住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは|民事再生法196条以下の条文と裁判所・法テラスの公表情報だけで確認する

整理する前チェック|住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは

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個人再生を調べていると「住宅ローン特則」「住宅資金特別条項」という言葉が出てきます。これは民事再生法が定める正式な仕組みで、条文上の名称は住宅資金特別条項です。この記事では、その定義・使える場合・条項に定められる内容・認可されない場合を、民事再生法の本則(e-Gov法令検索)と裁判所・法テラスの公表情報だけで確認します。自分の住宅ローンにこの条項が使えるかどうかという個別の判断はこの記事では扱いません(それは法律相談の領域であり、弁護士・司法書士の仕事です)。

1. 裁判所の説明|再生計画に「特別の条項」を定められる

裁判所の民事事件Q&Aは、「住宅ローンの支払いが困難になっても、住宅を手放さずにすむ手続があるようですが、それはどのような手続ですか。」という設問に対して、次のように説明しています(2026年9月2日確認)。

民事再生手続(個人再生手続に限られません。)では、住宅の購入やリフォームなどのための住宅ローン債権に関して抵当権がある場合には、返済期間の延長などをする特別の条項を再生計画に定めることができます。この再生計画が認められたときは、その再生計画に従って返済をすれば、住宅を手放さずにすむことができます。

ポイントは、この仕組みが個人再生に限られないことと、再生計画が認められ、その計画に従って返済することが前提になっていることです。

裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(2026年9月2日確認)

2. 条文の定義|「住宅」「住宅資金貸付債権」「住宅資金特別条項」

民事再生法は第十章「住宅資金貸付債権に関する特則」(196条〜206条)でこの仕組みを定めています。196条は用語を次のように定義しています(e-Gov法令検索で本則を確認・2026年9月2日)。

用語民事再生法196条の定義(要旨)
住宅「個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるもの」。建物が2以上ある場合は、主として居住の用に供する一の建物に限る(1号)
住宅の敷地住宅の用に供されている土地、または当該土地に設定されている地上権(2号)
住宅資金貸付債権住宅の建設・購入(土地や借地権の取得資金を含む)または改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権で、その債権または保証会社の求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているもの(3号)
住宅資金特別条項再生債権者の有する住宅資金貸付債権の全部または一部を、199条1項から4項までの規定するところにより変更する再生計画の条項(4号)
民事再生法(平成11年法律第225号)196条の本則より要旨。条文はリンク先で確認できます。

定義から読み取れるのは、この仕組みが「住宅ローンという借入れ」ではなく「住宅に抵当権が付いた分割払の再生債権」を対象にしていること、そして再生計画の中の一条項だという点です。

民事再生法(平成11年法律第225号) https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225(2026年9月2日確認・本則から抽出)

3. 定められる場合とその例外|198条1項ただし書

198条1項は、住宅資金貸付債権について再生計画で住宅資金特別条項を定めることができると規定した上で、ただし書で次の場合を除いています。

ただし、住宅の上に第五十三条第一項に規定する担保権(第百九十六条第三号に規定する抵当権を除く。)が存するとき、又は住宅以外の不動産にも同号に規定する抵当権が設定されている場合において当該不動産の上に同項に規定する担保権で当該抵当権に後れるものが存するときは、この限りでない。

また198条3項は、対象となる住宅資金貸付債権を有する再生債権者が数人あるときは「その全員を対象として住宅資金特別条項を定めなければならない」と定めています。

法テラスは、この点をより平易な形で次のように説明しています(2026年9月2日確認)。

住宅ローン特則が利用できるのは、以下の場合に限られます。
(1)住宅ローンで建設または購入等した自宅土地建物であり、現実に居住していること
(2)住宅ローン債権者以外の債権者のための抵当権が設定されていないこと

法テラス「住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)の利用条件は何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-sonota-004.html(2026年9月2日確認)

4. 条項に定められる内容|199条の3つの型と同意による別枠

199条は、住宅資金特別条項でどのような内容を定められるかを段階的に規定しています。要旨は次のとおりです。

  • 1項(原則型)=認可決定の確定時までに弁済期が到来する元本・利息・損害賠償等はその全額を、再生計画(住宅資金特別条項を除く)で定める弁済期間内(その期間が5年を超える場合は認可決定の確定から5年)に支払う。まだ弁済期が到来していない元本とその後の住宅約定利息は、債務の不履行がない場合についての弁済の時期・額に関する約定に従って支払う。
  • 2項(期限を延ばす型)=1項の条項では認可の見込みがない場合に、弁済期を住宅資金貸付契約の最終の弁済期(約定最終弁済期)より後の日に定められる。この場合の要件として、対象債権の全額を支払うものであること、そして「住宅資金特別条項による変更後の最終の弁済期が約定最終弁済期から十年を超えず、かつ、住宅資金特別条項による変更後の最終の弁済期における再生債務者の年齢が七十歳を超えないものであること。」などが定められている。
  • 3項(元本猶予型)=2項でも認可の見込みがない場合に、一般弁済期間の範囲内で定める「元本猶予期間」中は元本の一部とその期間中の住宅約定利息のみを支払うものとできる。2項1号・2号の要件を満たすことが必要。
  • 4項(同意による別枠)=権利の変更を受ける者の同意がある場合には、約定最終弁済期から10年を超える期限の猶予など、1項から3項までに規定する変更以外の変更を内容とすることができる。

