年金は差し押さえられるか|国民年金法24条・厚生年金保険法41条と国税滞納処分の例外を条文で確かめる

整理する前チェック|年金は差し押さえられるか

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年金は差し押さえられるのか。この問いには、公的年金の法律が直接答える条文を置いています。この記事は、e-Gov法令検索の条文と裁判所のQ&Aで、書かれていることと書かれていないことを分けて確認した記録です。先に結論として、確認できたのは次の3点です。①国民年金法24条と厚生年金保険法41条1項は、給付を受ける権利を「差し押えることができない」と定めていること、②それぞれに、国税滞納処分(その例による処分を含む)で差し押さえる場合を除く「ただし書き」があり、国民年金法は老齢基礎年金と付加年金を、厚生年金保険法は老齢厚生年金を挙げていること、③国税徴収法77条は老齢年金などを給料等とみなして76条を適用すると定め、76条には差押禁止の額の定めがあること(76条5項は、滞納者の承諾があるときは適用しないと定めています)。当サイトは、個別の事案で年金が差し押さえられるかどうかの判断をしません。

1. 国民年金法24条の原文

e-Gov法令検索の法令APIで、国民年金法(昭和34年法律第141号・lawId=334AC0000000141)の本文を取得しました(2026年11月2日)。第二十四条の見出しは「受給権の保護」で、原文は次のとおりです。

給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。

前半で禁じられているのは「譲り渡し」「担保に供し」「差し押え」の3つです。後半の「ただし」以下が例外で、対象として挙がっているのは老齢基礎年金と付加年金です。

国民年金法(昭和34年法律第141号) https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141(2026年11月2日確認・法令API `/api/1/lawdata/334AC0000000141` で取得)

2. 厚生年金保険法41条1項の原文

同じく厚生年金保険法(昭和29年法律第115号・lawId=329AC0000000115)の本文を取得しました(2026年11月2日)。第四十一条の見出しは「受給権の保護及び公課の禁止」で、1項の原文は次のとおりです。

保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。

厚生年金保険法(昭和29年法律第115号) https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115(2026年11月2日確認・法令API `/api/1/lawdata/329AC0000000115` で取得)

3. 2つの条文を並べる

2つの条文は、同じ形で書かれています。違いが出るのは、保護の対象の書き方と、ただし書きに挙がる年金の名前です。以下はすべて条文の文言の整理で、当サイトの解釈ではありません。

項目国民年金法24条厚生年金保険法41条1項
保護される権利給付を受ける権利保険給付を受ける権利
禁止されること譲り渡し・担保に供し・差し押え譲り渡し・担保に供し・差し押え
ただし書きに挙がる年金老齢基礎年金、付加年金老齢厚生年金
ただし書きの処分国税滞納処分(その例による処分を含む。)国税滞納処分(その例による処分を含む。)
国民年金法24条と厚生年金保険法41条1項の文言を項目に分けたもの。表現はいずれも条文の語です。

ただし書きに挙がっているのは、上の表の老齢基礎年金・付加年金・老齢厚生年金だけです。障害基礎年金・遺族基礎年金といった名前は、この2つのただし書きには書かれていません。どの債権の徴収が「その例による処分」に当たるかは、この2条には書かれていないため、本記事では扱いません。

税金を滞納して払えないときの公的な猶予制度は、税金を滞納して払えないときの公的な猶予制度で確認しています。

国民年金法24条 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141/厚生年金保険法41条 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115(いずれも2026年11月2日確認)

4. 税金の滞納処分にも差押禁止の定めがある|国税徴収法76条・77条

ただし書きの場面については、国税徴収法(昭和34年法律第147号・lawId=334AC0000000147)に定めがあります。第七十七条の見出しは「社会保険制度に基づく給付の差押禁止」です。1項は、社会保険制度に基づき支給される退職年金、老齢年金などについて、次のように書いています(原文の該当部分)。

に係る債権は給料等と、退職一時金、一時恩給及びこれらの性質を有する給付(中略)に係る債権は退職手当等とそれぞれみなして、前条の規定を適用する。

2項は「前項に規定する社会保険制度」として7つの法律を挙げており、その中に厚生年金保険法と国民年金法が含まれています。適用される「前条」=第七十六条の見出しは「給与の差押禁止」で、1項の冒頭は次のとおりです(原文)。

給料、賃金、俸給、歳費、退職年金及びこれらの性質を有する給与に係る債権(以下「給料等」という。)については、次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額は、差し押えることができない。

「次に掲げる金額」は1号から5号まであります。要旨は次のとおりです。

号要旨
1号その給料等につき徴収される所得税に相当する金額
2号特別徴収の方法によって徴収される道府県民税・市町村民税・森林環境税に相当する金額
3号その給料等から控除される社会保険料
4号生活保護法12条の生活扶助の基準となる金額を勘案して政令で定める金額
5号給料等の金額から1号〜4号の合計額を控除した金額の100分の20に相当する金額(4号の金額の2倍に相当する金額を超えるときは、その2倍に相当する金額)
国税徴収法76条1項1号〜5号の要旨。正確な文言は条文を確認してください。

