみを根拠に作成しています。条文は民法の本則から抽出しており、附則・改正規定は使用していません。期間の起算点の具体的な判断、申述が受理されるかどうかの見通し、郵便料(連絡用の郵便切手)の金額、家庭裁判所ごとの運用は一次情報で確認できなかったため記載していません。

    本記事は法律相談ではありません。個別の状況は弁護士・司法書士にご相談ください。

  • 預金が差し押さえられる仕組み|債権執行の手続と第三債務者への陳述催告を民事執行法の条文と裁判所の公表情報で確かめる

    預金が差し押さえられる仕組み|債権執行の手続と第三債務者への陳述催告を民事執行法の条文と裁判所の公表情報で確かめる

    PR:本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。掲載内容は公表されている一次情報をもとに当サイトが確認したものです。

    預金の口座が差し押さえられるとき、法律の側では「債権執行」という手続が動いています。先に結論として、確認できたのは次の5点です。①手続は執行裁判所の差押命令で始まる(民事執行法143条)②差押命令は債務者に取立て等を、第三債務者に債務者への弁済を禁止する(145条1項)③効力は差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる(145条5項)④差押債権者の申立てがあれば、第三債務者は2週間以内に債権の存否等を陳述するよう催告される(147条1項)⑤差押禁止債権を定める152条1項各号・2項の列挙に、預貯金債権は現れない。根拠はe-Gov法令検索の本則と裁判所の公表情報だけです。給料の「4分の3・33万円」は152条と施行令2条の話で、給料の差押えはいくらまでかで扱っています。本記事は預貯金債権の側であり、個別の事案でいくら残るかは述べません。

    1. 預金の差押えは「債権執行」という手続|民事執行法143条・144条

    裁判所の手続案内「債権執行(債務名義に基づく差押え)」は、この手続の概要をこう説明しています(原文・2026年9月12日確認)。

    判決や和解調書どおりにお金が支払われない場合などに、債務者の給与や銀行預金等を差し押さえ、債権者が債務者の勤務先や銀行等から支払を受けること等により、債権を回収する手続です。

    法律上の入口は民事執行法143条です。e-Gov法令検索で民事執行法(昭和54年法律第4号・lawId=354AC0000000004)の本則を確認しました(2026年9月12日)。見出しは「債権執行の開始」です(原文)。

    金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権(動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。)に対する強制執行(第百六十七条の二第二項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下この節において「債権執行」という。)は、執行裁判所の差押命令により開始する。

    どの裁判所が扱うかは144条にあります(原文)。

    1 債権執行については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、この普通裁判籍がないときは差し押さえるべき債権の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
    2 差し押さえるべき債権は、その債権の債務者(以下「第三債務者」という。)の普通裁判籍の所在地にあるものとする。ただし、船舶又は動産の引渡しを目的とする債権及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。

    「第三債務者」という語は、この144条2項のかっこ書きで定義されています。裁判所の手続案内も、申立先を「原則として、債務者の住所地を管轄する地方裁判所です。」、費用を「手数料(原則として4000円)及び郵便料」(郵便料は裁判所ごとに異なると明記)と書き、申立て前に債務名義の取得が要ると記載しています。143条が除く少額訴訟債権執行は、167条の2第2項が「裁判所書記官の差押処分により開始する。」と定めます。債務名義の入口の1つは支払督促が届いたらで扱っています。

    民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)/裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html(2026年9月12日確認)

    2. 差押命令は何を禁止し、いつ効力が生じるか|民事執行法145条

    145条の見出しは「差押命令」です。1項から3項と5項は次のとおりです(原文)。

    1 執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない。
    2 差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。
    3 差押命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。
    5 差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。

    145条の項条文が書いていること
    1項債務者に債権の取立てその他の処分を禁止し、第三債務者に債務者への弁済を禁止する
    2項差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する
    3項債務者及び第三債務者に送達しなければならない
    4項裁判所書記官は、送達に際し、債務者に対し、153条1項・2項による差押命令の取消しの申立てができる旨その他最高裁判所規則で定める事項を教示しなければならない
    5項効力は第三債務者に送達された時に生ずる
    6項差押命令の申立てについての裁判に対しては執行抗告をすることができる
    7項・8項債務者に送達できない場合、執行裁判所は差押債権者に送達場所の申出(場合により公示送達の申立て)を命ずることができ、申出がないときは差押命令を取り消すことができる
    民事執行法145条の各項。1項から3項・5項は原文、4項・6項から8項は条文の要旨です。

    裁判所の手続案内も「3 差押え」で「差押命令が第三債務者に送達されると、差押えの効力が生じます。」と説明しており、効力が生じる時点は条文と同じです。2項が「審尋しないで発する」と書いているため、条文上、差押命令は当事者の言い分を聴く手続を経ずに発せられます。これは条文にそう書かれているという指摘であり、当サイトの評価ではありません。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)145条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)/裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html(2026年9月12日確認)

    3. 差押えの範囲|民事執行法146条・149条

    146条の見出しは「差押えの範囲」、149条は差押えが一部競合した場合の効力の規定です(いずれも原文)。

    第百四十六条 1 執行裁判所は、差し押さえるべき債権の全部について差押命令を発することができる。
    2 差し押さえた債権の価額が差押債権者の債権及び執行費用の額を超えるときは、執行裁判所は、他の債権を差し押さえてはならない。
    第百四十九条 債権の一部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その残余の部分を超えて差押命令が発せられたときは、各差押え又は仮差押えの執行の効力は、その債権の全部に及ぶ。債権の全部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その債権の一部について差押命令が発せられたときのその差押えの効力も、同様とする。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)146条・149条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

    4. 銀行に債権の存否を答えさせる手続|民事執行法147条の陳述の催告

    裁判所の手続案内は、手続の流れの「1 申立て」で次のように書いています(原文・2026年9月12日確認)。

    差押えの対象となる債権が現実に存在するかどうかやその額等を知りたい場合には、陳述催告の申立て(第三債務者に対して、差押債権の有無などにつき回答を求める申立て)をすることができます。陳述催告の申立ては、債権差押命令申立てと同時にしてください。

    その根拠が147条です。見出しは「第三債務者の陳述の催告」です(原文)。

    1 差押債権者の申立てがあるときは、裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、第三債務者に対し、差押命令の送達の日から二週間以内に差押えに係る債権の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述すべき旨を催告しなければならない。
    2 第三債務者は、前項の規定による催告に対して、故意又は過失により、陳述をしなかつたとき、又は不実の陳述をしたときは、これによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる。

    条文の部分書かれていること
    きっかけ差押債権者の申立てがあるとき(申立てがなければ催告は行われない書き方になっています)
    誰が催告するか裁判所書記官
    いつ差押命令を送達するに際し
    誰に第三債務者
    期限差押命令の送達の日から二週間以内
    何を差押えに係る債権の存否その他の最高裁判所規則で定める事項
    答えなかった場合故意又は過失により陳述をしなかったとき、または不実の陳述をしたときは、これによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる(2項)
    民事執行法147条1項・2項の文言を項目に分けたもの。表現はいずれも条文の語です。

    147条1項は、陳述すべき事項の細目を「その他の最高裁判所規則で定める事項」として規則に委ねています。本記事は法律(民事執行法)の条文の範囲で書いており、規則の各条の内容は扱っていません(145条4項・207条1項各号が同じ言い方で委ねている事項も同じ)。なお、裁判所の規則集の子ページ「民事事件関係(50音順)」には「民事執行規則(PDF:1.14MB)」が公開されています(2026年9月12日確認)。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)147条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)/裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html(2026年9月12日確認)/裁判所「規則集」内「民事事件関係(50音順)」 https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/kisokusyu/minzi_kisoku/index.html(2026年9月12日確認)

    5. 取り立てられるのはいつか|155条1項の「一週間」と156条の供託

    155条1項と2項は次のとおりです(原文)。

    1 金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。
    2 差し押さえられた金銭債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「一週間」とあるのは、「四週間」とする。

    2項が読み替えの対象として挙げているのは152条1項各号・2項の債権だけで、預貯金債権はその列挙に現れません。これは条文の構成についての指摘です。裁判所の民事事件Q&A(債権執行手続)も、取立てについて次のように書いています(原文)。

    債権者は、債務者に対する差押命令の送達日から1週間(※)を経過すると、第三債務者からその債権を取り立てることができます(ただし、差押債権目録に記載した差押額を超えて支払を受けることはできません。)。
    ※給料等の差押えの場合で、養育費等の請求を含まない場合は4週間

