給料の差押えはいくらまでか|民事執行法152条の「4分の3」と施行令2条の「33万円」、範囲変更の申立て(153条)を条文で確かめる

整理する前チェック|給料の差押えはいくらまでか

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給料の差押えについて、法律は「差し押さえてはならない部分」の側から金額を定め、裁判所の手続案内は「差し押さえることができる部分」の側から同じ内容を説明しています。同じ制度を反対側から書いているだけなのですが、片方だけを読むと数字が食い違って見えます。この記事では、民事執行法152条民事執行法施行令2条の原文、裁判所が公表している説明、そして民事執行法153条の「差押禁止債権の範囲の変更」の申立てを、e-Gov法令検索と裁判所のページの記載だけで確認します。当サイトは独自の計算式を作らず、個別の事案でいくら残るかという計算も行いません。

1. 条文の原文|民事執行法152条1項は「4分の3」を差押禁止としている

e-Gov法令検索で民事執行法(昭和54年法律第4号・lawId=354AC0000000004)の本則を確認しました(2026年9月5日)。152条の見出しは「差押禁止債権」です。1項は次のとおりです(原文)。

次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権

読み取れるのは次の2点です。いずれも条文にそう書かれているという指摘であり、当サイトの解釈ではありません。

  • 原則として「四分の三に相当する部分」を差し押さえてはならない=残る側が4分の3です。
  • ただし、その額が「政令で定める額」を超えるときは、政令で定める額に相当する部分が差押禁止になる=守られる金額には上限があり、その上限額は条文ではなく政令に置かれています。

また、給料の差押えが1回で終わらない点は151条に書かれています。「給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。」(原文)

民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月5日確認・本則から抽出)

2. 上限額は政令にある|民事執行法施行令2条の「三十三万円」

152条1項が委任している政令は民事執行法施行令(昭和55年政令第230号・lawId=355CO0000000230)です。その2条の見出しは「差押えが禁止される継続的給付に係る債権等の額」で、支払期の区分ごとに額を定めています(原文の数字をそのまま表にしたもの・2026年9月5日確認)。

支払期の区分(施行令2条1項)政令で定める額
一 支払期が毎月と定められている場合三十三万円
二 支払期が毎半月と定められている場合十六万五千円
三 支払期が毎旬と定められている場合十一万円
四 支払期が月の整数倍の期間ごとに定められている場合三十三万円に当該倍数を乗じて得た金額に相当する額
五 支払期が毎日と定められている場合一万千円
六 支払期がその他の期間をもつて定められている場合一万千円に当該期間に係る日数を乗じて得た金額に相当する額
民事執行法施行令2条1項が定める「政令で定める額」。表現・数字はいずれも条文の語です。

この1項は、対象を「法第百五十二条第一項各号に掲げる債権(次項の債権を除く。)」と書いており、賞与は1項から除かれています(原文)。賞与の額は同条2項が別に定めています。「賞与及びその性質を有する給与に係る債権に係る法第百五十二条第一項の政令で定める額は、三十三万円とする。」(原文)

よく耳にする「33万円」は、この施行令2条1項1号(毎月払いの場合)と2項(賞与)の額です。なお、同じ施行令の1条も「六十六万円」という額を定めていますが、条文上その額は民事執行法131条3号(同法192条において準用する場合を含む)について定められたものであり、152条=給料の話ではありません。自己破産の場面で出てくる金額との関係は自己破産で手元に残せる財産(自由財産)で扱っています。

民事執行法施行令(昭和55年政令第230号) https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230(2026年9月5日確認・本則から抽出)

3. 裁判所の説明は「差し押さえることができる」側から書かれている

裁判所の手続案内「債権執行(債務名義に基づく差押え)」は、手続の流れの「3 差押え」で次のように説明しています(原文・2026年9月5日確認)。

差押命令が第三債務者に送達されると、差押えの効力が生じます。例えば、給料の差押えの場合、原則として相手方の給料の4分の1(月給で44万円を超える場合には、33万円を除いた金額)を差し押さえることができます。ただし、相手方が既に退職している場合などには、差押えはできません。

民事事件Q&Aの「相手方の給料を差し押さえる場合、全額を差し押さえることはできますか。」も、「給料差押えの場合、相手方の給料の4分の1(月額で44万円を超える場合には、33万円を除いた金額)※を差し押さえることができます。」とほぼ同じ文を置いています(原文)。

