免責不許可事由とは|破産法252条1項の11号と2項の「裁量免責」

整理する前チェック|免責不許可事由とは

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自己破産について裁判所は、破産手続が開始されても債務を当然に免れるわけではなく、債務を免れるには免責の許可を受ける必要があると説明しています。その免責について、破産法252条1項は許可をしない事由(免責不許可事由)を11号にわたって列挙し、同条2項はそれに該当しても裁判所が免責を許可できる場合を定めています。この記事では、その条文と裁判所・法テラスの公表情報だけを根拠に、両方を確認します。自分の事情が免責不許可事由に当たるかどうかという個別の判断はこの記事では扱いません(それは法律相談の領域であり、弁護士・司法書士の仕事です)。

1. 裁判所の説明|破産手続と免責は別

裁判所の「破産」ページには次の記載があります(2026年9月2日確認)。

破産手続開始時点の債務は、破産手続が開始されても、当然に返済を免れるものではなく、債務を免れるためには免責の許可を受ける必要があります(個人を債務者とする破産手続の申立てがあれば、原則として免責許可の申立てもあったとみなされます。)。ただし、破産をすることになった事情に浪費や詐欺行為などがある場合には免責の許可が受けられないこともあります。

裁判所の民事事件Q&Aでも、「破産手続開始の決定がされた場合、債務はどうなるのですか。」という設問に対して、免責許可の申立てをして免責許可の決定がされる必要があること、免責許可の決定により税金や罰金、養育費などを除いて返済を免れること、そして「免責不許可事由がある場合には、免責の許可が受けられないことがあります。」と説明されています(2026年9月2日確認)。

裁判所「破産」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_16/index.html/裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(いずれも2026年9月2日確認)

2. 条文の構造|「該当しない場合には、免責許可の決定をする」

破産法252条1項の柱書は、次のように定めています(e-Gov法令検索で本則を確認・2026年9月2日)。

裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。

条文は「該当したら不許可にする」ではなく、「いずれにも該当しない場合には許可の決定をする」という書き方になっています。そのうえで、後述する2項が例外を定める構造です。

3. 破産法252条1項が列挙する11の事由

条文の要旨
1号債権者を害する目的で、破産財団に属し、または属すべき財産の隠匿・損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと
2号破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、または信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと
3号特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的または他の債権者を害する目的で、担保の供与または債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、またはその方法・時期が債務者の義務に属しないものをしたこと
4号「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」
5号破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと
6号業務および財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、または変造したこと
7号虚偽の債権者名簿を提出したこと
8号破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、または虚偽の説明をしたこと
9号不正の手段により、破産管財人・保全管理人・破産管財人代理・保全管理人代理の職務を妨害したこと
10号次のいずれかの日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと=①免責許可の決定が確定した日②民事再生法239条1項の給与所得者等再生における再生計画が遂行された場合の再生計画認可の決定の確定の日③民事再生法235条1項の免責の決定が確定した場合の、その免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
11号破産法40条1項1号、41条、250条2項に規定する義務その他同法に定める義務に違反したこと
破産法(平成16年法律第75号)252条1項各号の要旨。かぎ括弧内は条文の原文です。

破産法(平成16年法律第75号) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075(2026年9月2日確認・本則から抽出)

法テラスによる同趣旨の説明

法テラスの公式FAQは、「自己破産で免責決定がされないのは、どういう場合ですか。」という設問に対して、「次のような場合が考えられます。」として次を挙げています(2026年9月2日確認)。

  1. 財産を隠したり、壊したりする。
  2. 財産を不当に安い対価で手放してしまう。
  3. ギャンブルや過度な買い物や飲食で債務を負った。
  4. 他の債権者に支払いができないのに、家族や親友、一定の債権者だけに偏った弁済をする。
  5. 裁判所に一部の財産を申告しなかったり、虚偽の書類を提出する。
  6. ローンで買ったものを安く処分する(「買い物枠を現金化」などの広告をしているいわゆる「買取屋・換金屋」の利用)
  7. 過去7年に給与所得者等再生、破産手続で免責を得ている。
  8. 返済することができないことを知りながら、借金をする。