    同Q&Aは、書面の出し分けの具体例として「預貯金債権の差押えにおいて、差押債権額が100万円、預貯金として存在した額が80万円で、80万円全額を取り立てた場合」を挙げ、第三債務者が支払わない場合については「第三債務者に対し、被差押債権の給付を求める訴え(取立訴訟といいます。)を提起して、債権の回収をはかることになります。」と記載しています(いずれも原文)。155条3項は、支払を受けたときは「その債権及び執行費用は、支払を受けた額の限度で、弁済されたものとみなす。」と定めています。

    第三債務者の側には供託の規定があります。156条1項は、差押えに係る金銭債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができると定め、2項は、差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令等の送達を受けたときなどについて供託しなければならないと定めています。裁判所の手続案内も「第三債務者が供託をした場合は、裁判所が配当等を行うので、直接取り立てることはできません。」と書いています。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)155条・156条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)/裁判所「民事事件Q&A(債権執行手続)」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(2026年9月12日確認)/裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html(2026年9月12日確認)

    6. 差押禁止債権を定める152条の列挙|預貯金債権は挙げられていない

    民事執行法152条の見出しは「差押禁止債権」です。1項各号・2項が挙げているのは次のものです(条文の語のまま)。

    条文の位置挙げられている債権
    152条1項1号債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
    152条1項2号給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
    152条2項退職手当及びその性質を有する給与に係る債権
    民事執行法152条1項各号・2項が列挙している債権。割合(四分の三)と政令で定める額は給料の差押えはいくらまでかで扱っています。

    今回取得した民事執行法の全文(e-Gov法令API)を機械で全文検索したところ、本則で「預貯金」という語が現れるのは207条(債務者の預貯金債権等に係る情報の取得)だけで、152条には現れませんでした(附則に読み替えが1か所ありますが、当サイトは附則を使用しません)。ここまでが、条文の構成として確認できた事実です。当サイトは、この事実から預貯金債権についての結論を導きません。

    なお153条1項は、差押禁止債権の範囲の変更を定めています(原文)。

    執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。

    3項は申立てがあったときの第三債務者への給付の禁止、4項は取消しの申立てを却下する決定に対する執行抗告を定めています。裁判所の民事事件Q&Aは、この差押範囲変更(減縮)の対象を「差押えによって債務者の生活に著しい支障が生じる場合(例えば、生活保護費や年金の振込口座が差し押さえられ、生活が成り立たなくなる場合)など」と書き、「また、差押範囲変更が認められても、債務者の債務が減るわけではありません。」とも記載しています(いずれも原文)。申立先・申立時期・裏付け資料の一覧は同じQ&Aを扱った記事にまとめています。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)152条・153条・207条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)/裁判所「民事事件Q&A(債権執行手続)」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(2026年9月12日確認)

    7. どの金融機関かを調べる手続|民事執行法207条と民法466条の5

    差押えの前提として、債権者が口座の所在を調べる手続が207条に置かれています。見出しは「債務者の預貯金債権等に係る情報の取得」で、1項は、197条1項各号のいずれかに該当するときに、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、執行裁判所が情報の提供を命じなければならないと定めています。ただし、同項ただし書は「当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。」と定めており、命令が無条件になされる書き方ではありません。1号が挙げる「銀行等」には、条文上、銀行・信用金庫・労働金庫・信用協同組合・農業協同組合・漁業協同組合・農林中央金庫・株式会社商工組合中央金庫などが列挙されています。対象は、その銀行等に対する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権)への強制執行等の申立てに必要な事項として最高裁判所規則で定めるものです。207条1項が要件として参照する197条1項は次のとおりです(原文)。

    1 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
    一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
    二 知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。

    207条が参照する民法(明治29年法律第89号・lawId=129AC0000000089)466条の5は、見出しが「預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力」で、預貯金債権の定義を置いています(原文・2026年9月12日確認)。

    1 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第四百六十六条第二項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。
    2 前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。

    裁判所の民事事件Q&A(情報取得手続)も、申立てには197条1項1号または2号の主張・立証が要ると書き、第三者について「㋒預貯金情報 銀行や信用金庫などの金融機関が第三者となります。2つ以上の金融機関を第三者として申し立てることもできます。」と記載しています(原文)。同Q&Aは、財産開示手続を先に行っている必要を㋐不動産情報・㋑勤務先情報のみに掛けており、㋒預貯金情報には掛けていません。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)197条・207条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)/民法(明治29年法律第89号)466条の5 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年9月12日確認・本則から抽出)/裁判所「民事事件Q&A(情報取得手続)」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(2026年9月12日確認)

    8. この記事で扱わないこと

    どの手続を選ぶか、範囲変更の申立てと債務整理のどちらを先に検討するかは個別の判断であり、当サイトは扱いません。民事執行規則の各条の内容は、本記事の範囲外として扱いません。個別の金融機関の取扱い、差押禁止債権が口座に振り込まれた後の取扱い、裁判例は、本記事の範囲外として扱いません。手続ごとの公的な定義は債務整理の4つの方法と任意整理・自己破産・個人再生・特定調停、給料の差押えは給料の差押えはいくらまでか、手元に残る財産は自由財産、依頼の通知と取立ては受任通知で取立てが止まる仕組み、請求してきた相手の確認は債権回収会社(サービサー)は本物か、時効は消滅時効の援用で確認できます。相談先は借金の公的な相談窓口一覧、依頼先の実在確認は日弁連・日司連の検索で確認する手順と実在確認ナビ、費用は法テラスの無料法律相談の条件と費用立替制度、計算は返済計算の道具にあります。

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    よくある質問

    預金の差押えは、いつ効力が生じるのですか。

    民事執行法145条5項は「差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。」と定めています。裁判所の手続案内も「差押命令が第三債務者に送達されると、差押えの効力が生じます。」と説明しています。なお145条2項は「差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。」と定めています。

    銀行は、債権があるかどうかを答えるのですか。

    民事執行法147条1項は、差押債権者の申立てがあるときは、裁判所書記官が差押命令を送達するに際し、第三債務者に対し、送達の日から二週間以内に差押えに係る債権の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述すべき旨を催告しなければならないと定めています。2項は、故意又は過失により陳述をしなかったとき、または不実の陳述をしたときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずると定めています。「その他の最高裁判所規則で定める事項」の細目は、本記事では扱いません。

    差し押さえられた預金は、いつ債権者に渡るのですか。

    民事執行法155条1項は、金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときはその債権を取り立てることができると定めています。155条2項が「一週間」を「四週間」と読み替える対象は152条1項各号に掲げる債権または同条2項に規定する債権で、預貯金債権はその列挙に現れません。第三債務者が156条により供託した場合について、裁判所は「裁判所が配当等を行うので、直接取り立てることはできません。」と説明しています。

    預金は差押禁止債権ではないのですか。

    民事執行法152条1項1号は「債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権」、2号は「給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権」、2項は「退職手当及びその性質を有する給与に係る債権」を挙げています。今回確認した限り、本則で「預貯金」の語が現れるのは207条だけで、152条には現れませんでした。当サイトは、この条文の構成から先の結論は述べません。


    民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004/民法(明治29年法律第89号) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089/裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html/裁判所「民事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(いずれも2026年9月12日確認)

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    最終更新:2026年9月12日/このページは公表されている一次情報(e-Gov法令検索・裁判所)のみを根拠に作成しています。条文は民事執行法(昭和54年法律第4号)および民法(明治29年法律第89号)の本則から抽出しており、附則・改正規定は使用していません。147条1項・145条4項・207条1項各号が「最高裁判所規則で定める」としている事項について、本記事は規則の各条の内容を扱っていません(裁判所の規則集の子ページには「民事執行規則(PDF:1.14MB)」が公開されています)。個別の金融機関の取扱い、差押禁止債権が口座に振り込まれた後の取扱い、裁判例は記載していません。裁判所の民事事件Q&Aは、各項目の冒頭に「【※運用に関する記載は、一例を記載したものであり、記載された内容と異なる運用をしている庁もあります。】」と注記しています。