条文(152条1項)は差し押さえてはならない側=4分の3を書き、裁判所の説明は差し押さえることができる側=4分の1を書いています。向きが逆なだけで、どちらか一方が誤っているという話ではありません。当サイトは、この2つをつなぐ独自の計算式や、月給ごとの早見表を作りません。なお裁判所のQ&Aには、各項目の冒頭に共通の但し書きが置かれています(原文)。「【※運用に関する記載は、一例を記載したものであり、記載された内容と異なる運用をしている庁もあります。】」

裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html(2026年9月5日確認)/裁判所「民事事件Q&A(債権執行手続)」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(2026年9月5日確認)

4. 賞与・退職年金・退職手当|152条の書き分け

対象条文の位置条文が書いている割合と上限
給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権152条1項2号4分の3。ただし「政令で定める額」を超えるときはその額(施行令2条=毎月払い33万円ほか、賞与33万円)
退職手当及びその性質を有する給与に係る債権152条2項4分の3。2項の条文には、1項にある「政令で定める額」のかっこ書きがありません
民事執行法152条1項2号・2項の文言を対象ごとに整理したもの。割合・かっこ書きの有無は条文の記載そのものです。「退職年金」は1項2号に、「退職手当」は2項に、それぞれ別に書かれています。

民事執行法(昭和54年法律第4号)152条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月5日確認・本則から抽出)

5. 養育費などを請求する場合は「4分の3」が「2分の1」に読み替えられる

152条3項は、読み替えの規定です(原文)。

債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

ここでいう「前条第一項各号に掲げる義務」は、151条の2第1項が挙げる次の4つです(原文)。

  • 一 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
  • 二 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
  • 三 民法第七百六十六条及び第七百六十六条の三(これらの規定を同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
  • 四 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務

つまり、これらの義務に係る金銭債権を請求する差押えでは、条文上の割合が「二分の一」になります。裁判所の「債権執行(債務名義に基づく差押え)」も、給料の4分の1という説明のあとに「※ 養育料等を請求する場合については」として「債権執行(養育費等に基づく差押え)」のページへの案内を置いています。養育費等の手続の詳細は本記事では扱いません。

民事執行法(昭和54年法律第4号)151条の2・152条3項 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月5日確認・本則から抽出)/裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html(2026年9月5日確認)

6. 範囲を変えてもらう申立て|民事執行法153条

152条の割合は固定ではありません。153条の見出しは「差押禁止債権の範囲の変更」で、1項は次のとおりです(原文)。

執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。

この一文には2つの方向が書かれています。差押命令の全部または一部を取り消す方向(減縮)と、152条で差し押さえてはならないとされた部分について差押命令を発する方向(拡張)です。2項は、事情の変更があったときに、申立てにより取り消された債権を差し押さえ、または1項の差押命令の全部・一部を取り消すことができると定めています。4項は、1項・2項による取消しの申立てを却下する決定に対して執行抗告をすることができると定めています。

手続の進め方は、裁判所の民事事件Q&A「差押範囲変更(減縮)の申立てについて教えてください。」に記載があります。同ページは対象を「差押えによって債務者の生活に著しい支障が生じる場合(例えば、生活保護費や年金の振込口座が差し押さえられ、生活が成り立たなくなる場合)など」と書いています(原文・2026年9月5日確認)。

項目裁判所Q&Aの記載
申立てをする裁判所債権差押命令を発令した裁判所
申立時期債権者が、第三債務者から差し押さえた金銭債権の支払を受ける前に申立てをする必要があります
申立書正本1通、副本(債権者の数分)。事件番号、申立ての趣旨(差押範囲をどのように変更したいのか)及び理由(範囲変更を必要とする事情)を記載
裏付け資料(同ページが「例示」と明記)陳述書、家計表(申立前2か月分)/源泉徴収票、課税証明書(又は非課税証明書)/給与明細書(申立前2か月分)/預貯金口座の通帳のコピー(過去1年分)/世帯全員及び同居者全員の住民票(申立日から3か月以内に発行されたもの) ほか
郵便切手申立てをする裁判所にお問い合わせください
裁判所 民事事件Q&A「差押範囲変更(減縮)の申立て」の記載を項目に分けたもの。同ページには、裁判所から異なる資料を求められる場合があるとも書かれています。

同Q&Aは、判断の仕方についても「債務者が差押範囲変更の申立てをすると、裁判所は、債務者や債権者から提出された資料をもとに、申立てを認めるかどうかを判断します。」と書き、続けて「また、差押範囲変更が認められても、債務者の債務が減るわけではありません。」と記載しています(いずれも原文)。申立書の書式(差押範囲変更申立書)は同ページからダウンロードできます。個別の事案で申立てが認められるかどうかについて、当サイトは見通しを述べません。

