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自己破産について、裁判所は「破産管財人が債務者の財産を金銭に換えて債権者に配当する手続」と説明しています。ただし条文上、破産者の財産がすべて破産財団に入るわけではありません。破産法34条3項が破産財団に属しない財産を定めており、同条4項がその範囲を裁判所が広げられる場合を定めています。この記事では、一般に「自由財産」と呼ばれているものの条文上の根拠と、よく挙げられる「99万円」という数字がどの条文の計算から出てくるのかを、e-Gov法令検索の本則と裁判所・法テラスの公表情報だけで確認します。自分の財産が残せるかどうかという個別の判断は扱いません。
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1. 裁判所の説明|「一定の財産を除く」
裁判所の「破産」ページには次の記載があります(2026年9月2日確認)。
破産手続は、裁判所が破産手続の開始を決定し、破産管財人を選任して、その破産管財人が債務者の財産を金銭に換えて債権者に配当する手続です。通常は、破産手続開始の決定時点の債務者の財産を金銭に換えた上で分配(配当)することになります。債務者の財産が少ない場合には、破産管財人を選任しないまま破産手続を終了することもあります。
裁判所の民事事件Q&Aは、破産手続と個人再生手続の違いを説明する中で、より踏み込んだ書き方をしています(2026年9月2日確認)。
原則としては、破産手続の開始時の債務者の財産(一定の財産を除く)を金銭に換えて配当することになります
この「一定の財産を除く」の中身が、以下で見る破産法34条3項・4項です。なお裁判所のこれらのページに「自由財産」という語の記載は確認できませんでした。「自由財産」は条文上の用語ではなく、破産法34条3項・4項が定める「破産財団に属しない財産」を指す呼び方として使われているものです。
裁判所「破産」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_16/index.html/裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html(いずれも2026年9月2日確認)
2. 出発点|破産法34条1項・2項
e-Gov法令検索で破産法(平成16年法律第75号)の本則を確認しました(2026年9月2日)。34条の見出しは「破産財団の範囲」で、1項・2項は次のとおりです(原文)。
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
原則は「一切の財産」です。時点は破産手続開始の時と条文に書かれています。
3. 例外|破産法34条3項の2つの号
34条3項は次のように定めています(原文)。
第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
一 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
二 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項(同法第百九十二条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
破産法(平成16年法律第75号) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075(2026年9月2日確認・本則から抽出)
4. 「99万円」はどこから来るのか|条文3本の連鎖
34条3項1号には金額が書かれていません。書かれているのは計算の仕方だけです。順にたどります。
| 段 | 条文 | 条文が定めていること |
|---|---|---|
| ① | 破産法34条3項1号 | 「民事執行法第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭」は破産財団に属しない |
| ② | 民事執行法131条3号 | 差し押さえてはならない動産として「標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」 |
| ③ | 民事執行法施行令1条 | 「民事執行法(以下「法」という。)第百三十一条第三号(法第百九十二条において準用する場合を含む。)の政令で定める額は、六十六万円とする。」(見出し=「差押えが禁止される金銭の額」) |
民事執行法(昭和54年法律第4号) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004/民事執行法施行令(昭和55年政令第230号) https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230(いずれも2026年9月2日確認・本則から抽出)
法テラスの公表情報でも同じ数字が確認できます
法テラスの公式FAQ「自己破産のメリット・デメリットは何ですか。」は、主なデメリットの1つ目として次のように記載しています(2026年9月2日確認)。
・生活に必要な家財道具等の一定の財産以外は、失うことになる。
(ただし、99万円以下の現金は手元に残せる。)
法テラス「自己破産のメリット・デメリットは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-002.html(2026年9月2日確認)
条文の言葉は「金銭」です
破産法34条3項1号も民事執行法131条3号も、対象を「金銭」と書いています。法テラスの記載も「現金」です。預貯金がこの1号に含まれるかどうかについて、条文にも上記の各ページにも記載はありません。当サイトはこの点について述べません。
5. もう1つの例外|差し押さえることができない財産(34条3項2号)
34条3項2号は、民事執行法131条3号の金銭を除く「差し押さえることができない財産」を破産財団から外しています。その中心にある民事執行法131条(見出し=「差押禁止動産」)は、次の14号を挙げています(原文)。
| 号 | 条文(原文) |
|---|---|
| 1号 | 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具 |
| 2号 | 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料 |
| 3号 | 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭(=前節の66万円) |
| 4号 | 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物 |
| 5号 | 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物 |
| 6号 | 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。) |
