差押禁止動産とは|民事執行法131条の1号〜14号と施行令1条の66万円を条文と裁判所の動産執行の説明で確かめる

整理する前チェック|差押禁止動産とは

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差押えという言葉を聞いたとき、家の中の物がどこまで対象になるのかが気になることがあります。この点について、民事執行法131条は「次に掲げる動産は、差し押さえてはならない」として、1号から14号までのリストを置いています。この記事は、その条文の原文と、3号が委任している政令の金額、そして裁判所が公表している動産執行の手続案内を、e-Gov法令検索と裁判所の公表情報だけで確認した記録です。先に、一次情報にはっきり書かれている3点を挙げます。①民事執行法131条は差し押さえてはならない動産を1号から14号まで列挙していること、②3号の「政令で定める額の金銭」は民事執行法施行令1条により66万円とされていること、③131条の各号に掲げる動産であっても、執行裁判所が申立てにより差押えを許すことができる旨が132条1項に書かれていること。個別の家財が条文のどの号に当たるか、当たらないかは、当サイトでは判断しません。

1. 条文の位置|動産の差押えは「執行官の差押え」で始まります

まず前提として、動産の差押えがどの手続かを条文で確認します。e-Gov法令検索で民事執行法(昭和54年法律第4号・lawId=354AC0000000004)の本則を確認しました(2026年9月12日)。122条の見出しは「動産執行の開始等」で、1項の原文は次のとおりです。

動産(登記することができない土地の定着物、土地から分離する前の天然果実で一月以内に収穫することが確実であるもの及び裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券を含む。以下この節、次章及び第四章において同じ。)に対する強制執行(以下「動産執行」という。)は、執行官の目的物に対する差押えにより開始する。

123条1項は「債務者の占有する動産の差押えは、執行官がその動産を占有して行う。」と定め、同条2項は執行官が差押えに際して「債務者の住居その他債務者の占有する場所に立ち入り」、目的物を「捜索することができる」と書いています。この動産執行について、差し押さえてはならない物を列挙しているのが131条です。条文の見出しはそのまま「差押禁止動産」です。

民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

2. 民事執行法131条の原文|1号から14号まで

131条の柱書は次の一文です(原文)。

次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。

続く各号は次のとおりです。表の右列はすべて条文の文言そのものであり、当サイトによる言い換えや当てはめではありません(e-Gov法令検索の本文に付されている読み仮名のみ除いています)。

条文の文言(原文)
1号債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
2号債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
3号標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
4号主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
5号主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
6号技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
7号実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
8号仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
9号債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
10号債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
11号債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
12号発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
13号債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
14号建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
民事執行法131条各号(1号〜14号)。条文にただし書は置かれていません。

各号の多くは「生活に欠くことができない」「必要な」「業務に欠くことができない」といった、物の種類だけでは決まらない書き方になっています。特定の家電や家財が条文のどの号に当たるかは、条文の文言からは一義的に定まりません。当サイトは「この品目は差し押さえられない」という形の説明をせず、条文にこう書いてある、というところまでを示します。

民事執行法131条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

3. 3号の「政令で定める額」=施行令1条の66万円

131条3号だけは、金額の決定を政令に委ねています。その政令が民事執行法施行令(昭和55年政令第230号・lawId=355CO0000000230)です。1条の見出しは「差押えが禁止される金銭の額」で、原文は次のとおりです。

民事執行法(以下「法」という。)第百三十一条第三号(法第百九十二条において準用する場合を含む。)の政令で定める額は、六十六万円とする。

131条3号が指している金額は66万円です。条文の文言は「標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」であり、対象として書かれているのは金銭です。

民事執行法施行令(昭和55年政令第230号) https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230(2026年9月12日確認・本則から抽出)

4. 「債務者等」は本人だけを指す語ではありません

131条の1号・2号・11号・13号には「債務者等」という語が使われています。この語を定めているのは、同じ民事執行法の97条1項です。ただし97条は「債務者等」だけを定めるために置かれた条ではありません。97条の見出しは「建物使用の許可」で、債務者の居住する建物について強制管理の開始決定がされた場合の建物の使用の許可を定めた規定であり、その1項の文中で「債務者等」の語が定められています。次はその97条1項の一部です(原文・一部。前後は省いています)。