民事執行法(昭和54年法律第4号)153条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月5日確認・本則から抽出)/裁判所「民事事件Q&A(債権執行手続)」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(2026年9月5日確認)

7. 給料の差押えでは取立てまでが「4週間」|155条2項と145条4項

153条の申立時期が「債権者が支払を受ける前」であることと関係するのが、155条です。1項は「金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。」と定め、2項が次の読み替えを置いています(原文)。

差し押さえられた金銭債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「一週間」とあるのは、「四週間」とする。

裁判所の手続案内も、取立てについて「債権差押命令が債務者に送達された日から1週間を経過したときは(ただし、給料の差押えの場合については、養育費などを請求する場合を除いて4週間となります。)、債権者はその債権を自ら取り立てることができます」と説明しています。

また145条4項は、次のとおりです(原文)。

裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、債務者に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、第百五十三条第一項又は第二項の規定による当該差押命令の取消しの申立てをすることができる旨その他最高裁判所規則で定める事項を教示しなければならない。

条文が挙げている「その他最高裁判所規則で定める事項」の中身(民事執行規則の定め)は、今回一次情報で確認していないため記載なしとします。

民事執行法(昭和54年法律第4号)145条・155条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004(2026年9月5日確認・本則から抽出)/裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html(2026年9月5日確認)

8. この記事で扱わないこと

差押えを受けた場合にどの手続を選ぶか、勤務先にどう説明するか、範囲変更の申立てと債務整理のどちらを先に検討するかは、いずれも個別の判断であり、当サイトは扱いません。手続ごとの公的な定義は債務整理の4つの方法と、任意整理自己破産個人再生特定調停の各記事で確認できます。依頼したことの通知と取立ての関係は受任通知で取立てが止まる仕組み、相談先は借金の公的な相談窓口一覧、依頼先の実在確認は日弁連・日司連の検索で確認する手順実在確認ナビ、費用は法テラスの無料法律相談の条件費用立替制度、返済額の計算は返済計算の道具をご覧ください。

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よくある質問

給料はいくらまで差し押さえられるのですか。

民事執行法152条1項は「その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が…政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない」と定めています。政令(民事執行法施行令2条1項1号)は、支払期が毎月と定められている場合の額を三十三万円としています。裁判所は同じ内容を「相手方の給料の4分の1(月額で44万円を超える場合には、33万円を除いた金額)を差し押さえることができます」と説明しています。当サイトでは個別の金額計算は行いません。

賞与や退職金も同じ扱いですか。

賞与は民事執行法152条1項2号に列挙されており、政令の額は民事執行法施行令2条2項が三十三万円と定めています。退職手当およびその性質を有する給与に係る債権は152条2項に置かれ、「その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない」と書かれています。2項の条文には、1項にある「政令で定める額」のかっこ書きがありません。

養育費の場合は割合が変わるのですか。

民事執行法152条3項が、151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権を請求する場合について、152条1項・2項中の「四分の三」を「二分の一」と読み替えると定めています。151条の2第1項各号は、民法752条の夫婦間の協力及び扶助の義務、民法760条の婚姻から生ずる費用の分担の義務、民法766条・766条の3の子の監護に関する義務、民法877条から880条までの扶養の義務です。

生活が成り立たない場合はどうすればよいですか。

民事執行法153条1項は、執行裁判所が申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して差押命令の全部または一部を取り消すことができると定めています。裁判所の民事事件Q&Aは、この申立てを「債権差押命令を発令した裁判所」に、「債権者が、第三債務者から差し押さえた金銭債権の支払を受ける前に」する必要があると記載し、陳述書・家計表・給与明細書などの裏付け資料を例示しています。具体的な申立ての可否や進め方は弁護士・司法書士にご相談ください。

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最終更新:2026年9月5日/このページは公表されている一次情報(e-Gov法令検索・裁判所)のみを根拠に作成しています。条文は民事執行法(昭和54年法律第4号)および民事執行法施行令(昭和55年政令第230号)の本則から抽出しており、附則・改正規定は使用していません。民事執行規則の定め(145条4項の「最高裁判所規則で定める事項」)、生活保護法・年金各法などの個別の差押禁止規定、差押禁止債権が口座に振り込まれた後の取扱いは一次情報で確認できなかったため記載していません。裁判所のQ&Aは「運用に関する記載は、一例を記載したものであり、記載された内容と異なる運用をしている庁もあります」と注記しています。

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