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裁判所は、破産手続開始の決定がされると「法律上の資格制限を受けることがあります」と説明しています。ただし、その「資格制限」が具体的にどの法律のどの条文に置かれているのかは、この一文からは分かりません。この記事では、①公的機関が何と書いているか、②その「資格制限」が実際に置かれている条文の形、③破産法255条が定める「復権」との関係の3点を、e-Gov法令検索の本則と裁判所・法テラスの公表情報だけで確認します。先に結論:破産法そのものには職業や資格の一覧は置かれておらず、破産法255条2項は「人の資格に関する法令の定めるところによる」と書いています。個別の仕事が続けられるかどうかの見通しは、当サイトでは述べません。
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1. 公的機関はどこまで書いているか
裁判所の「民事事件Q&A」には、「破産手続開始の決定がされると何か制限(デメリット)があるのですか。」という設問があります。回答の全文は次のとおりです(2026年9月12日確認)。
破産手続開始の決定がされても、選挙権や被選挙権を失うことはありませんが、法律上の資格制限を受けることがあります。また、債務者は、破産手続が終わるまでの間、裁判所の許可なしに転居することができません。さらに、郵便物が破産管財人に配達され、破産管財人がその内容を調査することがありますし、破産管財人の職務に協力する義務も負います。
法テラスの公式FAQ「自己破産のメリット・デメリットは何ですか。」も、デメリットの1つとして次の行を挙げています(2026年9月12日確認)。
・破産手続が終了するまでの間、職業・転居・長期の旅行等について、一定の制限を受ける場合がある。
同じページには「なお、自己破産をしたからといって、選挙権がなくなる、戸籍や住民票に記載される、銀行の普通預金口座も使用できなくなる、ということはありません。」とも書かれています。どちらの説明も「資格制限を受けることがある」「制限を受ける場合がある」という書き方で、対象となる資格や職種の名前は挙げていません。転居の制限・官報・家族への影響については自己破産は家族に影響するか・職場に知られるかの記事で条文を扱っています。同記事は法テラスの公式FAQ・破産法37条1項ほか・官報の発行に関する法律の範囲で確認した記録で、本文に「どの職業がどこまで制限されるのかという具体的な資格・職種の範囲は、当サイトが確認した一次情報には記載がありません」と書いています。本記事は、その先にある個別の業法の条文(警備業法・宅地建物取引業法・貸金業法)と破産法255条を、2026年9月12日にe-Gov法令検索で確認して扱います。確認した一次情報の範囲が違うという関係です。
裁判所「民事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html/法テラス「自己破産のメリット・デメリットは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-002.html(いずれも2026年9月12日確認)
2. 破産法は「人の資格に関する法令」に投げている|255条2項
e-Gov法令検索で破産法(平成16年法律第75号・lawId=416AC0000000075)の本則を取得し、全297条を機械的に走査しました(2026年9月12日)。本則に、制限される職業・資格の一覧は置かれていません。代わりに、復権を定める255条の2項が次のように書いています(原文)。
2 前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。
つまり、誰がどの資格を制限されるのかは破産法ではなく、それぞれの資格を定めた法令(各業法など)の側に書かれているという構造です。以下の3節では、その「人の資格に関する法令」の実例を3本だけ、条文の原文で確認します。ここに挙げる3本は例示であり、全体の一覧ではありません。当サイトが実際にe-Govで原文を取得し、条・項・号の帰属まで確認できたものだけを載せています。挙げていない資格について、制限がある・ないのどちらも述べません。
なお、起算点になる「破産手続開始の決定」について、破産法30条2項は「前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる。」と定めています。裁判所は、破産手続の開始と免責は別の裁判であるとして、次のように説明しています(2026年9月12日確認)。
破産手続開始時点の債務は、破産手続が開始されても、当然に返済を免れるものではなく、債務を免れるためには免責の許可を受ける必要があります(個人を債務者とする破産手続の申立てがあれば、原則として免責許可の申立てもあったとみなされます。)。
破産法(平成16年法律第75号) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075(2026年9月12日確認・法令APIのXMLから本則のみ抽出)/裁判所「破産」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_16/index.html(2026年9月12日確認)
3. 実例①|警備業法3条1号
警備業法(昭和47年法律第117号)3条は、見出しが「警備業の要件」です。柱書と1号は次のとおりです(原文)。
(警備業の要件)
第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。
一 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
条文が置いているのは「警備業を営んではならない」という形の制限です。また同条10号は「法人でその役員(略)のうちに第一号から第七号までのいずれかに該当する者があるもの」を挙げており、1号は法人の役員を通じても働く書き方になっています。当サイトは、個別の会社・個別の立場がこの条文に当たるかどうかの判断は行いません。
警備業法(昭和47年法律第117号) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000117(2026年9月12日確認・本則から抽出)