    本記事は法律相談ではありません。個別の状況は弁護士・司法書士にご相談ください。

  • 給料の差押えはいくらまでか|民事執行法152条の「4分の3」と施行令2条の「33万円」、範囲変更の申立て(153条)を条文で確かめる

    給料の差押えはいくらまでか|民事執行法152条の「4分の3」と施行令2条の「33万円」、範囲変更の申立て(153条)を条文で確かめる

    PR:本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。掲載内容は公表されている一次情報をもとに当サイトが確認したものです。

    給料の差押えについて、法律は「差し押さえてはならない部分」の側から金額を定め、裁判所の手続案内は「差し押さえることができる部分」の側から同じ内容を説明しています。同じ制度を反対側から書いているだけなのですが、片方だけを読むと数字が食い違って見えます。この記事では、民事執行法152条と民事執行法施行令2条の原文、裁判所が公表している説明、そして民事執行法153条の「差押禁止債権の範囲の変更」の申立てを、e-Gov法令検索と裁判所のページの記載だけで確認します。当サイトは独自の計算式を作らず、個別の事案でいくら残るかという計算も行いません。

    1. 条文の原文|民事執行法152条1項は「4分の3」を差押禁止としている

    e-Gov法令検索で民事執行法(昭和54年法律第4号・lawId=354AC0000000004)の本則を確認しました(2026年9月5日)。152条の見出しは「差押禁止債権」です。1項は次のとおりです(原文)。

    次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
    一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
    二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権

    読み取れるのは次の2点です。いずれも条文にそう書かれているという指摘であり、当サイトの解釈ではありません。

    • 原則として「四分の三に相当する部分」を差し押さえてはならない=残る側が4分の3です。
    • ただし、その額が「政令で定める額」を超えるときは、政令で定める額に相当する部分が差押禁止になる=守られる金額には上限があり、その上限額は条文ではなく政令に置かれています。

    また、給料の差押えが1回で終わらない点は151条に書かれています。「給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。」(原文)

    民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月5日確認・本則から抽出)

    2. 上限額は政令にある|民事執行法施行令2条の「三十三万円」

    152条1項が委任している政令は民事執行法施行令(昭和55年政令第230号・lawId=355CO0000000230)です。その2条の見出しは「差押えが禁止される継続的給付に係る債権等の額」で、支払期の区分ごとに額を定めています(原文の数字をそのまま表にしたもの・2026年9月5日確認)。

    支払期の区分(施行令2条1項)政令で定める額
    一 支払期が毎月と定められている場合三十三万円
    二 支払期が毎半月と定められている場合十六万五千円
    三 支払期が毎旬と定められている場合十一万円
    四 支払期が月の整数倍の期間ごとに定められている場合三十三万円に当該倍数を乗じて得た金額に相当する額
    五 支払期が毎日と定められている場合一万千円
    六 支払期がその他の期間をもつて定められている場合一万千円に当該期間に係る日数を乗じて得た金額に相当する額
    民事執行法施行令2条1項が定める「政令で定める額」。表現・数字はいずれも条文の語です。

    この1項は、対象を「法第百五十二条第一項各号に掲げる債権(次項の債権を除く。)」と書いており、賞与は1項から除かれています(原文)。賞与の額は同条2項が別に定めています。「賞与及びその性質を有する給与に係る債権に係る法第百五十二条第一項の政令で定める額は、三十三万円とする。」(原文)

    よく耳にする「33万円」は、この施行令2条1項1号(毎月払いの場合)と2項(賞与)の額です。なお、同じ施行令の1条も「六十六万円」という額を定めていますが、条文上その額は民事執行法131条3号(同法192条において準用する場合を含む)について定められたものであり、152条=給料の話ではありません。自己破産の場面で出てくる金額との関係は自己破産で手元に残せる財産(自由財産)で扱っています。

    民事執行法施行令(昭和55年政令第230号) https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230(2026年9月5日確認・本則から抽出)

    3. 裁判所の説明は「差し押さえることができる」側から書かれている

    裁判所の手続案内「債権執行(債務名義に基づく差押え)」は、手続の流れの「3 差押え」で次のように説明しています(原文・2026年9月5日確認)。

    差押命令が第三債務者に送達されると、差押えの効力が生じます。例えば、給料の差押えの場合、原則として相手方の給料の4分の1(月給で44万円を超える場合には、33万円を除いた金額)を差し押さえることができます。ただし、相手方が既に退職している場合などには、差押えはできません。

    民事事件Q&Aの「相手方の給料を差し押さえる場合、全額を差し押さえることはできますか。」も、「給料差押えの場合、相手方の給料の4分の1(月額で44万円を超える場合には、33万円を除いた金額)※を差し押さえることができます。」とほぼ同じ文を置いています(原文)。

    条文(152条1項)は差し押さえてはならない側=4分の3を書き、裁判所の説明は差し押さえることができる側=4分の1を書いています。向きが逆なだけで、どちらか一方が誤っているという話ではありません。当サイトは、この2つをつなぐ独自の計算式や、月給ごとの早見表を作りません。なお裁判所のQ&Aには、各項目の冒頭に共通の但し書きが置かれています(原文)。「【※運用に関する記載は、一例を記載したものであり、記載された内容と異なる運用をしている庁もあります。】」

    裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html(2026年9月5日確認)/裁判所「民事事件Q&A(債権執行手続)」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(2026年9月5日確認)

    4. 賞与・退職年金・退職手当|152条の書き分け

    対象条文の位置条文が書いている割合と上限
    給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権152条1項2号4分の3。ただし「政令で定める額」を超えるときはその額(施行令2条=毎月払い33万円ほか、賞与33万円)
    退職手当及びその性質を有する給与に係る債権152条2項4分の3。2項の条文には、1項にある「政令で定める額」のかっこ書きがありません
    民事執行法152条1項2号・2項の文言を対象ごとに整理したもの。割合・かっこ書きの有無は条文の記載そのものです。「退職年金」は1項2号に、「退職手当」は2項に、それぞれ別に書かれています。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)152条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月5日確認・本則から抽出)

    5. 養育費などを請求する場合は「4分の3」が「2分の1」に読み替えられる

    152条3項は、読み替えの規定です(原文)。

    債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

    ここでいう「前条第一項各号に掲げる義務」は、151条の2第1項が挙げる次の4つです(原文)。

    • 一 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
    • 二 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
    • 三 民法第七百六十六条及び第七百六十六条の三(これらの規定を同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
    • 四 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務

    つまり、これらの義務に係る金銭債権を請求する差押えでは、条文上の割合が「二分の一」になります。裁判所の「債権執行(債務名義に基づく差押え)」も、給料の4分の1という説明のあとに「※ 養育料等を請求する場合については」として「債権執行(養育費等に基づく差押え)」のページへの案内を置いています。養育費等の手続の詳細は本記事では扱いません。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)151条の2・152条3項 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月5日確認・本則から抽出)/裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html(2026年9月5日確認)

    6. 範囲を変えてもらう申立て|民事執行法153条

    152条の割合は固定ではありません。153条の見出しは「差押禁止債権の範囲の変更」で、1項は次のとおりです(原文)。

    執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。

    この一文には2つの方向が書かれています。差押命令の全部または一部を取り消す方向(減縮)と、152条で差し押さえてはならないとされた部分について差押命令を発する方向(拡張)です。2項は、事情の変更があったときに、申立てにより取り消された債権を差し押さえ、または1項の差押命令の全部・一部を取り消すことができると定めています。4項は、1項・2項による取消しの申立てを却下する決定に対して執行抗告をすることができると定めています。

    手続の進め方は、裁判所の民事事件Q&A「差押範囲変更(減縮)の申立てについて教えてください。」に記載があります。同ページは対象を「差押えによって債務者の生活に著しい支障が生じる場合(例えば、生活保護費や年金の振込口座が差し押さえられ、生活が成り立たなくなる場合)など」と書いています(原文・2026年9月5日確認)。

    項目裁判所Q&Aの記載
    申立てをする裁判所債権差押命令を発令した裁判所
    申立時期債権者が、第三債務者から差し押さえた金銭債権の支払を受ける前に申立てをする必要があります
    申立書正本1通、副本(債権者の数分)。事件番号、申立ての趣旨(差押範囲をどのように変更したいのか)及び理由(範囲変更を必要とする事情)を記載
    裏付け資料(同ページが「例示」と明記)陳述書、家計表(申立前2か月分)/源泉徴収票、課税証明書(又は非課税証明書)/給与明細書(申立前2か月分)/預貯金口座の通帳のコピー(過去1年分)/世帯全員及び同居者全員の住民票(申立日から3か月以内に発行されたもの) ほか
    郵便切手申立てをする裁判所にお問い合わせください
    裁判所 民事事件Q&A「差押範囲変更(減縮)の申立て」の記載を項目に分けたもの。同ページには、裁判所から異なる資料を求められる場合があるとも書かれています。