債務者及びその者と生計を一にする同居の親族(婚姻又は縁組の届出をしていないが債務者と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にある者を含む。以下「債務者等」という。)

条文の定義は、債務者本人に加えて「生計を一にする同居の親族」を含み、さらに婚姻・縁組の届出をしていなくても事実上夫婦または養親子と同様の関係にある者を含む、という書き方です。一方で9号は「債務者」、10号は「債務者又はその親族」と書かれており、号ごとに主語が違います

民事執行法97条1項 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

5. 裁判所の説明|動産執行はどう進むか

裁判所は、手続案内のページ「動産執行」(2026年9月12日確認・ページ名は「動産執行 | 裁判所」)で、この手続の概要を次のように説明しています。

判決などの債務名義に基づいて債務者の占有する動産を差し押さえ、当該動産を換価(売却)して得られた現金(売得金等)により債権の満足を得る手続です。

同じページの「手続の流れ」の「3 差押え」には、差押禁止に触れた記述があります(原文)。

動産執行は、執行官の目的物に対する差押えにより開始します。差押えは、執行官が差し押さえるべき動産の占有を自己に移すことによって行います。動産執行の対象は法令で定められており、例えば、債務者が個人の場合には、一定額以下の金銭や生活必需品等は動産執行の対象とはなりません。
また、差押動産の評価は、原則として、執行官が差押えの際に行います。

裁判所の書き方は「一定額以下の金銭や生活必需品等」という例示であり、品目を列挙したものではありません。ページに書かれているその他の事項は次のとおりです。

項目裁判所ページの記載
申立先動産の所在地を管轄する地方裁判所に所属する執行官
申立てに必要な費用予納金(各裁判所によって異なります。)/「収入印紙、切手は不要です」(郵送による申立ての場合は予納通知等の送付のため切手が必要)
評価差押動産の評価は、原則として、執行官が差押えの際に行う
換価執行官が競り売り等の方法により換価(売却)。競り売りの期日は、原則として、差押えの日から1週間以上1月以内の日
裁判所「動産執行」ページの記載(2026年9月12日確認)。予納金の具体的な金額は、同ページに記載がありません。

裁判所「動産執行」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_13/index.html(2026年9月12日確認)

6. 131条のほかにも、条文上の限度が置かれています

差押えの範囲を画す条文は131条だけではありません。同じ款に次の規定があります(いずれも原文の要旨ではなく、条文の文言です)。

見出し条文の文言
128条1項超過差押えの禁止等動産の差押えは、差押債権者の債権及び執行費用の弁済に必要な限度を超えてはならない。
129条1項剰余を生ずる見込みのない場合の差押えの禁止等差し押さえるべき動産の売得金の額が手続費用の額を超える見込みがないときは、執行官は、差押えをしてはならない。
130条売却の見込みのない差押物の差押えの取消し差押物について相当な方法による売却の実施をしてもなお売却の見込みがないときは、執行官は、その差押物の差押えを取り消すことができる。
民事執行法128条〜130条。131条の禁止リストとは別に置かれている規定です。

民事執行法128条・129条・130条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

7. 131条のリストは固定ではありません|132条(範囲の変更)

131条の次に置かれた132条の見出しは「差押禁止動産の範囲の変更」です。1項の原文は次のとおりです。

執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押えの全部若しくは一部の取消しを命じ、又は前条各号に掲げる動産の差押えを許すことができる。

条文は両方向に書かれています。すでにされた差押えの取消しを命じることができると同時に、「前条各号に掲げる動産」=131条のリストに載っている動産についても、差押えを許すことができると定めています。2項は事情の変更があったときの再度の変更について、3項は取消しの命令を求める申立てがあったときに執行裁判所が強制執行の停止を命じることができる旨を定めています。

不服申立ては項によって書き方が異なり、4項は却下決定・差押えを許す決定に対する執行抗告ができる旨を、5項は「第三項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。」と定めています。申立ての手順・書式や見通しは、今回確認した一次情報に記載がないため扱いません。

なお192条(動産執行の規定の準用)は、128条・131条・132条の規定は「一般の先取特権の実行としての動産競売」について準用すると書いています。同条は、それ以外の動産競売についての準用からは131条・132条等を除いています。