4. 実例②|宅地建物取引業法5条1項1号・18条1項2号
宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)では、本記事で原文を確認した2か所に同じ文言が置かれています。1つは業者の免許の基準、もう1つは宅地建物取引士の登録です(原文)。
(免許の基準)
第五条 国土交通大臣又は都道府県知事は、第三条第一項の免許を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合(略)においては、免許をしてはならない。
一 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
(宅地建物取引士の登録)
第十八条 試験に合格した者で(略)当該試験を行つた都道府県知事の登録を受けることができる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、この限りでない。
一 宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
5条は「免許をしてはならない」、18条1項は「登録を受けることができる。ただし…この限りでない」という書き方で、禁止の向け先(免許権者か、登録を受けようとする本人か)が違います。同じ法律の中でも、条文ごとに規定の形が異なる点だけ確認しておきます。
宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号) https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176(2026年9月12日確認・本則から抽出)
5. 実例③|貸金業法6条1項2号
貸金業法(昭和58年法律第32号)6条の見出しは「登録の拒否」です(原文)。
(登録の拒否)
第六条 内閣総理大臣又は都道府県知事は、第三条第一項の登録を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当するとき(略)は、その登録を拒否しなければならない。
一 心身の故障により貸金業を適正に行うことができない者として内閣府令で定める者
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
ここでは2号です。条文の号の番号は法律ごとに違うため、資格の話をするときは「何法の何条何項何号か」まで確認する必要があります。なお当サイトでは、同じ貸金業法の19条の2(帳簿の閲覧)を根拠とする取引履歴の開示請求を取引履歴の開示請求の記事で、債権回収会社(サービサー)が法務大臣の許可を受けているかを法務省が公表する一覧で照合する手順を債権回収会社の照合手順の記事で扱っています。本記事で確認したのは6条1項2号の文言だけで、貸金業者の登録そのものを照合する手順は扱いません。
貸金業法(昭和58年法律第32号) https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032(2026年9月12日確認・本則から抽出)
6. 3本に共通している文言
3本とも、条文の文言は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」で一致していました。条番号・項・号は法律ごとに異なります。
| 法令 | 条・項・号 | 条文の見出し | 規定の形 |
|---|---|---|---|
| 警備業法(昭和47年法律第117号) | 3条1号 | 警備業の要件 | 「警備業を営んではならない」 |
| 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号) | 5条1項1号 | 免許の基準 | 「免許をしてはならない」 |
| 宅地建物取引業法(同上) | 18条1項2号 | 宅地建物取引士の登録 | 「登録を受けることができる。ただし…この限りでない」 |
| 貸金業法(昭和58年法律第32号) | 6条1項2号 | 登録の拒否 | 「その登録を拒否しなければならない」 |
共通しているのは、条文が禁じているのが「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」という状態だという点です。言い換えると、条文の文言は復権を得たかどうかを分岐にしています。そこで次に、破産法が「復権」をどう定めているかを見ます。
7. 復権はどう定められているか|破産法255条1項・256条
破産法255条1項は、復権する場合を4つ挙げています(原文)。
(復権)
第二百五十五条 破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第一項の復権の決定が確定したときも、同様とする。
一 免責許可の決定が確定したとき。
二 第二百十八条第一項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。
三 再生計画認可の決定が確定したとき。
四 破産者が、破産手続開始の決定後、第二百六十五条の罪について有罪の確定判決を受けることなく十年を経過したとき。
| 号 | 条文が挙げる事由 | 条文が指している先 |
|---|---|---|
| 1号 | 免責許可の決定が確定したとき | 免責の許可(許可の要件は破産法252条。免責不許可事由の記事で扱っています) |
| 2号 | 218条1項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき | 破産法218条(条見出し「破産債権者の同意による破産手続廃止の決定」)の1項。同項の柱書は「裁判所は、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当する破産者の申立てがあったときは、破産手続廃止の決定をしなければならない。」と定めており、1号が「破産手続を廃止することについて、債権届出期間内に届出をした破産債権者の全員の同意を得ているとき。」です |
| 3号 | 再生計画認可の決定が確定したとき | 条文の文言は「再生計画認可の決定が確定したとき。」のみ(本記事では民事再生法の条文は確認していないため、参照先の法令名は記載しません) |