    同Q&Aは、判断の仕方についても「債務者が差押範囲変更の申立てをすると、裁判所は、債務者や債権者から提出された資料をもとに、申立てを認めるかどうかを判断します。」と書き、続けて「また、差押範囲変更が認められても、債務者の債務が減るわけではありません。」と記載しています(いずれも原文)。申立書の書式(差押範囲変更申立書)は同ページからダウンロードできます。個別の事案で申立てが認められるかどうかについて、当サイトは見通しを述べません。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)153条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月5日確認・本則から抽出)/裁判所「民事事件Q&A(債権執行手続)」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(2026年9月5日確認)

    7. 給料の差押えでは取立てまでが「4週間」|155条2項と145条4項

    153条の申立時期が「債権者が支払を受ける前」であることと関係するのが、155条です。1項は「金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。」と定め、2項が次の読み替えを置いています(原文)。

    差し押さえられた金銭債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「一週間」とあるのは、「四週間」とする。

    裁判所の手続案内も、取立てについて「債権差押命令が債務者に送達された日から1週間を経過したときは(ただし、給料の差押えの場合については、養育費などを請求する場合を除いて4週間となります。)、債権者はその債権を自ら取り立てることができます」と説明しています。

    また145条4項は、次のとおりです(原文)。

    裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、債務者に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、第百五十三条第一項又は第二項の規定による当該差押命令の取消しの申立てをすることができる旨その他最高裁判所規則で定める事項を教示しなければならない。

    条文が挙げている「その他最高裁判所規則で定める事項」の中身(民事執行規則の定め)は、今回一次情報で確認していないため記載なしとします。

    民事執行法(昭和54年法律第4号)145条・155条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月5日確認・本則から抽出)/裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html(2026年9月5日確認)

    8. この記事で扱わないこと

    差押えを受けた場合にどの手続を選ぶか、勤務先にどう説明するか、範囲変更の申立てと債務整理のどちらを先に検討するかは、いずれも個別の判断であり、当サイトは扱いません。手続ごとの公的な定義は債務整理の4つの方法と、任意整理・自己破産・個人再生・特定調停の各記事で確認できます。依頼したことの通知と取立ての関係は受任通知で取立てが止まる仕組み、相談先は借金の公的な相談窓口一覧、依頼先の実在確認は日弁連・日司連の検索で確認する手順と実在確認ナビ、費用は法テラスの無料法律相談の条件と費用立替制度、返済額の計算は返済計算の道具をご覧ください。

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    よくある質問

    給料はいくらまで差し押さえられるのですか。

    民事執行法152条1項は「その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が…政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない」と定めています。政令(民事執行法施行令2条1項1号)は、支払期が毎月と定められている場合の額を三十三万円としています。裁判所は同じ内容を「相手方の給料の4分の1(月額で44万円を超える場合には、33万円を除いた金額)を差し押さえることができます」と説明しています。当サイトでは個別の金額計算は行いません。

    賞与や退職金も同じ扱いですか。

    賞与は民事執行法152条1項2号に列挙されており、政令の額は民事執行法施行令2条2項が三十三万円と定めています。退職手当およびその性質を有する給与に係る債権は152条2項に置かれ、「その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない」と書かれています。2項の条文には、1項にある「政令で定める額」のかっこ書きがありません。

    養育費の場合は割合が変わるのですか。

    民事執行法152条3項が、151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権を請求する場合について、152条1項・2項中の「四分の三」を「二分の一」と読み替えると定めています。151条の2第1項各号は、民法752条の夫婦間の協力及び扶助の義務、民法760条の婚姻から生ずる費用の分担の義務、民法766条・766条の3の子の監護に関する義務、民法877条から880条までの扶養の義務です。

    生活が成り立たない場合はどうすればよいですか。

    民事執行法153条1項は、執行裁判所が申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して差押命令の全部または一部を取り消すことができると定めています。裁判所の民事事件Q&Aは、この申立てを「債権差押命令を発令した裁判所」に、「債権者が、第三債務者から差し押さえた金銭債権の支払を受ける前に」する必要があると記載し、陳述書・家計表・給与明細書などの裏付け資料を例示しています。具体的な申立ての可否や進め方は弁護士・司法書士にご相談ください。

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  • 任意整理の弁護士報酬の上限|日弁連の規程が定める解決報酬金・減額報酬金・過払金報酬金

    任意整理の弁護士報酬の上限|日弁連の規程が定める解決報酬金・減額報酬金・過払金報酬金

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    先に結論:弁護士に事件を依頼するときの報酬額に一律の基準はありません。ただし債務整理事件のうち「非事業者等任意整理事件」の報酬金については、日本弁護士連合会(日弁連)が定めた会規「債務整理事件処理の規律を定める規程」(平成二十三年二月九日会規第九十三号)と、その施行規則(平成二十三年二月十七日規則第百四十五号)が上限を置いています。この記事は、その上限がどの事件に・どの報酬に・いくらまでかかるのかを、日弁連の公式ページ、規程と施行規則のPDF原本、日弁連会則、e-Gov法令検索の弁護士法だけで確認した記録です。個別の事務所が提示する金額が高いか安いかは扱わず、順位付けも比較もしません。

    1. 出発点|弁護士報酬に一律の基準はない。ただし債務整理には別の規程がある

    日弁連の公式ページ「債務整理の弁護士報酬のルールについて」は、まず原則をこう書いています(原文・2026年9月5日確認)。

    弁護士に事件を依頼するときの報酬額には一律の基準はありません。それぞれの弁護士が自分の報酬基準を持っています。その基準にしたがって、具体的な報酬額を依頼主との協議により自由に取り決めることができます。

    そのうえで、債務整理事件については別の定めを置いたと説明しています(原文)。

    しかし、債務整理事件とこれに伴う過払金請求事件に関しては、これまで一部の弁護士に不適切な事件処理や報酬の請求を行う例が見られました。そこで、日弁連は、2011年2月の臨時総会で、一定の範囲の債務整理事件における弁護士報酬の上限を定めるなどのルール「債務整理事件処理の規律を定める規程」を定めました。2011年4月1日以降に弁護士が受任した債務整理事件は、このルールにしたがうことになります。

    規程のPDF原本の冒頭には「債務整理事件処理の規律を定める規程(平成二十三年二月九日会規第九十三号)」とあり、その下に平成二七年一二月四日改正/令和三年三月五日/同三年六月一一日/同七年一二月五日の改正が並んでいます。附則は次のとおりです(原文)。

    1 この規程は、平成二十三年四月一日から施行する。
    2 この規程の施行の際現に受任している債務整理事件の処理に関する事項については、なお従前の例による。
    3 この規程は、この規程の施行の日から起算して二十年を超えない範囲内において理事会で定める日に、その効力を失う。

    失効を定める附則第三項は、平成二七年一二月四日改正・令和三年三月五日改正・令和七年一二月五日改正の3つの改正附則が改めています。規程第一条自身も、この規程が「臨時の措置として」置かれたものだと書いています。

    なお、日本弁護士連合会会則第六条第2項は「会規は総会の決議により、規則は理事会の決議により定め、又は変更するものとする。」と定めています。本規程が「会規第九十三号」で、日弁連ページが「2011年2月の臨時総会で…定めました」と書いているのは、この仕組みと一致します。施行規則のほうは理事会の決議による「規則第百四十五号」です。

    日本弁護士連合会「債務整理の弁護士報酬のルールについて」 https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid/saimuseiri.html(2026年9月5日確認)/同「債務整理事件処理の規律を定める規程」PDF https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_093.pdf(2026年9月5日確認)/同「日本弁護士連合会会則」PDF https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaisoku/kaisoku_no_1.pdf(2026年9月5日確認)