ただし、同じ76条の5項は「第一項、第二項及び前項の規定は、滞納者の承諾があるときは適用しない。」と定めています(原文)。つまり、1項の差押禁止には、滞納者の承諾がある場合を除く定めが置かれています。

4号の政令の金額は本記事では確認していないため、記載しません。個別の事案でいくらが残るかという計算も、当サイトは行いません。

国税徴収法(昭和34年法律第147号)76条・77条 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147(2026年11月2日確認・法令API `/api/1/lawdata/334AC0000000147` で取得)

5. 口座に振り込まれた後のことは、この2条に書かれていない

国民年金法24条と厚生年金保険法41条1項が保護しているのは、「給付を受ける権利」「保険給付を受ける権利」です。この2条の文言には、年金が預貯金口座に振り込まれた後の扱いについての記載はありません。当サイトは、この点について条文の構成から先の結論を述べません。預金の差押えの仕組みは預金が差し押さえられる仕組みで確認しています。

一方、裁判所の民事事件Q&Aは「差押範囲変更(減縮)の申立て」の対象について、「差押えによって債務者の生活に著しい支障が生じる場合(例えば、生活保護費や年金の振込口座が差し押さえられ、生活が成り立たなくなる場合)など」と書いています(原文・2026年9月5日確認)。同じQ&Aには「また、差押範囲変更が認められても、債務者の債務が減るわけではありません。」とも書かれています(原文)。差押禁止債権の範囲の変更を定める民事執行法153条1項は、執行裁判所が「申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し」と書いています(原文の該当部分・2026年9月5日確認)。この条が書いているのは執行裁判所の差押命令についてで、国税の滞納処分についての定めではありません。

国税の側では、国税徴収法76条2項に「給料等に基き支払を受けた金銭は、前項第四号及び第五号に掲げる金額の合計額に、その給料等の支給の基礎となつた期間の日数のうちに差押の日から次の支払日までの日数の占める割合を乗じて計算した金額を限度として、差し押えることができない。」という定めがあります(原文・2026年11月2日確認)。この「金銭」に預貯金口座の残高が当たるかどうかは確認していないため、記載しません。

民事執行法153条の差押範囲変更について、申立てをする裁判所、申立時期、裏付け資料の例は給料の差押えはいくらまでかにまとめています。

裁判所「民事事件Q&A(債権執行手続)」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html/民事執行法(昭和54年法律第4号)153条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(いずれも2026年9月5日確認)/国税徴収法76条2項 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147(2026年11月2日確認)

6.民間の年金は、この記事の2条の対象ではない

ここまでの2条が定めているのは、国民年金法の給付と厚生年金保険法の保険給付です。「年金」という名前でも、別の法律が書き分けているものがあります。たとえば民事執行法152条1項2号は「給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権」を挙げ、その支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分を差し押さえてはならないと定めています(太字は原文・2026年9月5日確認。金額の上限は政令に置かれています)。生命保険会社などの個人年金保険の扱いは今回確認していないため、記載しません。

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よくある質問

借金を返せないと、年金は差し押さえられますか?

国民年金法24条と厚生年金保険法41条1項は、給付を受ける権利を「差し押えることができない」と定めています。ただし書きで除かれているのは、老齢基礎年金・付加年金・老齢厚生年金を国税滞納処分(その例による処分を含む)で差し押さえる場合です。個別の事案の判断は、当サイトでは行いません。

税金を滞納すると、年金は全額差し押さえられますか?

国税徴収法77条は老齢年金などに係る債権を給料等とみなして76条を適用すると定めており、76条1項は1号〜5号の合計額に達するまでの部分は差し押えることができないと定めています。76条5項は、滞納者の承諾があるときは1項などの規定を適用しないと定めています。残る金額の計算は、当サイトでは行いません。

障害年金や遺族年金も、ただし書きの対象ですか?

国民年金法24条のただし書きに挙がっているのは老齢基礎年金と付加年金、厚生年金保険法41条1項のただし書きに挙がっているのは老齢厚生年金です。障害基礎年金・遺族基礎年金といった名前は、この2つのただし書きには書かれていません。

口座に振り込まれた年金はどうなりますか?

国民年金法24条と厚生年金保険法41条1項の文言には、振り込まれた後の扱いについての記載はありません。裁判所の民事事件Q&Aは、差押範囲変更(減縮)の申立ての対象の例として、生活保護費や年金の振込口座が差し押さえられ、生活が成り立たなくなる場合を挙げています。


国民年金法 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141/厚生年金保険法 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115/国税徴収法 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147(いずれも2026年11月2日確認)/民事執行法 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004/裁判所「民事事件Q&A(債権執行手続)」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(いずれも2026年9月5日確認)

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最終更新:2026年11月2日/このページは公表されている一次情報(e-Gov法令検索・裁判所)のみを根拠に作成しています。国民年金法・厚生年金保険法・国税徴収法は本則の該当条を2026年11月2日に取得し、民事執行法と裁判所のQ&Aは2026年9月5日の確認内容を用いています。国税徴収法76条1項4号の政令の金額、「その例による処分」に当たる債権の範囲、年金が口座に振り込まれた後の取扱い(国税徴収法76条2項の「金銭」と預貯金の関係を含む)、民間の個人年金保険の扱いは確認していないため記載していません。

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