条文上、住宅資金特別条項は支払いの時期や期間の組み替えを定めるものとして設計されており、199条2項1号は対象債権について「その全額を支払うものであること」を要件に挙げています。

あわせて、200条1項は「住宅資金特別条項を定めた再生計画案は、再生債務者のみが提出することができる。」と定めています。

5. 認可されない場合|202条2項

住宅資金特別条項を定めた再生計画案が可決されても、裁判所は次のいずれかに該当するときは不認可の決定をすると202条2項が定めています(要旨)。

  1. 174条2項1号または4号に規定する事由があるとき
  2. 再生計画が遂行可能であると認めることができないとき
  3. 「再生債務者が住宅の所有権又は住宅の用に供されている土地を住宅の所有のために使用する権利を失うこととなると見込まれるとき。」
  4. 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき

また203条2項は、認可の決定が確定したときは、変更後の権利について、住宅資金特別条項において期限の利益の喪失についての定めその他の住宅資金貸付契約における定めと同一の定めがされたものとみなすと規定しています(199条4項の同意を得て別段の定めをすることは妨げられません)。つまり条項が認められた後も、契約上の定めが引き続き効いてくる構造になっています。

なお197条1項は、認可の見込みがあると認めるときは、再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて抵当権の実行手続の中止を命ずることができると定めています。

6. 住宅ローン以外の債務はどうなるのか

住宅資金特別条項は住宅ローン債権についての条項であり、それ以外の債務は個人再生の一般の枠組みで扱われます。裁判所は、個人再生で返済しなければならない額について次のように説明しています(2026年9月2日確認)。

①3年間(最長でも5年間)にわたり分割して、②無担保債務の総額が3000万円以下の場合には借金等の総額の5分の1(ただし、100万円以上300万円以下の範囲)以上、無担保債務の総額が3000万円を超え、5000万円以下の場合には無担保債務の総額の10分の1以上、かつ、③債務者が自分の財産を処分して返済に当てる場合の額(清算価値)以上の返済を行う必要があります。

給与所得者等再生では、これに加えて可処分所得額の2年分以上の額を返済することも必要になる、と同ページに記載されています。個人再生そのものの要件は個人再生とは(5000万円以下・原則3年)で、4手続の位置づけは債務整理の4つの方法で扱っています。

法テラスは、個人再生を利用した後に支払いの継続が困難になった場合について、やむを得ない事由があれば再生計画を変更して分割弁済期間を延長してもらうことができる、再生計画の変更で対応できない場合には一定の事情があれば申立てにより免責を受けられる可能性がある、自己破産に方針を変更する、といった対応が考えられると説明しています(2026年9月2日確認)。

法テラス「個人再生をしましたが、支払いの継続が困難です。どうすれば良いですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-sonota-005.html(2026年9月2日確認)

7. この記事で扱わないこと

自分の住宅・ローン・抵当権の状況がこの条項の要件に当てはまるかどうかは、登記の内容や契約内容を見なければ判断できない個別の法律判断です。当サイトはそれを行いません。検討する場合は、まず相談しようとしている弁護士・司法書士が実在するかを公式検索で確認し、費用面に不安があれば法テラスの費用立替制度があります。ただし民事再生事件の予納金は立替の対象外である点は、法テラスの公式Q&Aで確認できます。

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よくある質問

「住宅ローン特則」と「住宅資金特別条項」は違うものですか?

民事再生法の条文上の名称は「住宅資金特別条項」です(196条4号)。法テラスの公式FAQでは「住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)」という呼び方も使われています(2026年9月2日確認)。

住宅ローン以外の抵当権が住宅に付いていても使えますか?

民事再生法198条1項ただし書は、住宅の上に住宅資金貸付債権のための抵当権以外の担保権が存するときなどをこの条項の対象から除いています。法テラスも利用条件として「住宅ローン債権者以外の債権者のための抵当権が設定されていないこと」を挙げています(2026年9月2日確認)。当てはまるかどうかの判断は弁護士・司法書士にご相談ください。

返済期間はどこまで延ばせるのですか?

民事再生法199条2項2号は、変更後の最終の弁済期が約定最終弁済期から10年を超えないこと、かつその時点の再生債務者の年齢が70歳を超えないことを要件として定めています。ただし同条4項は、権利の変更を受ける者の同意がある場合には、これと異なる変更を内容とすることができると規定しています。

住宅資金特別条項を定めた再生計画案は誰が出すのですか?

民事再生法200条1項は「住宅資金特別条項を定めた再生計画案は、再生債務者のみが提出することができる。」と定めています。

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最終更新:2026年9月2日/このページは公表されている一次情報(e-Gov法令検索・裁判所・法テラス)のみを根拠に作成しています。条文は民事再生法の本則から抽出しており、附則・改正規定は使用していません。確認できなかった項目は「記載なし」と明記し、推測で補っていません。

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