    2. 上限が付くのはどの事件か|「非事業者等任意整理事件」という枠

    報酬の上限がかかるのは、債務整理事件のすべてではありません。規程が使う言葉は「非事業者等任意整理事件」で、定義は第二条にあります(2026年9月5日確認)。

    規程の用語条文の定義(原文の要旨)
    債務整理事件(2条5号)債務者に係る任意整理事件、破産手続開始申立事件、民事再生手続開始申立事件、特定調停申立事件及びこれらに類する事件
    任意整理事件(2条3号)債権者が有するとみられる債権について、弁済の額、方法等を裁判外で交渉して処理する事件(引直し計算の結果、債務を負担しないこととなる場合・過払金債権を有することとなる場合を含む)
    非事業者等任意整理事件(2条4号)任意整理事件のうち、弁護士が受任する時点において、処理すべき法律事務が3条・4条の事務のほかには10条1項2号イからトまでに掲げるものにほぼ尽きると予想される事件
    債務者(2条1号)金融業者に対して債務を負担する個人、またはイ・ロの会社=工業、鉱業、運送業その他の業種(商業又はサービス業を除く)で常時使用する従業員二十人以下/商業又はサービス業で五人以下。ただし総債権者に対する債務(住宅資金の貸付けに係る一定の債務を除く)の総額が五千万円を超える者は除く
    債務整理事件処理の規律を定める規程 第二条の定義(PDF原本より)。表現はいずれも条文の語です。

    日弁連のページは、この枠を「非事業者等任意整理事件=消費者や零細事業者の任意整理事件の報酬規制が主になっています。」と説明し、あわせて「※破産事件、民事再生事件などは報酬規制の対象外です。」と明記しています。自己破産や個人再生の弁護士報酬には、この規程の上限は及びません。手続そのものの違いは債務整理の4つの方法と任意整理とはで確認できます。

    日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程」PDF https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_093.pdf(2026年9月5日確認・第二条)/同「債務整理の弁護士報酬のルールについて」 https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid/saimuseiri.html(2026年9月5日確認)

    3. 受け取れる報酬金は3種類だけ|規程12条

    規程第十二条第一項は、報酬金を3つに区切って定義しています(原文)。

    一 解決報酬金 第十条第一項第二号ニの和解が成立したこと又は債権者からの請求を事実上免れるに至ったことについての報酬金であって、経済的利益に応じて算定する方式を採らないもの
    二 減額報酬金 弁護士が受任した時点で債権者が主張していた債務について、それを減額させ、又は免れさせた場合に、その減額され、又は免れた債務の金額を経済的利益として、その経済的利益に応じて算定される報酬金
    三 過払金報酬金 過払金を回収した場合に、その過払金の金額を経済的利益として、その経済的利益に応じて算定される報酬金

    そして第十二条第二項が、この3つ以外の報酬金を禁じています(原文)。

    2 弁護士は、前項各号の報酬金のほか、非事業者等任意整理事件についての報酬金を請求し、又は受領してはならない。

    第三項は、報酬金の金額が「第一項各号の報酬金として次条から第十五条までの規定に従って算出した場合における上限の金額の合計額を超えないときは、前項の規定にかかわらず、報酬金を請求し、又は受領することができる。」と定めています。

    日弁連のページは、同じ3種類をこう言い換えています(原文)。「解決報酬金…業者との事件が解決したこと自体により発生する報酬金。」「減額報酬金…業者が主張する債権額と実際に支払うことになった金額との差額(減額分)をもとに算定する報酬金。」「過払金報酬金…回収した過払金額をもとに算定する報酬金。」過払い金そのものの定義は別記事で扱っています。

    日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程」PDF https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_093.pdf(2026年9月5日確認・第十二条)/同「債務整理の弁護士報酬のルールについて」 https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid/saimuseiri.html(2026年9月5日確認)

    4. 上限の数字|規程13条〜15条は「規則で定める」、金額は施行規則にある

    ここが読み違えやすいところです。規程本体は上限の「外枠」までを定め、実際に適用される金額・割合は施行規則に委任しています。第十三条から第十五条までは、債権者一人当たり五万円/十パーセント以下/二十五パーセント以下という範囲を条文自身が置いたうえで、その範囲内の具体的な数字を「規則で定める上限の金額(割合)」として委任しており、実際に適用される数字は施行規則にあります(いずれも2026年9月5日確認)。

    報酬金の種類規程(会規第93号)の書き方施行規則(規則第145号)が定める数字
    解決報酬金第十三条=その金額を、債権者一人当たり、五万円を超えない範囲内で規則で定める上限の金額を超える金額としてはならない第二条第1項=二万円。第2項=事業者に事業用の資金を貸し付けることを主たる業務とする貸金業者から事業用資金の借入れがなされた場合であって、当該借入れに物的担保(手形又は小切手が交付されている場合を含む)又は人的担保が供されているときは、当該債権者に限り五万円
    減額報酬金第十四条=減額され、又は免れた債務の金額に十パーセント以下の範囲内で規則で定める割合を乗じた金額を超えてはならない第三条=十パーセント
    過払金報酬金第十五条=回収した過払金の金額に二十五パーセント以下の範囲内で規則で定める割合を乗じた金額を超えてはならない第四条=訴訟によらずに回収したときは二十パーセント、訴訟により回収したときは二十五パーセント
    規程第十三条〜第十五条と、債務整理事件処理の規律を定める規程施行規則第二条〜第四条。PDF原本より。

    消費税の扱いは規程第九条第二項が定めています。「次条から第十六条までに規定する弁護士報酬の額には、消費税額を含まないものとする。」=上表の金額・割合はいずれも税別の数字です。日弁連のページも「具体的な上限は、以下のとおりです(いずれも消費税別)。」と書き、解決報酬金を「1社あたり2万円以下が原則。商工ローンは5万円以下。」と要約しています。ただし「商工ローン」という語は施行規則の条文にはなく、条文側の要件は上表のとおり「事業用資金の借入れ+物的担保又は人的担保」です。

    また規程第九条第一項は、これらの規定に反する請求・受領そのものを禁じています。「弁護士は、次条から第十六条までの規定に反して、任意整理事件の弁護士報酬を請求し、又は受領してはならない。」

    日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程施行規則」PDF https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kisoku/kisoku_no_145.pdf(2026年9月5日確認・第二条〜第四条)/同「債務整理事件処理の規律を定める規程」PDF https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_093.pdf(2026年9月5日確認・第九条・第十三条〜第十五条)/同「債務整理の弁護士報酬のルールについて」 https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid/saimuseiri.html(2026年9月5日確認)

    5. 日弁連が公式ページに載せている計算例|2社で報酬金合計17万円

    日弁連のページには、上限どおりに計算した場合の例が載っています。以下は同ページの記載を整理したもので、当サイトが作った試算ではありません。設例は「Xは、A業者から50万円を請求され、B業者から70万円を請求されていた。それを弁護士に委任して整理した。」というものです。

    相手結果(同ページの記載)解決報酬金減額報酬金過払金報酬金小計
    A業者引き直し計算の結果、過払金が発生。XからA業者への支払いはなく、30万円の過払金を裁判によらずに回収2万円請求額50万円がゼロ=減額分50万円の10%=5万円回収額30万円の20%=6万円13万円
    B業者引き直しして50万円を分割で支払うことになった2万円70万円が50万円になった=減額分20万円の10%=2万円発生しない4万円
    報酬金合計(すべて上限の場合)17万円+消費税(着手金は別)
    日弁連「債務整理の弁護士報酬のルールについて」に掲載されている例(すべて上限の場合)。同ページは「報酬金合計 17万円+消費税(着手金は別)」と記載しています。

    この例が示しているのは、上限は「1件いくら」ではなく債権者ごとに積み上がるということです。手続全体の費用感については債務整理の費用の目安(法テラスの立替基準額)もあわせてご覧ください。

    日本弁護士連合会「債務整理の弁護士報酬のルールについて」 https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid/saimuseiri.html(2026年9月5日確認)

    6. 着手金に上限はない。ただし「別名目の手数料」は原則禁止

    日弁連のページは着手金について「【非事業者等任意整理事件の着手金の規制】⇒上限規制はなし」と明記しています。上限がない代わりに、規程第十条第一項第二号が着手金の額を決めるときに想定されている事務をイからトまで列挙しています(原文の要旨)。イ債権者に対する受任の通知と取引履歴の開示要求/ロ利息制限法が定める利率による引直し計算/ハ引直し計算の方法についての債権者との交渉/ニ引直し計算の結果、債務者が負担することが明らかとなった債務について、主に将来の収入を弁済原資として分割弁済を交渉し裁判外で和解すること/ホその和解に基づく弁済の送金代行/ヘ過払金の返還請求を裁判上又は裁判外で行い回収すること/トこれらに通常付随して行われる事務。

