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弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、その旨の通知(一般に「受任通知」と呼ばれます)が債権者に送られます。この通知の後の取立てについて、貸金業法21条1項9号が規制を置いています。この記事では、その条文が実際に何を禁止しているのか、誰に適用されるのか、そしてこの規制の対象にならない相手は誰かを、e-Gov法令検索の本則と法テラス・金融庁の公表情報だけで確認します。「受任通知を出せば支払わなくてよくなる」といった効果については述べません。この記事が扱うのは、法律が定めた取立て規制の内容だけです。
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1. 条文の原文|貸金業法21条1項9号
e-Gov法令検索で貸金業法(昭和58年法律第32号・lawId=358AC1000000032)の本則を確認しました(2026年9月2日)。21条の見出しは「取立て行為の規制」です。1項の柱書は次のとおりです(原文)。
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
その9号が、受任通知に関する規定です(原文)。
債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
貸金業法(昭和58年法律第32号) https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032(2026年9月2日確認・本則から抽出)
2. 条文を分解する
長い一文なので、条文が置いている要件を順に切り分けます。以下はすべて条文の文言の整理であり、当サイトによる解釈や見通しではありません。
| 条文の部分 | 書かれていること |
|---|---|
| 誰が | 貸金業を営む者/貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて委託を受けた者(1項柱書) |
| どんな出来事の後か | 債務者等が債務の処理を弁護士・弁護士法人・弁護士・外国法事務弁護士共同法人・司法書士・司法書士法人に委託した、または裁判所における民事事件に関する手続をとった |
| 通知の形 | その弁護士等または裁判所から書面によりその旨の通知があったこと |
| 例外の入口 | 「正当な理由がないのに」(正当な理由がある場合は9号に当たらない書き方になっています。何が正当な理由かは条文に定義がありません) |
| 方法 | 債務者等に対し、電話をかける/電報を送達する/ファクシミリ装置を用いて送信する/訪問する |
| 内容 | 当該債務を弁済することを要求すること |
| 反復の要件 | それに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で弁済を要求すること |
条文をそのまま読むと、9号が禁止しているのは「書面の通知があった後に、正当な理由なく、列挙された方法で債務者等に直接弁済を要求し、やめるよう求められてもさらに要求すること」です。「通知が届いた時点で債権者からのあらゆる連絡が違法になる」とは条文に書かれていません。当サイトはこの点について、条文に書かれている以上のことを述べません。
3. 21条1項が並べる10の禁止行為
9号は、21条1項が列挙する禁止行為の1つです。全体は次のとおりです(要旨)。
| 号 | 条文の要旨 |
|---|---|
| 1号 | 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯(=下記)に、債務者等に電話・ファクシミリ送信をし、または居宅を訪問すること |
| 2号 | 債務者等が弁済・連絡の時期を申し出た場合に、その申出が相当と認められないことその他の正当な理由がないのに、1号の時間帯以外の時間帯に電話・ファクシミリ送信・居宅訪問をすること |
| 3号 | 正当な理由がないのに、勤務先その他の居宅以外の場所へ電話・電報・ファクシミリ送信をし、または訪問すること |
| 4号 | 訪問した場所で退去すべき旨の意思を示されたにもかかわらず、退去しないこと |
| 5号 | 貼り紙・立看板その他何らの方法をもってするを問わず、債務者の借入れに関する事実その他私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること |
| 6号 | 債務者等に対し、他からの借入れその他これに類する方法により弁済資金を調達することを要求すること |
| 7号 | 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わって債務を弁済することを要求すること |
| 8号 | 債務者等以外の者が居所・連絡先を知らせることその他の取立てへの協力を拒否している場合に、更に協力を要求すること |
| 9号 | 弁護士等・裁判所からの書面による通知の後の、正当な理由のない弁済要求(前節のとおり) |
| 10号 | 債務者等に対し、前各号(6号を除く)のいずれかに掲げる言動をすることを告げること |
1号の「内閣府令で定める時間帯」=午後9時から午前8時まで
1号が委任している内閣府令は貸金業法施行規則(昭和58年大蔵省令第40号)です。その19条1項は次のように定めています(原文・2026年9月2日確認)。
法第二十一条第一項第一号(法第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項、第二十四条の五第二項及び第二十四条の六において準用する場合を含む。)に規定する内閣府令で定める時間帯は、午後九時から午前八時までの間とする。
貸金業法施行規則(昭和58年大蔵省令第40号) https://laws.e-gov.go.jp/law/358M50000040040(2026年9月2日確認・本則から抽出)
4. 誰に適用されるのか
21条1項が名宛人としているのは「貸金業を営む者」と「貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者」です。さらに貸金業法24条から24条の6までが、21条を含む規定を次の者に準用しています(各条の見出しから)。
- 24条=債権譲渡等の規制(貸金業者の貸付けに係る債権を譲り受けた者)
- 24条の2=保証等に係る求償権等の行使の規制(保証業者)
- 24条の3=受託弁済に係る求償権等の行使の規制(受託弁済者)
- 24条の4・24条の5=それらの求償権等を譲り受けた者
- 24条の6=貸金業を営む者(貸金業者を除く)に関する準用