| 4号 | 破産手続開始の決定後、265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき | 265条=見出し「詐欺破産罪」。法定刑は「十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」 |
さらに255条1項の柱書は「次条第一項の復権の決定が確定したときも、同様とする。」と続いています。その256条1項は次のとおりです(原文)。
(復権の決定)
第二百五十六条 破産者が弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときは、破産裁判所は、破産者の申立てにより、復権の決定をしなければならない。
256条は続けて、裁判所は申立てがあったときはその旨を公告しなければならないこと(2項)、破産債権者は公告が効力を生じた日から起算して3月以内に意見を述べることができること(3項)、申立てについての裁判に対しては即時抗告をすることができること(5項)を定めています。
なお255条3項は、免責取消しの決定または再生計画取消しの決定が確定したときは、1項1号または3号による復権は将来に向かってその効力を失うと定めています。復権が一方向とは限らない書き方になっている点は、条文のとおりに確認しておきます。
破産法(平成16年法律第75号) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075(2026年9月12日確認・255条/256条/218条/265条を本則から抽出)
8. この記事で扱わないこと
ここまでに書いたのは、公的機関の説明の文言と、e-Govで原文を確認できた条文の内容だけです。次のことは書いていません。
- 実査していない資格・職種について、制限があるかないか(士業・保険募集人・その他。当サイトが原文を確認した3本の法律以外には触れません)
- 個別の事案で復権がいつ起きるかの見通し、および勤務先との関係で実際にどうなるかの予測
- 「破産しても仕事は失われない」といった結論の断定(裁判所は「資格制限を受けることがあります」、法テラスは「制限を受ける場合がある」と書いており、当サイトはその文言を超えて述べません)
手続そのものの公的な定義は自己破産とは、個人再生とは、債務整理の4つの方法で確認できます。手元に残せる財産は自由財産の記事、裁判所に納める費用は予納金の記事、相談に持参する資料は債務整理の相談に持っていく資料にまとめています。相談先の実在確認は日弁連・日司連の検索手順と実在確認ナビから行えます。費用が心配な場合は法テラスの立替制度と無料法律相談の条件、公的な窓口は借金の相談窓口をご覧ください。
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よくある質問
破産法に、制限される職業の一覧は載っていますか。
当サイトが破産法の本則(全297条)を走査した範囲では、職業・資格の一覧は置かれていませんでした。255条2項が「前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。」と定めており、資格ごとの規定はそれぞれの法令の側にあります。
条文にはどのような文言で書かれているのですか。
この記事で原文を確認した3本の法律では、いずれも「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」という同じ文言でした。条・項・号は法律ごとに異なり、警備業法3条1号、宅地建物取引業法5条1項1号と18条1項2号、貸金業法6条1項2号です。
免責許可の決定が確定すると、条文上はどうなりますか。
破産法255条1項1号は「免責許可の決定が確定したとき。」を復権する事由の1つとして挙げています。各業法の条文が対象にしているのは「復権を得ない者」ですので、条文の文言としてはその状態ではなくなる、ということになります。個別の事案の見通しは当サイトでは述べません。
免責が受けられない場合でも復権することはありますか。
破産法255条1項は、1号(免責許可の決定の確定)のほかに、2号(218条1項の規定による破産手続廃止の決定の確定)、3号(再生計画認可の決定の確定)、4号(破産手続開始の決定後、265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年の経過)を挙げています。また256条1項は、破産者が弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部について責任を免れたときは、破産者の申立てにより裁判所が復権の決定をしなければならないと定めています。どの号に当たるかの判断は当サイトでは行いません。
破産法(平成16年法律第75号) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075/警備業法(昭和47年法律第117号) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000117/宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号) https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176/貸金業法(昭和58年法律第32号) https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032/裁判所「民事事件Q&A」 https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html/裁判所「破産」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_16/index.html/法テラス「自己破産のメリット・デメリットは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-002.html(いずれも2026年9月12日確認)
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