    イの「受任したことを通知」は、いわゆる受任通知です。通知の後の取立て規制については貸金業法21条1項9号の条文で扱っています。

    この列挙を受けて、規程第十一条が個別の名目での上乗せを禁止しています。着手金を請求・受領しているときは、イからトまでの個別の事務の処理(ホを除く)に関して「着手金、手数料その他名目のいかんを問わず弁護士報酬(次条に規定する報酬金を除く)を請求し、又は受領してはならない」という書き方です。日弁連のページはこれを「任意整理事件の処理をしている間の管理手数料とか、引き直し計算の計算手数料といった名目での手数料を取ることは禁止されています。」と説明しています。

    括弧書きが除いている「ホ」=送金代行だけは例外で、規程第十六条の委任を受けた施行規則第五条が「一回の送金について、送金先となる債権者一人当たり、銀行その他の金融機関に支払うべき送金手数料の実費に相当する額を含めて千円を超える金額としてはならない。」と定めています。

    着手金の追加請求についても、規程第十条第二項が原則禁止としています。条文が対象としているのは「受任した非事業者等任意整理事件について」で、追加が認められるのは「次に掲げる場合その他の特段の事情がある場合であって、受任の際に定めた着手金の額が不相応となったとき」です。条文が掲げているのは次の4つですが、そのあとに「その他の特段の事情がある場合」と続くため、この4つだけに限る書き方ではありません(以下は要旨)。①債権者の数が着手金の金額を定めた時までに債務者から申告されていた数より増えたとき/②債権者からの請求訴訟に応訴し、又はその他の法的手続に対処して代理人となるとき/③受任の際に予想されなかった法律事務処理が必要となり、かつ相当の時間又は労力を必要とするとき/④第三条・第四条の事務またはイからトまでの事務の処理に、受任の際に予想された程度を著しく超えて時間又は労力を必要とするとき。

    日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程」PDF https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_093.pdf(2026年9月5日確認・第十条・第十一条・第十六条)/同「債務整理事件処理の規律を定める規程施行規則」PDF https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kisoku/kisoku_no_145.pdf(2026年9月5日確認・第五条)/同「債務整理の弁護士報酬のルールについて」 https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid/saimuseiri.html(2026年9月5日確認)

    7. 報酬以外の規律と、規程に反したときの扱い

    この規程は報酬だけを扱っているわけではありません。依頼する側が見積書とあわせて確認できる規定を挙げます(いずれも原文の要旨)。

    • 第三条第1項=受任に当たり、あらかじめ受任予定の弁護士が当該債務者と自ら面談をして、①債務の内容②債務者(生計を同じくする家族を含む)の資産・収入・生活費その他の生活状況③不動産の処理に関する希望④事件処理に関する意向、を聴取しなければならない
    • 第四条第1項=受任に際し、事件処理の方針及び見通し、弁護士報酬及びその他の費用、並びに不利益事項を説明しなければならない。条文が例示するのは①破産手続を選択したときの資格等の制限による職業の制限②信用情報機関への登録により金融機関からの借入れ等に支障が生じるおそれ③不動産等の資産を失う可能性
    • 第八条第2項=他の債務があることを知りながら、その債務整理事件の依頼を受けずに過払金返還請求事件のみの依頼を受けてはならない(原則)
    • 第十七条=和解契約書・調停調書等の原本又は写しを遅滞なく交付し、過払金の返還を受けたときは清算の結果を書面により報告
    • 第十八条=業務広告では報酬の基準と受任弁護士と面談する必要があることを表示するよう努める

    規程そのものには罰則の規定がありません。関係する条文として、日本弁護士連合会会則第二十九条第1項は「弁護士は、所属弁護士会及び本会の会則、会規及び規則を守らなければならない。」と定めています。また弁護士法(昭和24年法律第205号)第五十六条第1項は、懲戒事由をこう定めています(e-Gov法令検索の本則から抽出・2026年9月5日確認)。

    弁護士及び弁護士法人は、この法律(…)又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。

    同条第2項は「懲戒は、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が、これを行う。」、第五十八条第1項は「何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、…所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。」と定めています。当サイトは、個別の事案がこれらの条文にいう懲戒事由に当たるかどうかの判断はしません。依頼先の所属弁護士会は日弁連の弁護士検索で確認でき、手順は実在確認ナビにまとめています。

    日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程」PDF https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_093.pdf(2026年9月5日確認)/同「日本弁護士連合会会則」PDF https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaisoku/kaisoku_no_1.pdf(2026年9月5日確認・第六条・第二十九条)/弁護士法(昭和24年法律第205号) https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205(2026年9月5日確認・本則から抽出)

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    8. 司法書士の報酬|同じ上限の定めは確認できませんでした

    債務整理は司法書士にも依頼できる場合があります。日本司法書士会連合会(日司連)の公式ページ「司法書士の報酬」は、報酬の決まり方をこう説明しています(原文・2026年9月5日確認)。

    司法書士が業務を行ったときに受ける報酬については、各司法書士が自由に定めることになっています。 自由といっても、会則では、司法書士の報酬は、その額や算定方法・諸費用を明示し、依頼者との合意によって決定することになっています。

    司法書士に業務を依頼される際には、お近くの司法書士に相談のうえ、報酬について十分に説明を受けてくださるよう、お願いいたします。

    同ページには「司法書士の報酬と報酬アンケートについて」と「報酬アンケート結果(2024年(令和6年)3月実施)」の2本のPDFが掲載されていますが、アンケートは集計であって上限の定めではないため、当サイトはその数字を上限の話に混ぜません。

    そしてこのページには、債務整理事件について日弁連の規程に相当する報酬の上限額・上限割合の定めは記載されていません。当サイトが2026年9月5日に確認した範囲では、司法書士側の債務整理報酬に上限を定める規定を特定できませんでした。「上限がない」と断定しているのではなく、「当サイトの確認範囲では記載を見つけられなかった」という意味です。司法書士が扱える債務整理の範囲には司法書士法上の制限があり、司法書士の「140万円」で確認できます。

    日本司法書士会連合会「司法書士の報酬」 https://www.shiho-shoshi.or.jp/about/remuneration/(2026年9月5日確認)

    この記事で扱わないこと

    個別の事務所が提示する金額が適正かどうか、どこに依頼すべきかは個別の判断であり、当サイトは扱いません。順位も優劣もつけません。費用の支払いが難しい場合の公的な制度は法テラスの費用立替制度と無料法律相談の条件で、公的な相談先は借金の相談窓口で、契約の相手の実在確認は実在確認と整理屋への注意で確認できます。

    よくある質問

    任意整理の弁護士費用には上限があるのですか?

    日弁連の会規「債務整理事件処理の規律を定める規程」と施行規則が、非事業者等任意整理事件の報酬金について上限を定めています=解決報酬金は債権者一人当たり2万円(一定の事業用資金の借入れで担保が供されている債権者に限り5万円)、減額報酬金は減額分の10%、過払金報酬金は訴訟によらない場合20%・訴訟による場合25%、いずれも消費税別。着手金には上限規制がないと日弁連のページが明記しています。

    自己破産や個人再生の費用にもこの上限はかかりますか?

    日弁連のページは「※破産事件、民事再生事件などは報酬規制の対象外です。」と明記しています。この規程の報酬規制は非事業者等任意整理事件が主な対象です。

    「引き直し計算の手数料」のような名目の請求はどう扱われますか?

    規程第十一条は、着手金を請求・受領しているときは、第十条第一項第二号イからトまでの個別の事務(送金代行を除く)について「着手金、手数料その他名目のいかんを問わず弁護士報酬(次条に規定する報酬金を除く)を請求し、又は受領してはならない。」と定めています。日弁連のページも、管理手数料や引き直し計算の計算手数料といった名目での手数料は禁止されていると説明しています。送金代行だけは施行規則第五条が、一回の送金につき債権者一人当たり実費相当額を含めて千円までと定めています。

    司法書士に依頼する場合も同じ上限ですか?