| 7号 | 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの |
| 8号 | 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物 |
| 9号 | 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類 |
| 10号 | 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物 |
| 11号 | 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具 |
| 12号 | 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの |
| 13号 | 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物 |
| 14号 | 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品 |
34条3項2号のただし書
2号にはただし書があり、民事執行法132条1項の規定により差押えが許されたものと、破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは例外から外れます。その民事執行法132条1項は次のとおりです(原文)。
執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押えの全部若しくは一部の取消しを命じ、又は前条各号に掲げる動産の差押えを許すことができる。
6. 範囲を広げる制度|破産法34条4項(自由財産の拡張)
34条4項は次のように定めています(原文)。
裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。
条文から読み取れることを整理します。
- 誰が決めるか=裁判所(破産者の申立てによるほか、職権でもできる)
- いつまで=破産手続開始の決定があった時から、その決定が確定した日以後1月を経過する日まで
- 何を考慮するか=破産者の生活の状況/破産手続開始の時に破産者が有していた3項各号の財産の種類および額/破産者が収入を得る見込み/その他の事情
- 手続=5項により、裁判所はこの決定をするに当たって破産管財人の意見を聴かなければならない。6項により、4項の申立てを却下する決定に対して破産者は即時抗告をすることができる。7項により、裁判書は破産者および破産管財人に送達される。
どの財産がどこまで拡張されるかの基準は、条文には書かれていません。各地方裁判所が用いる運用上の基準(いわゆる換価基準)は当サイトでは確認していないため、記載していません。
7. 個別の財産の扱いは裁判所ごとに異なることがある
法テラスの公式FAQは、自家用車について次のように説明しています(2026年9月2日確認)。
相当な交換価値のある自動車であれば、破産手続の性質上、原則として処分(換価)されます。個々の破産手続の中で実際にどの程度の価値がある自動車を処分(換価)するかについては、各地方裁判所(裁判官)によって取扱いが異なることもあります。詳しくは、申立て予定の地方裁判所や申立予定地近隣の弁護士に確認されるとよいでしょう。
法テラス「自己破産すると、自家用車は必ず処分されるのですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-009.html(2026年9月2日確認)
法テラス自身が「各地方裁判所(裁判官)によって取扱いが異なることもあります」と書いている領域です。当サイトは、個別の財産が残るか処分されるかについての見通しを述べません。
8. 財産が少ない場合の手続|同時廃止
裁判所の民事事件Q&Aは、破産管財人の選任について次のように説明しています(2026年9月2日確認)。
破産法では、破産管財人が選任される「管財事件」として手続を進めるのが原則とされています。ただし、債務者の財産が少なく、財産を換価してもその中から破産手続の費用も支出できないと認められる場合には、破産管財人を選任せずに破産手続を終了することもあります。これを「同時廃止事件」といいます。管財事件となるか同時廃止事件となるかは裁判所が判断します。
費用面では、裁判所は破産手続開始の申立てについて収入印紙1000円分(債権者による申立ての場合2万円分)、免責許可の申立てについて収入印紙500円分、そのほか連絡用の郵便料と予納金が必要と説明しています。予納金の具体的な額はこれらのページに記載がなく、裁判所は「申立先の裁判所へ確認してください」としています。詳しくは自己破産の予納金でも扱っています。
9. この記事で扱わないこと
自分の財産のどれが34条3項各号に当たるか、4項の拡張がどこまで認められるかは、資料と生活状況を見て行う個別の判断です。当サイトはそれを行いません。手続そのものの位置づけは自己破産とは、免責が受けられない場合の条文は免責不許可事由、財産を手放さない選択肢としての手続は個人再生とはと住宅資金特別条項で扱っています。4つの手続の違いは債務整理の4つの方法にまとめています。相談先を探す段階では、まず実在するかを公式検索で確認し、実在確認ナビの手順を使ってください。費用が払えない場合は法テラスの立替制度を確認できます。
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よくある質問
「自由財産」は法律上の言葉ですか?
破産法34条の条文にこの語はなく、条文は「破産財団に属しない」財産(3項)と、その「範囲を拡張する」こと(4項)という書き方をしています。裁判所の破産ページ・民事事件Q&Aにも「自由財産」の語は確認できませんでした。
99万円という金額は破産法に書いてあるのですか?
破産法34条3項1号が書いているのは「民事執行法第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭」という計算式です。金額そのものは民事執行法施行令1条が「六十六万円とする。」と定めており、これに2分の3を乗じた額が99万円になります。法テラスの公式FAQも「99万円以下の現金は手元に残せる。」と記載しています(2026年9月2日確認)。
拡張はいつまでに申し立てるのですか?
破産法34条4項は、裁判所が拡張の決定をできる期間を「破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間」と定めています。手続の進め方については弁護士・司法書士にご相談ください。
拡張の申立てが認められなかった場合はどうなりますか?
破産法34条6項は「第四項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。」と定めています。
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