なお金融庁は、貸金業について「貸金業を営む者は、主たる営業所等の所在地を管轄する財務局長又は都道府県知事の登録を受けなければならないこととなっています。」と説明し、登録の有無を確認するよう呼びかけています(2026年9月2日確認)。登録業者かどうかの確認手順はヤミ金・紹介屋の手口と整理屋への注意でも扱っています。
金融庁「違法な金融業者にご注意!」 https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/index.html(2026年9月2日確認)
5. 罰則|貸金業法47条の3第1項3号
貸金業法47条の3第1項は、次の各号のいずれかに該当する者は「二年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定め、その3号に次を挙げています(原文)。
第二十一条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項、第二十四条の五第二項及び第二十四条の六において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
6. 債権回収会社(サービサー)には別の法律の規定がある
債権が債権回収会社(サービサー)に移っている場合については、債権管理回収業に関する特別措置法(平成10年法律第126号・lawId=410AC1000000126)18条8項に規定があります(2026年9月2日確認・原文)。
債権回収会社は、債務者等が特定金銭債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとった場合において、その旨の通知があったときは、正当な理由がないのに、債務者等に対し、訪問し又は電話をかけて、当該債務を弁済することを要求してはならない。
貸金業法21条1項9号と読み比べると、条文の文言に次の違いがあります。いずれも条文にそう書かれているという事実の指摘であり、意味の説明ではありません。
- 委託先として条文が挙げているのは弁護士・弁護士法人・弁護士・外国法事務弁護士共同法人であり、司法書士・司法書士法人は挙げられていません(貸金業法21条1項9号は司法書士・司法書士法人を明記しています)。
- 通知について「書面により」という限定がありません。
- 方法として挙げられているのは訪問と電話で、電報・ファクシミリは挙げられていません。
- 貸金業法9号にある「直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更に」という部分がありません。
債権管理回収業に関する特別措置法(平成10年法律第126号) https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000126(2026年9月2日確認・本則から抽出)
同法17条1項は、より一般的に「債権回収会社の業務に従事する者は、その業務を行うに当たり、人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない。」と定めています。
7. これらの規制の対象にならない相手がいます
ここまで見た規定は、いずれも貸金業を営む者・その委託先・債権の譲受人・保証業者・債権回収会社に向けられたものです。すべての債権者に当てはまるわけではありません。法テラスの公式FAQは、この点を明示しています(2026年9月2日確認)。
弁護士や司法書士が債務整理(任意整理・自己破産・個人再生等)の依頼を受け、貸金業者に対してその旨の通知を行った場合、通常、貸金業者からの連絡は止まります。
なお、貸金業者や債権回収会社以外の債権者(銀行、個人債権者など)については、法的に直接の取立てが禁じられているわけではありませんが、通常、弁護士や司法書士が債務整理を受任することにより、直接の連絡が止まることがほとんどです。
法テラス「弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、貸金業者からの連絡が止まるのですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-004.html(2026年9月2日確認)
法テラスの記載を条文と突き合わせると、銀行や個人の債権者は貸金業法21条の名宛人ではないという点が一致しています。当サイトは、それぞれの債権者が実際にどう対応するかについては述べません。
8. この記事で扱わないこと
受任通知をいつ・どう出すか、どの手続を選ぶか、通知の後に支払いをどうするかは、いずれも個別の判断であり、当サイトは扱いません(通知が出れば支払義務がなくなる、といった説明もしません)。手続ごとの公的な定義は任意整理・自己破産・個人再生・特定調停で確認できます。依頼先を選ぶ前に、弁護士・司法書士が実在するかを公式検索で確認する手順と実在確認ナビ、司法書士の業務範囲(140万円)、なりすましへの注意、非弁行為をあわせてご覧ください。費用が払えない場合は法テラスの立替制度と無料法律相談の条件を確認できます。公的な相談窓口の一覧は借金の相談窓口にまとめています。
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よくある質問
「受任通知」は法律用語ですか?
貸金業法21条1項9号は「弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合」と書いており、「受任通知」という語は使っていません。債権管理回収業に関する特別措置法18条8項も「その旨の通知があったとき」という書き方です。
司法書士に依頼した場合も対象ですか?
貸金業法21条1項9号は、委託先として弁護士・弁護士法人・弁護士・外国法事務弁護士共同法人に加えて司法書士・司法書士法人を明記しています。一方、債権管理回収業に関する特別措置法18条8項の条文には司法書士・司法書士法人の記載がありません。なお司法書士が扱える範囲には司法書士法3条の制限があり、司法書士に債務整理を依頼できる範囲の記事で扱っています。
銀行からの連絡も法律で止まるのですか?
貸金業法21条の名宛人は貸金業を営む者等です。法テラスは「貸金業者や債権回収会社以外の債権者(銀行、個人債権者など)については、法的に直接の取立てが禁じられているわけではありません」と説明しています(2026年9月2日確認)。実際の対応については弁護士・司法書士にご相談ください。
21条1項に違反した場合はどうなりますか?
貸金業法47条の3第1項3号が、21条1項(24条2項ほかで準用する場合を含む)の規定に違反した者を、2年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています。個別の事案が違反に当たるかどうかの判断は当サイトでは行いません。
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本記事は法律相談ではありません。個別の状況は弁護士・司法書士にご相談ください。