    日司連の「司法書士の報酬」ページは、司法書士の報酬は各司法書士が自由に定め、会則により額や算定方法・諸費用を明示して依頼者との合意で決めると説明しています。同ページに日弁連の規程に相当する上限の定めの記載はなく、当サイトが2026年9月5日に確認した範囲では特定できませんでした。


    日本弁護士連合会「債務整理の弁護士報酬のルールについて」 https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid/saimuseiri.html/「債務整理事件処理の規律を定める規程」 https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_093.pdf/「同施行規則」 https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kisoku/kisoku_no_145.pdf/「日本弁護士連合会会則」 https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaisoku/kaisoku_no_1.pdf/弁護士法 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205/日本司法書士会連合会「司法書士の報酬」 https://www.shiho-shoshi.or.jp/about/remuneration/(いずれも2026年9月5日確認)

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    最終更新:2026年9月5日/このページは公表されている一次情報(日本弁護士連合会の公式ページおよび会規・規則・会則のPDF原本、e-Gov法令検索、日本司法書士会連合会の公式ページ)のみを根拠に作成しています。規程・施行規則・会則はPDF原本から、弁護士法は本則から条文を抽出しており、解説書や実務上の運用は使用していません。司法書士の債務整理報酬の上限を定める規定は当サイトの確認範囲では特定できなかったため「記載なし」と明記し、推測で補っていません。個別の事務所の報酬額の当否は評価していません。

    本記事は法律相談ではありません。個別の状況は弁護士・司法書士にご相談ください。

  • 法テラスの立替金と生活保護の受給終了(打ち切り)|返済はいつ始まるか、免除の3要件を公式Q&Aで確かめる

    法テラスの立替金と生活保護の受給終了(打ち切り)|返済はいつ始まるか、免除の3要件を公式Q&Aで確かめる

    PR:本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。掲載内容は公表されている一次情報をもとに当サイトが確認したものです。

    先に結論:法テラスの公式Q&Aは、生活保護の受給が終了することになった場合について「返済を開始していただきます。」と記載しています(2026年9月5日確認)。同じQ&Aには「毎月の返済額は収入等に応じて決定します」「生活保護に準じる生活状況の方は、免除となる場合があります」ともあります。この記事は、受給が終わった後の立替金の扱いを法テラスの公表情報だけで確認した記録です。受給中の猶予と免除申請そのものは法テラスと生活保護(受給中の取扱い)で扱っています。個別の事案がどう扱われるかは当サイトでは判断しません。

    1. 「打ち切り」が指しているものは2つあります

    「打ち切り」という語は、法テラスの公表情報では別々の項目に対応します。先に分けます。

    どちらの「打ち切り」か法テラスの記載
    生活保護の受給が終わること公式Q&A 2-2「生活保護の受給が終了することになりました。返済はどうなりますか?」→「返済を開始していただきます。」
    法テラスの援助そのものが打ち切られること公式Q&A 4-3「利用中に収入などの基準を満たさなくなった場合はどうなりますか?」→「援助が打ち切りになる可能性があります。」
    いずれも法テラス「法テラスをご利用中の方からのよくあるお問合せ」の見出しと回答の冒頭です(2026年9月5日確認)。

    4-3の本文は「収入や資産、ご家族の人数、引っ越しなどによる居住地の変更などにより、援助の要件を満たさなくなった場合、手続きの途中でも援助が打ち切りになる場合があります。」=手続の途中で援助が止まる話です。以下では生活保護の受給が終わる場合を扱います。

    法テラス「法テラスをご利用中の方」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser/(2026年9月5日確認・4-3)

    2. 受給が終了したら|公式Q&Aは「返済を開始していただきます」

    2-2は、質問「生活保護の受給が終了することになりました。返済はどうなりますか?」に「→返済を開始していただきます。」と答え、本文を次のように続けています(提出書類の例示部分は中略)。

    毎月の返済額は収入等に応じて決定しますので、(中略)ご利用の地方事務所へお申し出ください。また、生活保護に準じる生活状況の方は、免除となる場合があります。詳しくはご利用の地方事務所にお問い合わせください。

    ここに書かれている事実は、①受給終了後は返済が始まるものとされている②毎月の返済額は収入等に応じて決定する(一律の額は示されていません)③「生活保護に準じる生活状況の方」には免除となる場合がある、の3点です。手続の窓口は、いずれも利用している地方事務所と書かれています。

    返済額については、2-3に「毎月の返済額を変更できる場合がありますので、返済額の見直しをご希望の方は、給与明細や年金受給額の分かるものなどをご用意の上、ご利用の地方事務所へお申し出ください。」とあります。2-4は、今月の返済ができそうもない場合に「失業した、シフトが減った、医療費の支払いが多かった、などのご事情」を伝えるよう案内し、「毎月の返済額を見直したり、一定期間の猶予を検討したりすることができる場合があります。」と記載しています。連絡時は援助番号(決定書の右上に記載)と氏名を伝えるよう書かれています。月額と総額の関係を概算したいだけなら返済シミュレーション(道具ページ)で試せます(法テラスの決定額とは無関係の計算ツールです)。

    法テラス「法テラスをご利用中の方」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser/(2026年9月5日確認・2-2/2-3/2-4)

    3. 受給中はどう書かれているか(比較)

    受給が続いている場合の2-1は「→返済を猶予することができます。」で、本文は次のとおりです。

    現在返済中の場合は、返済を猶予したり、返済の免除申請をすることができます。ご利用の地方事務所にお申し出ください。但し、全ての申請者が猶予・免除される訳ではありません。

    公表情報の上では受給中=猶予・免除申請ができる/受給終了=返済を開始するという書き分けで、受給中でも「全ての申請者が猶予・免除される訳ではありません」と明記されています。詳細は法テラスと生活保護(受給中の取扱い)、立替制度の収入・資産基準は法テラスの費用立替制度と収入・資産の基準にまとめています。

    法テラス「法テラスをご利用中の方」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser/(2026年9月5日確認・2-1)

    4. 生活保護受給中の免除は「3つの要件」と公表されています

    法テラスは、弁護士・司法書士向けQ&Aで、生活保護受給者に係る免除の要件を次の3つとして公表しています(原文)。

    生活保護受給者に係る免除の要件は、
    (1)生活保護法による保護を受けていること
    (2)事件の結果得た利益の25%を償還していること、または25%の償還を不要とする特別の事情があること
    (3)免除を認める相当性があること
    の3つを満たすことが必要です。

    同ページには「生活保護受給者であれば立替金が免除されるという制度ではありませんので、「費用がかからない」といった案内は相当ではありません。」ともあります。利用者向けQ-9は「免除となるかどうかは、法テラスの援助事件がすべて終了した後(=終結決定がされた後)、あなたが免除申請をした時点での経済状況や事件の結果得た経済的利益等(=金銭や不動産など)を踏まえて判断します。」と記載しています。要件(1)は「生活保護法による保護を受けていること」です。受給終了後の状態がどう評価されるかは法テラスの判断事項で、当サイトはその判断を行いません。

    法テラス「よくあるQ&A/生保免除申請関係」 https://www.houterasu.or.jp/site/bengoshitou-faq/fujo-faq-12.html(2026年9月5日確認)/法テラス「立替金の償還免除申請に関するよくあるお問合せ」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser/menjyoshinsei.html(2026年9月5日確認・Q-9)

    5. 免除申請ができる時期と、受給証明書の3か月ルール

    申請の時期についてQ-1は「法テラスの援助が終了する前に、あらかじめ免除申請することはできません。」と記載しています。生活保護を受給中の方についてのQ-8は次のとおりです。

    生活保護受給中の方を対象とした立替金の返済の免除制度があります。
    免除申請書に必要事項を記入し、免除申請日から3か月以内に発行された生活保護受給証明書を添えて法テラスに提出してください。

    Q-8はさらに、申請は援助事件がすべて終了し終結決定がされた後に行うこと、申請したからといって免除になるものではないことを記載しています。公表情報上は「全事件の終結決定後」という時期の条件と、「申請日から3か月以内に発行された受給証明書」という書類の条件が置かれています。受給が終わりそうな時期に事件がまだ続いている場合の扱いは、今回参照した公表情報では確認できませんでした。地方事務所にお問い合わせください。

    法テラス「立替金の償還免除申請に関するよくあるお問合せ」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser/menjyoshinsei.html(2026年9月5日確認・Q-1/Q-8)

    6. 受給していない場合の免除制度|要件が公表されています

    2-2にある「生活保護に準じる生活状況の方」については、法テラスが「生活保護を受給していない方(ひとり親含む)の償還免除について」(令和8年1月版・PDF全4ページ)を公表しています。要旨は次のとおりです。