民事執行法132条・192条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

8. 給料の差押えは、別の条文です

131条が扱うのは動産です。給料や賃金は債権であり、差押禁止の規定は152条(差押禁止債権)に置かれています。152条1項は、そこに掲げる債権について「その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない」と定めており、その政令の額は施行令2条にあります(131条3号を受ける1条とは別の条です)。金額の内訳は給料の差押えはいくらまでかの記事で条文とともに確認できます。また、差押禁止債権の範囲の変更は153条にあり、動産の132条と並びの構造になっています。

民事執行法(昭和54年法律第4号)152条・153条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004/民事執行法施行令(昭和55年政令第230号)2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230(2026年9月12日確認・本則から抽出)

9. 破産手続でも131条3号が参照されています

131条は、強制執行の場面だけの条文ではありません。破産法(平成16年法律第75号・lawId=416AC0000000075)34条3項は、破産財団に属しない財産として次を掲げています(原文)。

一 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
二 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項(同法第百九十二条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。

1号は「131条3号に規定する額に二分の三を乗じた額」という書き方で、施行令1条の66万円がその計算の基礎になっています。2号は「差し押さえることができない財産」を掲げつつ、132条1項により差押えが許されたものを除いています。計算後の金額は自由財産の記事で扱っています。

破産法(平成16年法律第75号)34条3項 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075(2026年9月12日確認・本則から抽出)

10. この記事で扱わないこと

個別の家財・家電・現金が131条のどの号に当たるか、132条の申立てをすべきか、認められる見込みがあるかは、いずれも個別の判断であり当サイトでは扱いません。執行官の実務上の取扱いも一次情報で確認できなかったため記載していません。手続そのものの公的な定義は債務整理の4つの方法任意整理個人再生自己破産で、差押えの前段にあたる書面は支払督促が届いたらで確認できます。相談先は公式検索で実在を確認する手順実在確認ナビ、費用は法テラスの費用立替制度費用の目安、窓口は借金の相談窓口、返済額の計算は返済計算の道具をご覧ください。

民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月12日確認・本則から抽出)

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よくある質問

差押禁止動産は何条に書かれていますか?

民事執行法131条です。条文の見出しは「差押禁止動産」で、柱書は「次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。」、続けて1号から14号までが列挙されています。条文にただし書は置かれていません。

131条3号の「政令で定める額」はいくらですか?

民事執行法施行令1条が「六十六万円とする」と定めています(同条は、法192条において準用する場合を含む旨も書いています)。3号の対象として条文が書いているのは「金銭」です。

条文に載っている物なら、差し押さえられることはないのですか?

132条1項は、執行裁判所が申立てにより「前条各号に掲げる動産の差押えを許すことができる」と定めています。逆に、同項は差押えの全部または一部の取消しを命じることができるとも定めています。個別の事案でどちらの判断がされるかについて、当サイトでは述べません。

「債務者等」には家族も含まれますか?

民事執行法97条1項が「債務者及びその者と生計を一にする同居の親族(婚姻又は縁組の届出をしていないが債務者と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にある者を含む。以下「債務者等」という。)」という形で「債務者等」の語を定めています(97条の見出しは「建物使用の許可」で、この語は同項の文中で定められています)。ただし131条の各号は主語が書き分けられており、9号は「債務者」、10号は「債務者又はその親族」と書かれています。

給料の差押えにも131条が使われるのですか?

131条は動産についての規定です。給料・賃金などの債権については152条(差押禁止債権)が別に置かれており、政令の額も施行令2条という別の条にあります。詳細は給料の差押えの記事で扱っています。


民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004/民事執行法施行令(昭和55年政令第230号) https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230/破産法(平成16年法律第75号) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075/裁判所「動産執行」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_13/index.html(いずれも2026年9月12日確認)

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最終更新:2026年9月12日/このページは公表されている一次情報(e-Gov法令検索・裁判所)のみを根拠に作成しています。条文は民事執行法・民事執行法施行令・破産法の本則から抽出しており、附則・改正規定は使用していません。個別の動産が131条各号に当たるかどうかの当てはめ、132条の申立ての手順・書式、執行官の実務上の取扱いは一次情報で確認できなかったため記載していません。確認できなかった項目は推測で補っていません。

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