法テラス「自己破産で免責決定がされないのは、どういう場合ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-011.html(2026年9月2日確認)

4. 「裁量免責」=破産法252条2項

1項各号に当たれば直ちに免責が受けられないと決まるわけではありません。同条2項は次のように定めています(原文)。

前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

この規定が一般に「裁量免責」と呼ばれています。条文上は「裁判所が……相当であると認めるとき」に「できる」と定められた規定であり、どのような場合に許可されるかの基準は条文には書かれていません。当サイトはその見通しについて述べません。個別の事情がどう評価されるかは、弁護士・司法書士にご相談ください。

なお同条7項は「免責許可の決定は、確定しなければその効力を生じない。」と定めています。法テラスは手続の流れとして、免責許可決定が官報に掲載されてから2週間が経過した時点で免責許可決定が確定する、と説明しています(2026年9月2日確認)。

法テラス「自己破産の手続について教えてください。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-003.html(2026年9月2日確認)

5. 免責の許可が確定しても残るもの|破産法253条1項

免責不許可事由とあわせて確認しておきたいのが、免責の対象にならない債権(非免責債権)です。破産法253条1項は、免責許可の決定が確定したときは破産者は破産債権について責任を免れると定めた上で、ただし書で次の請求権を除外しています(要旨)。

  1. 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く)
  2. 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  3. 破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(2号を除く)
  4. 夫婦間の協力・扶助の義務、婚姻から生ずる費用の分担の義務、子の監護に関する義務、扶養の義務、およびこれらに類する契約に基づく義務に係る請求権
  5. 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権および使用人の預り金の返還請求権
  6. 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く)
  7. 罰金等の請求権

法テラスの公式FAQも、「免責許可決定が確定しても、破産法253条で定める次の非免責債権については、免責されません。」として同趣旨の7項目を挙げています(2026年9月2日確認)。

また同条2項は、免責許可の決定は破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利および破産者以外の者が提供した担保に影響を及ぼさないと定めています。

法テラス「免責許可決定が確定すると、すべての債権は免責されるのでしょうか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-010.html(2026年9月2日確認)

6. この記事で扱わないこと

自分の事情が1項各号のどれかに当たるか、当たるとして2項の適用がどうなるかは、経緯と資料を見なければ判断できない個別の法律判断です。当サイトはそれを行いません。手続そのものの位置づけは自己破産とは債務整理の4つの方法で扱っています。費用については法テラスが公表する立替基準額と、自己破産の予納金が立替の対象外である点を別記事で確認しています。相談先を探す段階では、まず実在するかを公式検索で確認してください。

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よくある質問

免責不許可事由に当たると、免責は受けられないのですか?

破産法252条2項は、1項各号に該当する場合であっても、裁判所が破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは免責許可の決定をすることができる、と定めています。どう判断されるかは個別の事情によります。当サイトは見通しを述べません。

「7年以内」というのは何の期間ですか?

破産法252条1項10号が定める期間です。過去の免責許可決定の確定日など、条文が定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったことが、同号の事由として挙げられています。法テラスも「過去7年に給与所得者等再生、破産手続で免責を得ている。」を挙げています(2026年9月2日確認)。

免責が許可されれば税金も対象になりますか?

破産法253条1項ただし書1号は租税等の請求権を除外しています。裁判所の民事事件Q&Aも、免責許可の決定により「税金や罰金、養育費などを除いて」返済を免れることになると説明しています(2026年9月2日確認)。

保証人はどうなりますか?

破産法253条2項は、免責許可の決定は破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利に影響を及ぼさない、と定めています。

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最終更新:2026年9月2日/このページは公表されている一次情報(e-Gov法令検索・裁判所・法テラス)のみを根拠に作成しています。条文は破産法の本則から抽出しており、附則・改正規定は使用していません。確認できなかった項目は「記載なし」と明記し、推測で補っていません。

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