    区分公表されている内容
    全体の構造資力回復困難要件又はひとり親に関する要件のいずれかを満たし、かつ収入要件及び資産要件のいずれも満たす必要がある。相手方等から得た又は得る見込みがある金銭等がある場合は、そのうち最低でも25%を返済に充てる必要がある(特別の事情が認められるときは例外的に免除が認められる場合がある)。ひとり親免除では、この25%相当額の返済は免除の要件とされていないとPDFに記載されている
    資力回復困難要件①65歳以上の高齢者 ②重度又は中度の障害のある方(障害基礎年金/障害厚生年金/労災の障害補償給付〈障害等級1級ないし7級〉/身体障害者手帳1級ないし4級/精神障害者福祉手帳1級ないし2級のいずれか) ③②の方を扶養している方 ④病気により長期の療養が必要で、現に収入を得ておらず、今後1年程度の間に働くことが見込めない方 ⑤①から④に準ずる理由により、今後1年〜2年で生計が改善される見込みに乏しい方——のいずれかに該当すること
    収入要件本人及び配偶者(内縁関係含む)の手取り月収の合計額が基準額以下であること。基準額は「免除に関する確認票」に記載され、地域と家族の人数に応じて定められる
    資産要件①金融資産(保険、有価証券等を含む)の合計額が66万円以下 ②自宅の他に不動産を保有していないこと ③車の保有は世帯あたり1台のみ——の全てに該当すること
    申請の時期「償還免除申請は、全ての援助事件が終わってから行ってください。」
    破産事件の特例援助事件が自己破産申立事件で、免除申請が免責許可決定日から2ヶ月以内の場合、破産申立資料を利用した申請ができる
    法テラス「生活保護を受給していない方(ひとり親含む)の償還免除について」(令和8年1月版)の記載を項目に分けたもの。

    同PDFは④⑤について「例えば、以下の理由のみで上記④⑤に該当するとは判断できません。」として不景気で収入が減った/現在失業中である/収入が低くて生活が苦しい/妊娠中であるなどを挙げ、冒頭には書類を提出すれば免除されるわけではない旨の注意書きがあります。また利用者向けQ-12には、資産が66万円を超えても、請求書等で確認できる医療費や学費の支出といった合理的事情があれば控除により要件を満たすと判断することがある、と書かれています。要件に当たるかどうかの判断は当サイトでは行いません。

    法テラス「生活保護を受給していない方(ひとり親含む)の償還免除について」(令和8年1月版・PDF) https://www.houterasu.or.jp/uploaded/attachment/7034.pdf(2026年9月5日確認)/法テラス「立替金の償還免除申請に関するよくあるお問合せ」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser/menjyoshinsei.html(2026年9月5日確認・Q-10/Q-11/Q-12)

    7. インターネット申請は「受給中の方に限る」と明記されています

    法テラスは償還免除申請のオンライン受付について「令和8年4月1日から、全国でインターネットによる民事法律扶助の償還免除申請サービスを開始いたしました!」「※本サービスの対象は、生活保護を受給中の方に限ります。」と公表しています。同ページは、生活保護に準ずる経済状況の方の免除(準生保免除)とひとり親免除の申請は対象外であること、受給中でインターネット申請が困難な方は従来どおり書面提出も可能であることも記載しています。なお書式については、法テラス「立替金の償還免除申請に関するよくあるお問合せ」の【償還免除関係書式】欄に「令和8年1月から、償還免除申請書式等を改訂しました。」との記載があります。

    法テラス「インターネットによる民事法律扶助の償還免除申請サービス開始について」 https://www.houterasu.or.jp/soshiki/15/internet-syoukanmennjoservice.html(2026年9月5日確認)/書式の改訂について:法テラス「立替金の償還免除申請に関するよくあるお問合せ」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser/menjyoshinsei.html(2026年9月5日確認・【償還免除関係書式】欄)

    8. 免除が認められなかった場合・払い済み分・督促状

    Q-5は、免除が認められない決定が届いた場合について「定められた要件を満たさないことが認められなかった理由である場合、支払を免除することはできませんので、決定書に記載のとおり返済(償還)をしていただく必要があります。」と記載し、猶予や償還月額の変更を希望する場合は地方事務所に相談するよう案内しています。書類の不備や不足が理由であれば、書類を整えて再申請することで再度免除の可否を検討することは可能とも書かれています。Q-7は「既にお支払済みの立替金は返金できません。この償還免除の制度は、償還未済額について償還を免除することができるものです。」=免除は未払分についての制度です。返済が滞った場合は、3-5に「放置しますと、支払督促などの法的手続きをとる場合があります。」とあります。

    法テラス「立替金の償還免除申請に関するよくあるお問合せ」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser/menjyoshinsei.html(2026年9月5日確認・Q-5/Q-7)/法テラス「法テラスをご利用中の方」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser/(2026年9月5日確認・3-5)

    9. この記事で確認できなかったこと

    • 受給終了後の返済開始日(いつから返済が始まるか)=2-2は「返済を開始していただきます。」「毎月の返済額は収入等に応じて決定します」と記載し、ご利用の地方事務所へ申し出るよう案内していますが、開始日や開始時期を示す記載は今回参照した資料では記載なし。
    • 収入要件の基準額(金額)=「免除に関する確認票」に記載されるとPDFにあり、金額そのものは今回参照した資料では記載なし。
    • 免除申請から決定までの期間=記載なし。ただしひとり親免除は、申請から6か月経過時に資力要件に該当しないと認めるときでないことが要件とされ、決定が申請から半年経過後になる旨がPDFに書かれています。
    • 受給終了後の毎月の返済額の目安=「収入等に応じて決定します」とのみ記載され、目安額は記載なし。費用そのものの目安は債務整理の費用の目安、自己破産の予納金の扱いは自己破産の予納金は立替対象外で扱っています。

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    よくある質問

    生活保護が終わったら、法テラスへの返済はいつから始まりますか?

    公式Q&Aの2-2は「→返済を開始していただきます。」と回答し、毎月の返済額は収入等に応じて決定するので地方事務所へ申し出るよう記載しています(2026年9月5日確認)。開始日を示す記載は確認できませんでしたので、時期はご利用の地方事務所にお問い合わせください。

    受給が終わっても免除してもらえますか?

    2-2には「生活保護に準じる生活状況の方は、免除となる場合があります。」とあります。生活保護を受給していない方向けの免除は、資力回復困難要件またはひとり親に関する要件のいずれかと、収入要件・資産要件(金融資産66万円以下ほか)の両方を満たす必要があると公表されています(令和8年1月版)。

    生活保護を受けていれば免除されるのですか?

    法テラスは、生活保護受給者に係る免除の要件を「(1)生活保護法による保護を受けていること(2)事件の結果得た利益の25%を償還していること、または25%の償還を不要とする特別の事情があること(3)免除を認める相当性があること」の3つとし、「生活保護受給者であれば立替金が免除されるという制度ではありません」と記載しています(2026年9月5日確認)。

    免除の申請はいつできますか?オンラインでもできますか?

    Q-1は「法テラスの援助が終了する前に、あらかじめ免除申請することはできません。」と記載しています。オンライン申請(令和8年4月1日開始)は「本サービスの対象は、生活保護を受給中の方に限ります」と明記され、準生保免除・ひとり親免除は対象外と書かれています。既に払った分は「既にお支払済みの立替金は返金できません」との記載です(2026年9月5日確認)。


    法テラス「法テラスをご利用中の方」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser//「立替金の償還免除申請に関するよくあるお問合せ」 https://www.houterasu.or.jp/site/houterasuuser/menjyoshinsei.html/「よくあるQ&A(生保免除申請関係)」 https://www.houterasu.or.jp/site/bengoshitou-faq/fujo-faq-12.html/「インターネットによる民事法律扶助の償還免除申請サービス開始について」 https://www.houterasu.or.jp/soshiki/15/internet-syoukanmennjoservice.html/「生活保護を受給していない方(ひとり親含む)の償還免除について」(令和8年1月版・PDF) https://www.houterasu.or.jp/uploaded/attachment/7034.pdf(いずれも2026年9月5日確認)

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    最終更新:2026年9月5日/このページは公表されている一次情報(法テラス)のみを根拠に作成しています。引用は各ページの原文からの抜粋で、一部を中略していることは本文に明記しました。確認できなかった項目は「記載なし」と明記し、推測で補っていません。制度の運用や個別の判断は法テラスが行います。

    本記事は法律相談ではありません。個別の状況は弁護士・司法書士にご相談ください。